空中に爆炎の大輪が咲き乱れた。
爆風が吹き荒れる中で浅葱色の髪を靡かせているその者に、動揺の色は見えない。穏やかな、そして泰然とした様子でそこに佇むだけだ。
彼/彼女は両腕を広げ、その言葉通りに歌うかのようにしてその名称を紡ぐ。
「───
それは、エルキドゥが有する第二宝具。
大地を変容させ武器を生み出す宝具であり、言の葉に霊器の欠片を混ぜることにより真価を発揮する物量で押し潰す宝具だ。
そして、エルキドゥの第二宝具である民の叡智には、その圧倒的な物量の他にも注目すべき点がある。それは、エルキドゥの唯一無二の特性である、
つまり、呼び出された聖杯戦争の時代が神代ならば、神秘を多く含む兵器を量産することが可能であり、遥か先の未来ならば宇宙戦艦さえもエルキドゥならばその場で生み出すことが可能なのである。
この特性を持つからこそ、エルキドゥの盟友である
「『魔術師殺し』の霊装ではなく、『魔術殺し』の霊装を生み出すとは思わなかったよ。爆発や破壊の仕方も計算して魔術そのものを無効化するとは面白い性能だ。……でも、それで終わりなら僕を倒すことは出来ないよ」
マスターからの原作知識もあるからか、エルキドゥはその兵器の秘密を暴いていく。どれだけ兵器を撃ち込まれようが原理を解明し、物量も相手の遥か上を行く今のエルキドゥを打倒することは不可能だろう。
「本来なら、性能の優劣が明確に分かった時点で矛を収めるのも悪くないんだけど、君は僕のマスターを殺そうとした。
マスターはこの先を見据えて君が退場することは望まないだろうけど───少しだけ痛い目にあって貰うよ」
ビルの屋上で木原脳幹はアレイスターに声を投げ掛ける。
『奴が同型機を操るのならば君が送る魔力を遮断してしまえばいいのではないかね?』
『それは不可能だ。君が操る A.A.A. は私が魔力を送り、君が現場で標準を合わせることで稼働することが出来ている。つまり、私の魔力の受け止めは君に一任しているということだ。
そもそも、魔力自体には指向性がない。仮にその場に私が居ようとも魔力を君の有する物だけに注ぐことは不可能だろう』
『
と、木原脳幹は葉巻を吹かしながら言ったが、それが可能であればアレイスターは木原脳幹を現場に送り込まず、根城である窓のないビルという絶対の安全地帯から、一方的に敵対者を殲滅していたであろうことは容易に考えられた。
『( A.A.A. はアレイスターが科学と魔術の理論を、両方とも深淵と呼べるほどの知識と技術で組み合わせた奴のオリジナル。だからこそ、似たような類似品を生み出せる存在はいないと、私も含めて確信していた。
おそらく、私が A.A.A. を撃つ前にこちらを捕捉し、即座にそっくりそのまま A.A.A. をコピーしたというところか。ふん、……これだから、魔術というのは肌に合わん)』
そんなことを思っていると、センサーが急に反応を示した。
『ッ!殺そうとした私を殺しにくるのは当然だな!』
見る迄もなく大量の兵器が津波のように襲い掛かってくる。木原脳幹は卓越した技術を用いて、 A.A.A. を扱い幾つか撃ち落とすも数の暴力の前にはどうしようもなかった。
多勢に無勢。ロマンを詰め込んだ兵器が次々と破壊されていく光景を見詰めて、彼は悟ったように目を細める。
『……先生ッ!!』
愛弟子の叫び声が別の通信機から聞こえたが今の彼には応答する時間もない。
木原脳幹が居たビルは爆炎と共に崩壊したのだった。
ビルが倒壊していく様子を穏やかな表情でエルキドゥは見詰める。
「これで邪魔してくる者は居なくなったね。おそらく、すぐに僕達を攻撃することは無い筈だ」
