とある原石の神造人形(エルキドゥ)   作:海鮮茶漬け

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評価のコメントで「物語を深掘りするのではなく、典型的なオリ主を加えただけの二次小説」と書かれ、どうすればいいのか悩み続けました。

物語を深掘りする二次小説とはこれ如何に?


139.魔術を絶滅させる者の装備

 泥を被った人影が津波のように押し寄せて来る。その状況下においても削板軍覇は前を見据えて、その絶望に突き進む。

 

「だらっしゃああああああああああッッ!!!!」

 

 その裂帛の声音と共に人影が纏めて吹き飛んでいく。泥から生まれた存在を次々とその拳で殴り飛ばしていくその光景は、まさに圧巻としか言えない。

 いとも簡単に吹き飛ばすその光景を見れば誰でも彼が優勢だと思うことだろうが、当事者である削板の表情は芳しくなかった。

 

「チッ…………やべぇな。速さじゃ俺の方が圧倒的に上なんだが、完璧にガードされてやがる。経験則からか直感からかは分からねえが一筋縄じゃいかねえぞ」

 

 削板は押し寄せる泥から生まれた存在と全力で相対していた。もちろん、音速の速さでだ。

 それほどの速さで攻撃されれば視認することなど出来ずに叩き伏せられるのが普通だろう。しかし、泥から現れた人影は全てではないが、対応出来るものがほとんどだった。

 まるで、人が生存出来る速度を超過した戦闘を今まで経験してきたかのように。

 

「───まさか、サーヴァントの速さ以上の人間がいるとはね。技巧で敵わなくても自分を卑下する必要はないよ。彼らは戦乱の時代を生きて『座』に登録された英雄なのだから」

 

 エルキドゥはこの泥の人影が、一体どういう原理で生まれ落ちたのかは分からなかったが、その者達がサーヴァントであると確信していた。それは技巧であったり人外の膂力であったりと、あたりを付けるのはそう難しいことではない。

 

 だからこそ、この場に居る誰よりも状況の危険さを把握していた、

 

「ハァッ!!」

 

 近付いてきたサーヴァントに対してエルキドゥが攻撃する。しかし、それが通じることはない。

 生み出した剣で刃を受け止めたエルキドゥは、更に迫り来る槍を身を翻し跳んで躱した。

 

「……『変容』で対応はしているけど、やはり本来の性能の一割程度しか出せないようだね。全てのステータスがほぼ最低値のことを踏まえれば、代行者と呼ばれる魔術師程度の性能まで落ちてしまっているようだ。

 気配察知でどこまで(しの)げるかの域にきてしまっている」

 

 本来のエルキドゥならば、押し寄せる泥のサーヴァントを一掃することなど朝飯前だ。泥から生まれたサーヴァントの中には、エルキドゥ相当の一級サーヴァントも存在しているが、泥の狂気に侵された相手ならばエルキドゥの相手になることはない。

 しかし、現在の限られた魔力に加えて、現界するための魔法陣という仕切りを踏まえて計算し直すと、エルキドゥのステータスは最弱サーヴァントであるアンリマユと同等までに減衰してしまっている。

 それを考えれば、今尚討たれることなく生存しているだけで、大健闘と言えた。

 

「どうなってんのよコイツらッッ!!」

 

 雷撃をぶつけるがすぐさま持ち直し攻撃を仕掛けてくるその異様なタフさに、御坂美琴は冷や汗をかく。

 

「雷撃を何発を食らわせてんのに全然落ちない……!流石の私もこの連戦続きで体力の限界が近いってのに!!」

 

 雷神、天使、不完全の魔神。

 それを戦い抜いてこの大軍を相手取るとなれば、流石の超能力者(レベル5)であろうとも体力の限界に到達するのは自然なことだった。

 今の彼女にできることは雷撃を泥の中から生まれた人影にぶつけ、一時的に動きを止める程度のことだけ。……しかしそれも、圧倒的な数の前には無力という他ない。

 

 それを見た土御門は諦念を顔に浮かばせながら、一人呟いた。

 

「……こっちは世界をぶっ壊すようなラスボスクラスの化け物の退治を何度もしてるってのに、最後の最後に出てくるのが無限に湧き出てくる聖人並みの泥の化け物共ってのは、ちっとばかしゲームバランス狂ってないかにゃー……?

 なんつーか、まるでこの世界を滅ぼしたい思念みたいなのを感じるぜよ」

 

 全員疲労困憊もいいところ。いつ脱落者が出てもおかしくないのだ。既に逃げることも出来はしない。このままでは、万事休す───

 

「土御門ッッ!!」

 

「ッ!?」

 

 その声と共に後ろへ振り向けば土御門の背後から鉄槌が迫りつつあった。この位置では逃げることは不可能。

 土御門は本能で一秒後に圧倒的な怪力で絶命することを察した。だが、それを許さない男が飛び込んでくる。

 

「うおおおおおおおおおおおおッッ!!!!」

 

 鉄槌と割り込んだ上条の右手が衝突すると、その鉄槌ごと大男が消滅したのだ。鉄槌だけでなく本体まで消えたのはその身に纏う泥の影響かもしれない。

 

「すまない助かった!」

 

「魔法陣の内側に居ないといけない土御門は逃げることも出来ないってことか。土御門の側に居る方がいいっぽいな」

 

 土御門元春は安易に魔術を使うことが出来ない。彼にとっての魔術の行使はロシアンルーレットでいつ死ぬか分からないからだ。今の緊迫した状況で使うのはおかしくはないが、打開できる道筋が確定出来てない現状では無駄撃ちになりかねない。

 

「(そもそも、俺の魔術がコイツらに効くのか怪しいってのもあるがな……)」

 