ビルを片手間で一つ破壊したエルキドゥは何でもないように上条達に語りかける。エルキドゥからすればビルを一つ壊すことなど、積み木を崩すように簡単なことなのだ。
「とはいえ、星から与えられた力を僕の都合で勝手に使ってしまったからね。もう、あのような物は造り出せないと考えておくれ」
魔力切れ間近のエルキドゥが魔力を得ることが出来たのは、この星の厄災となった『
しかし、エルキドゥはそのための抑止力の力を個人的な理由で別のことに使ってしまった。そのため、二度目の機会は与えられないと思うべきだろう。
「───そうか。なら、チャンスは今しか無いってことだ」
上条が誰に言われる迄もなく大地を蹴る。彼の直感がここを逃せば勝機がないことを導き出したのだ。A.A.A. により開けた道を走り抜ける。
彼は未だに天野俱佐利を救おうとしていた。鈍感と言われる彼でも既に分かっているだろう。天野俱佐利はただの少女ではないことに。この数十分の間で世界を揺るがすような異常性を抱えた化け物だと認識するには充分だ。
この先の未来で世界の敵となり殺されることで、祝日が生まれるかもしれないほどの何かを天野が仕出かす可能性は極めて高い。それこそ、この場で彼女の命を救ったというだけで、不特定多数から上条に向けて石を投げられる未来がやって来るかもしれないのだ。
そんな助けたところで見返りどころか損しかやってこないだろう少女を前にして、上条はいつも通りに駆け出していく。
彼の視線の先には「未知」を吐き出し続けるブラックボックス。その神々しくも禍々しい輝きは、異能を消し去る
一度右手が触れれば身体ごと呑み込まれてしまうのでは?
もしかして、現出していない別の厄災が飛び出すのでは?
またしても、別のモノに変異してしまうのではないのか?
何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何か何何何にかなかかかかかかかかかかかかかかかkkkkkkkkkkkk………………。
それが「未知」への恐怖。
一挙手一投足が悪い展開に陥るための要因なのではないかと言う疑惑。
前例はあるのだ。雷神化を止めて、天使化も戻して、魔神化もこの右手で防いだにもかかわらず、こうして最悪の状態を脱け出すことは出来なかった。もしかすると、より悪い方に流れてしまったかもしれない。
だから、次も同じ様に無駄な結果に終わる。それが頭をよぎることがおかしいと誰が言えるのか。土御門は上条の右手が天野俱佐利を別のモノに昇華したと言った。
ならば、次もそうならないと誰が言える?その右手が苦しめる要因にならないと誰が断言出来る?
「……目の前で訳も分からず誰かの都合の良いように利用されて、自分の意思を無視されて、それで破壊の責任は全てお前の責任なんて、馬鹿げた真似をされかけている女の子が居るなら拳を握れッ!足を踏み出せッ!!」
それは、足がすくんだ自分自身に向けた叱咤の言葉なのか。はたまた、理不尽な現実を与える「世界」に向けたものなのか。
まるで、上条は内側から溢れて零れ出したかのように、次々と言葉を吐き出していく。
「絶望だからなんだ。不可能だからなんだ。理不尽だから何だってんだ……ッ!そこにそんなモンで苦しんでいる人が目の前に居るんだから、止まってる時間なんて一秒もねえだろうがッ!!
一度目が駄目でも、二度目が無意味でも、三度目が失敗したとしても!……何度でも何度でも何度でも何度でも挑戦するんだよッ!
誰かの不幸を『もういいや』や『俺は頑張った』で納得しちまうクソ野郎になりたくなかったらなッ、無様だろうがなんだろうが歯を食いしばって何度でも立ち上がるしかねえだろうがッッ!!
叩き伏せられて地べた転がって、それでも這い上がって手を伸ばすんだ!それが誰かを救うってことだろ上条当麻ッッ!!!!」
走る。走る。走る。走る。
上条に完璧な正解なんて分からない。失敗してまた誰かに迷惑をかけるかもしれない。それでも、彼は誰かを救うことに一切の妥協なんてしない。
「上やん気を付けろ!また泥の奴らが出てきたぞ!!」
「……ッ!」
泥の中から人影が再び現れ始める。泥を払ったとはいえ滝のように出続けているのだからこうなることは目に見えていた。
しかし、上条に与えられたチャンスはここしかない。立ち止まればそこで終わりだ。
だが、そのような覚悟を持ち合わすだけで越えられるほど英雄は甘くない。
人型となった泥が光を発する。それが何なのか上条には理解出来なかったがそれは彼の落ち度ではない。それこそ、世界中に居るプロ魔術師でも知り得ないのだから。
それは、この世界では存在しない『サーヴァント』と呼ばれる神秘が生み出す、人間の幻想を骨子として作り出す奥義。
突如、上空に巨大な円盤が出現し泥の人影を連れていく。
刃を付き出し五つの石を剣の周囲に回転させる。
巨大な注射器を生み出してこちらに針を向ける。
額が眩いほどに光輝き周囲を呑み込む。
───即ちそれは、宝具に他ならない。
魔力が大量に迸るその光景に、この場で唯一の魔術師である土御門は冷や汗を流す。それはどれも自分達を仕留めるにたる力であると確信してしまったのだ。
上条に声を掛けるが複数の攻撃に対応出来ないのが幻想殺しの弱点のため、上条一人で対処出来ないのは明らかだった。
「でらっしゃああああああああああッッ!!!!」
突然、瓦礫の山が弾けとんだ。高速で駆け出した削板が注射器を持つ人影に拳を放つ。
ドゴォッッ!!という重く響く音と共に、泥の人影は水平に向かって吹き飛び、額が輝く別の泥の人影に激突し遥か彼方に飛んでいく。
それは、彼らしくない不意打ちによる攻撃だった。しかし、それにより二体による宝具の使用を中断させることに成功したのだ。
それが彼が持つ野生の勘によるものなのか、それは最善の行動と言っても差し支えない結果を生んだ。
そして、最適な行動を取れたのは削板だけではない。
「……舐めてんじゃないわよッ!!」
刃と石を前方に展開する人影の足場にある鉄筋コンクリートを磁力で操り、こちらではなく別の方向へ向ける。絵に書いたような未確認飛行物体の居る上方に。
それは
長髪の人影の刃は螺旋を描いた極光を打ち放ち、空に浮かぶ未確認飛行物体へ直撃する。
単純な事実として、御坂美琴が最大火力である
だからこそ、敵の足場を崩して操り相手が何かをする前に、
しかし、それが偶然にも最大の功績を生むこともある。
地上から宝具を当てられた未確認飛行物体は四割ほど消滅していた。しかし、それでも攻撃は止まらずあらぬ方向へ光線を発射していく。
それは、本人が全く意図していない方向へ。つまり、地上に居る他の人影をその極光で塗り潰していくように消し飛ばしたのだ。
幾ら英霊といえども不意打ちで宝具を直撃されればただでは済まない。偶然によるものが大きいとはいえ、御坂美琴は最大級の戦果を生み出したのだった。
「……………………嘘だろ……?」
その一連の破壊の嵐に上条は驚愕を隠せない。ほんの数十秒で戦局が塗り変わってしまった。これが、一人で軍と張り合えるとさえ言われる強者が住まう領域なのか、と。
代わりに自分がそこに居たとして、彼女達のような結果を生み出すことは出来なかったと上条は断言する。彼は特殊な右手があるだけのいたって普通な男子高校生でしかないのだから。
「……だけど、やるしかねえんだ……ッ!!」
上条の前にまたしても立ち塞がる泥の人影。幾ら数が少なくなってもその戦闘力は言わずもがなだ。最速で右手で触れて消滅させなくては再び数に押し潰される。
攻撃を避けてを繰り返したあと、上条が決死の覚悟で人影に触れようとしたその寸前に、
削板の拳によってその人影達は纏めて吹き飛ばされた。
先ほどの光線で戦っていた人影が消滅したのが大きいのだろう。彼は上条を助けるために戦場を高速で横断したのだ。
削板は英霊を身体能力で上回れる可能性を持つ存在。そんな彼が敵を薙ぎ払うその姿はまるで場を圧倒しているようだが、現実はそうではない。
「ハァ……ハァ……、へへっ、どいつもこいつもやりやがる」
「削板……ッ」
上条が目にしたのは至る所に傷跡を付け、血塗れとなった削板軍覇だった。聖杯の泥に浸かろうとも相手はあの英霊。その上位の者達を相手に未だに生存していること自体が奇跡でしかない。
そんな英傑はフラフラの状態ながらも上条に情報を渡す。
「一緒に戦ってた嬢ちゃんはガス欠で気絶したから、あのグラサンの奴に預けた。……そして、今ので俺も打ち止めだ。情けねえが意識を保つだけで精一杯ってとこだな」
彼がどうしてここまで上条を信じてくれるのか上条自身にも分からない。限界を越えたその姿は自衛をする力さえ出し切ってしまったようにも見える。
そんな彼がどうして上条にあとを託そうとするのか、上条には分からない。
だが、その期待に応えなければ……それはきっと、根性なしだと言われても仕方がないことなのだ。だから、掛けられる言葉に上条はこう応える。
「───あとは任せるぜ」
「ああッ!」
上条は足を踏み出す。後ろで膝を突く音が聞こえるがそれを無視する。その一切に気を取られることが彼等の献身を無駄にすると理解していたから。
距離はあと五メートルもない。あの箱に右手で触れるために脇目もふらずに走り抜ける。
だからこそ、見落とした。削板が吹き飛ばした者の中で枯れ木のような物を掴み、地面に突き刺すその光景を。
そこから先はまさに天変地異だった。
ドオオオオオオオオッッ!!!!という地響きの音と共に、勢いよく地面から岩石の山が飛び出したのだ。
「な……ッ!?」
一瞬で上条の身体を覆い隠すほどの巨大な攻撃に、否が応でも視線が持ってかれる。
『
その宝具は対軍宝具。本来ならば、上条を磨り潰したあとに数千人の命を奪う強力な高範囲宝具であり、その力は同じサーヴァントでしか太刀打ち出来ないほどに強力なものだ。それに対し、人の力など些末なものでしかない。
「……だけど、それはオリアナのときに見てる!」
しかし、その攻撃は上条にとって二度目だった。
地面から目の前に迫り上がってくる岩石の群れ。このような攻撃は能力者なら出来る者も確かに居るだろうが、上条が知っているのは偶然にも目の前に居る、サーヴァントと同様に魔術サイドの人間が引き起こした攻撃だ。
先日、オリアナ=トムソンは上条と土御門、ステイルの三人から逃走を図るために、トラップとして土石流が発生する魔術を仕掛けていた。
もちろん、オリアナの仕掛けたトラップとは比べることなど出来ない出力と範囲なのだが、最大限発揮できる距離でないこと、そして幻想を殺す右手であることが有利に働いた。
右手で触れると迫っていた岩山が跡形もなく消滅し、上条の前に再び道が出来る。
「これで……っ!」
残り、二メートル。
あと一歩と右手を伸ばすだけであの黒い箱に触れることが出来る。
黒い箱に触れればいいのか、倒れている天野俱佐利に触れればいいのかその判断は付かないが、一先ず謎の人影を生み出し続ける源を抑えるべきだろう。
その後に、彼女の安全を確かめる。これが最善の行動の筈だ。
黒い箱の間合いに飛び込むために、足先に力を込めて上条が全身の筋肉を解放するまさにその瞬間。
砕け散った岩壁の向こうから人影が現れた。
「あ……?」
それは予想だにしていなかった事態だった。まさか、今の物量攻撃の向こうから直ぐ様、突撃を敢行してくる奴が居るなんて想定などする筈も無い。
だが、相手はあの英霊だ。無茶無謀など当たり前のようにやってみせる。
そのどこか絢爛さを醸し出すその女型の泥の人影は、小さな身体とはアンバランスな大剣をその手に掴んでいた。普通ならばまともに振るうことすら出来ないだろうが相手はあの英霊だ。常識など通じる筈もない。
「……ッ!!」
上条は無理矢理右手を振り回すようにして右腕を動かす。敵の攻撃を読む『前兆の関知』から導いた行動だ。当たればその剣ごと消滅させることが出来る。
しかし、それは相手が本当に剣士ならば有効だっただろう。
「(は……?何でそこで無意味な足運びを……?)」
それは、剣士ならば絶対にしない動きであった。無駄としか言い様の無いただその動きを見せ付けるかのようなステップ。彼女の本質は剣士ではなく皇帝なのだから仕方ないことだろう。泥に浸かろうがその本質はそうそう変わることは無い。
しかし、だからこそ上条の勘を欺くことが可能となった。
踊るようなステップを刻みながら、その人影は薔薇のような大剣を今度こそ上条の右腕に向けて跳ね上げるように切り上げた。
「ガ……ッッ!?!?」
空気を裂くようなその一刀は上条の右腕を寸断し血飛沫を上げる。それこそ、まるで舞踏を見ているかのように流麗な動きだった。
くるくると右腕が宙を舞っていくのを横目で見ながら上条は歯を食い縛り意識を繋ぐ。意味が無い行為なのだとしてもここで意識を失っていてはただ殺されるだけだ。しかし、無情にも上条の右腕を切り落とした人影が上条を前にして再びその大剣を頭上に掲げた。
不可思議な現象を起こす右手を排除してから止めを刺す。その冷徹な程に合理的な判断は、狂気に侵されながらも英雄ならではの判断力が為せる思考か、はたまた偶然による産物なのか。
どちらかを判別することは不可能に近いが、幻想殺しの対処法としてはこれ以上無いほどに最適解と言えるだろう。
こうして、上条当麻は何も出来ずに返す刃で振り下ろされる凶刃によって、深紅の血を周囲に撒き散らしながらその身体を左右に両断される
───
「……ッ!?」
それは一瞬のことだった。上条の右腕を切り落とした人影の右腕が紅の大剣ごと消失していたのだ。人影は正体不明の現象を受けて生物の生存本能から素早く距離を取る。
周囲に居た者達が上条に異変に気が付き、自らの宝具を発動し消し飛ばそうとするがそれは不発に終わった。
その全てが上条の右肩から生まれたドラゴン達に喰われたからだ。
「「「「「「「「GYOOOOOOOOOOOッッッッ!!!!」」」」」」」」
雄叫びを上げながら八頭のドラゴンが人影を補食していくその光景は御伽噺か何かにしか見えない。
何人かはそのドラゴン目掛けて剣を振るおうとしていたが、何分数が多いために発動する前に潰されているようだった。上条の右手と同じく触れた側から消滅するため、相性が極めて悪くなっていた。
更に、未確認飛行物体からの攻撃により人員が減っていたこともあって、肉壁が少なくなっていたことが原因だろうか。
先ほど右腕を大剣ごと消失した女型の人影が再び上条に襲い掛かろうとするが、上条の右肩から出てきた白い翼の生えたドラゴンに今度は全身を捕食される。塩の柱となった彼女は崩れて消滅したのだった。
全ての泥の人影を喰らい尽くしたあとに、その根元である黒い箱に喰らい付くドラゴン達。ガリガリッバキバキという音を幾度も繰り返したあとに押し潰すようにドラゴン達が乗し掛かる。
そして、────
パキィンッ!と甲高い音と共に、黒い箱が跡形もなく消し飛んだ。
箱の中に在ったものごと綺麗に食べ尽くしたのだろうか。役目を終えたとばかりにドラゴン達は消えていく。その蹂躙をした力は脅威としか表現出来ないだろう。
そして、残ったのは横たわる緑色の髪をした少女一人。
これまでのように何か異変が起こるのかと身構えてもそのような兆候は見当たらず、暫くして少女が目を覚ました。
いつものような穏やかで包み込むような雰囲気に、事件の終幕を彼等はようやく実感したのだった。
「(うげぇ……二日酔いか何かかこれ?気持ち悪ぅ……)」
パンドラの箱……あっ(察し)
……うんうん、めでたしめでたしだなっ!
◆考察◆
『八条光星とアレイスタークロウリーが唱えた救世主』
八条光星とはなんぞやと思うかも知れないが、海鮮茶漬けも実際のところまだ分かりません。これは、史実のアレイスター・クロウリーを調べている方が二名ほど同じ用語を使っており、作者が気になり調べたのが始まりだ。
海鮮茶漬けの調べた中では八芒星が有力だった。これは、神の子(名前を出していいのか不明のため、『とある』での呼び方とする)が誕生したときに空に現れた星で、その星に導かれて三人の預言者が神の子の下に馳せ参じたのは有名な話だろう。それを誤訳、或いは別称としていると作者は考えた。
しかし、本当にそれが正しいのかと疑問を抱いたのだ。
何故ならば、アレイスター・クロウリーは神の子を否定していた張本人だからだ。
『とある』では度々上条当麻が神の子と照応させている。それは、アンテ=シュプレンゲルの発言などを見れば明らかだ。しかし、アレイスターという人間が史実の主張を曲げていないのならば、上条当麻を本当にそのような風に作り上げるだろうか?
上条の中のモノに対してエイワスも純度が甘いなどと言っていたことも踏まえると、上条当麻の中のモノにアレイスターが手を加えていたのは間違いない。
ならば、アレイスターは何を作りたかったのか?神浄の討魔?ドラゴンストライク?
確かに、別称としてどちらかは該当するかもしれないが、真名はそれではない筈だ。
何故ならばその存在の名をアレイスターは実際に唱えている。神の子とは異なる救世主を。
それが、『V.V.V.V.V.』。
この同じローマ字が五つ並んだ存在がアレイスターが唱えた救世主である。あのエイワスと同じ様にアレイスターが自身の聖守護天使とも定めた存在。
※ちなみに、アレイスターの魔術名ではなく救世主の方(要するに、紛らわしいことこの上ないがV.V.V.V.V.は魔術名と救世主の名前の両方で出てくる)。
新しいアイオーンでは神の子ではなくこのV.V.V.V.V.こそが救世主足り得ると考えていたのだ。それを考えるとアレイスターの書物の中では『八芒星』ではなく、『八条光星』の綴りで書かれている可能性が浮かんでこないだろうか?
……残念ながらアレイスターに関連する書物を調べても、頭の弱い作者には見付けることは不可能だったのだが、そうなると色々と辻褄が合ってくるのだ。
①上条当麻は神の子ではなくV.V.V.V.V.に似た性質を持つということ。
このV.V.V.V.Vについてはまだ資料を読み込むことが出来ていないため、詳しいことは未だに不明ではあるが、神の子と似ているという登場人物達の証言はかまちーのミスリードの可能性が高い。
これはつまり、神浄の討魔はV.V.V.V.V.である可能性があるということだ。
②八条光星とドラゴンストライク(八頭以上居るそうですが記号的な匂わせも考慮して)
『とある科学の超電磁砲』で上条の中から出てきたドラゴンについて、八岐大蛇などの考察が有名ではあるが海鮮茶漬けは『八条光星』が怪しいと考えている。
と言うのも、『とある』関連の考察動画をYouTubeで出している方が、「落ちてくる隕石をドラゴンと見ていた伝承が残る国もある」、と仰られていたのだ。そして、天使ドラゴンはある神話と関連深いとも。
ならば、あのドラゴン達は世界中に落ちた隕石を、神話と共にドラゴンとして昇華した存在ではないかと考えた。
…………これだけでは、幾らなんでもただの猿真似もいいところなのでもう一歩踏み込んだ考察をしてみたい。
上条の中にあるものを『八条光星』とアレイスターが調節したのならば何かしらの意味がある筈だ。上条の中にあるのだからアレイスターに手を出すことは出来ない……とはならない。それは、エイワスの証言から読み取れる。
では、その八頭のドラゴンの役目とは何だ?ここはシンプルに考えてみよう。救世主だけではなく自身の聖守護天使とも見ていたのならば、一時期聖守護天使として見ていたエイワスと同じような役目が可能なのでは?
それはつまり、物理法則以外の位相の破壊などだ。
あのドラゴン達が神話から生まれた存在であり、消去する力を同時に持つのならばあのドラゴンが元になった神話を喰らうことも可能となるのではないか?
つまり、それこそがアレイスターが考えていた位相の破壊方法。
雷神御坂が生み出した程度の異物を削除するために、八頭全てを呼んだとするなら幾らなんでも出力が低いんじゃね?と思うかもしれないが、その所有者が『上条当麻』から『神浄の討魔』に代わるとするならどうだろう?
アンナ=シュプレンゲルが蛹から蝶になると形容したことから、神浄の討魔の出力は上条当麻よりも上だと考えることができる上に、アレイスターの調整次第では位相を砕くことも可能だろう。(※アレイスターが衝撃の杖で10倍にすることは不可能です。意思が存在しない位相には通用しないため)
③上条当麻と隕石
そして、最後となるが上条に向けて作中で隕石が度々降ってきているのをご存知だろうか?
例えば、本編から外れてしまうがエンデュミオンの事件発生前のスペースデブリを使用した魔術『ブラフマーアストラ』。
あれを隕石と見るなら、あれでドラゴンが創られてもおかしくなくね?っとなる。いや、マジであれがドラゴンとなるのなら科学技術が生み出したスペースデブリから、物理法則の位相が喰われるんじゃね?とか疑問が浮かんでしまう。
かまちーのミスか?とも一瞬思ったが、『失敗』することが確定のキャラクターが黒幕だったことで納得した。ああ、やりそうだと。
まあ、神話の一撃とはいえ魔術師の再現のため、神話要素が足らずドラゴン化するかは難しいだろうと作者は考えている。それこそ、魔術師トールが全能神の力を出したとはいえ、それで神話のトール神と同等かと言われれば首を傾げる人は多いのではないだろうか。
だが、もう一つ。本編で描写されている隕石が存在している。
それは新訳の13刊。雲川芹亜と漫画雑誌とかお嬢様そーじょさんのラブレターだとか、フィアンマ風車事件だとか、そう言った諸々をこなした後の最後で出てきただろう?
魔神の僧正と一体化したアローヘッド彗星が。
上条当麻の身体から右腕が離れたとき、他の刊で表現されている内側から弾けるような「ぼごんっ!!」という音でもなく、コロンゾンに右腕を切り飛ばされて「めきめきめきめき!!」と、内側から溢れる力が表出するときの表現でもない。
あの時、上条の右腕からは「ピシリピシリ」という亀裂の音がしたのではなかったか?ならば、あの時は他の時と明確に違う何かが起きていたのではないか?
例えば、あれは上条の内側から何かが表出するのではなく、外側から向かってくる何かを「捕食」しようとしていたとか。
魔神とは神格を得た魔術師のことを言うのならば、それは即ち神話の領域に足を踏み込んでいることと同義であると考えられる。つまり、あのアローヘッド彗星はドラゴン化に必要な条件を揃えていることになるのではないだろうか?
まあ、だとしても上条を長年調節していたアレイスターからすれば、降って沸いた僧正のドラゴン化など邪魔でしかない。だから、木原脳幹を手配して取り込む前に消し飛ばしたのではないか、と私は考えた。
備考
上条の中にある透明な何かがV.V.V.V.V.である可能性もあり。神浄の討魔=V.V.V.V.V.かは考察であろうと断定できない。
っとまあ、こんな如何にも自信満々で書いているように見えますが、全て海鮮茶漬けの妄想なのでそこのところお忘れなくm(_ _)m