「……ヤバいぞ土御門。どいつもこいつも動きのスピードが人間を超えてる。神裂レベルの奴は削板が相手取ってるけど、このままじゃ時間の問題だ」

 

「同感だぜい上やん。それこそ、神裂のねーちんがこの場に居ても数に押し潰されるのが目に見えてる。第七位も頑張ってはくれているがアイツも第三位同様に連戦続きだ。時間の問題だろうな」

 

 どん詰まり。

 質でも量でも上回られているこの状況では、打開の策など講じれる訳もない。

 

 上条当麻は上位のサーヴァントの動きに反応出来ない。

 土御門元春は自衛することすら不可能。

 御坂美琴は限界間近。

 削板軍覇は技巧で劣っている。

 

 どれだけ絶望的な状況を機転と度胸で覆そうとも、何度も襲い掛かってくる災厄に心が折れていくことを実感する。

 果たして、箱から溢れ出すこの泥はどこまで広がるのか。学園都市だけで済むのか。はたまた、日本全域か。それこそ、()()()()()()()()()()()()()()。それは、誰にも分からない。

 しかし、その不安はその場に居る彼らだけの恐怖ではなかったのだ。

 

「───ッ……これは!」

 

 エルキドゥの身体に異変が起きた。エルキドゥはこの力に身に覚えがある。そのため、驚きながらもすぐさま納得した。この状況ならばそうなってもおかしくないと。

 そして、エルキドゥがその力を振るう前に状況は更に動く。

 

 

 

 キュガッッ!!という空気が破裂する音と共に、辺り一帯が爆炎に包まれたのだ。戦場に近代兵器による花が咲き乱れる。

 

 

 

「ぐあ……っ!?な……何だッ!?」

 

「学園都市の最新兵器……アレイスターの野郎か!?」

 

 爆風に煽られながら二人はその光景を目の当たりにする。泥のサーヴァント達が爆炎に飲み込まれて次々と消滅していく姿を。

 

「(アレイスターの奴がこの状況で出してきたってことは……奴の虎の子か!?)」

 

 科学サイドである学園都市が今回のことで表から動くことはまずあり得ない。魔術サイドの領分に入るということは敵対することと同義だからだ。

 そのため、これはアレイスター個人が所有している武力なのだと、土御門はあたりを付ける。

 

「(あの黒い箱が魔術なのか超能力なのかは分からないが、何かしらの『異能』による物なのは間違いない。なら、幻想殺し(イマジンブレイカー)が状況打破に必須なのはアレイスターも当然分かってるだろう。

 下手な爆撃は異能しか打ち消せない幻想殺しにとって相性は最悪。援護どころか邪魔にしかならない以上、奴はこの攻撃が効果的だと判断している……?)」

 

 その土御門の予想通りに、爆撃にあった泥のサーヴァントは全て消滅したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ふむ、やはりあの箱は魔術の領分ということか』

 

 葉巻を吹かしながらその老犬は爆撃地点に目を向けた。そんな彼が背中に展開する兵器の名は『対魔術式駆動鎧(アンチアートアタッチメント)』。

 アレイスターが秘密裏に生み出した、科学と魔術の技術を組み合わせた兵器である。科学兵器の火力とアレイスターの魔術式による魔術の無効果により、対魔術戦では無類の強さを誇る科学と魔術の異端兵装。

 如何に万夫不当の英雄達であろうとも、神秘で練られたサーヴァントの身では耐えることなど出来はしない。

 

『それよりも、本当に問題は無いんだろうなアレイスター。彼女には「黄金」の要素があったのだろう?

 元とはいえ、お前は(かつ)て魔術結社「黄金」のメンバーの一人。如何なる手段を用いて魔術を上書きしたとしても、その癖や匂いを消すことは出来ないという話だった筈だが?』

 

 木原脳幹は葉巻を咥えながら通信相手に釘を刺す。アレイスターの魔術が相手を強くしてしまうのならば、アレイスターの魔術で起動する『A.A.A.』も同じく天敵になるのは道理だろう。

 

『いや、それについては問題は無いだろう。確かに、関係性は不明だが彼女が「黄金」の魔術理論を始めとした、様々なシンボルからエッセンスを抽出し魔神へ進化する以上、私の魔術は無駄骨どころか肥え太らせる餌にしかならない。

 だが、どうやら天野倶佐利は既に魔神への進化を完全に失敗したようだ。

 あの黒い箱が現出したあとは、どれだけ観察しても天野倶佐利に魔神の予兆は見えない。今ならば「黄金」の要素を含んだ魔術を与えても、こちらが一方的に不利になることはない』

 

 だからこそ、現時点でもって天野倶佐利を殺害するのだ。アレイスター=クロウリーが長年をかけて描いてきた絵図を、引っ掻き回すその異端者を処理するために。

 

『だが、今回のことでお前の計画(プラン)に大きな歪みが出来たのではないか?』

 

『不測の事態に直面するのはいつものことだ。何より根本を覆す致命的な損害が出てない以上は行幸だろう。

 まあ、確度を持たせるために計画(プラン)を幾らか拡張せねばならないだろうが、あり得た最悪の可能性の数々から比較すれば悪くない着地点だよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突然の事態に付いていけてない上条が目を見開いた。

 

「目の前に居た奴らが全部消し飛んでる……ッ!?」

 

「……なんにせよ俺達の直近の死は遠退いたが、……ちょっとマズイ展開になったかもしれないぜよ、上やん」

 

「マズいだって?」

 

「泥の人影が消えたってことは俺達の危機が去ったってことと同時に、天野を遮る物が全て失くなったってことだ。このままじゃ、あそこで寝っ転がっている天野に向けて、さっきの攻撃がすぐにでも降り注いでくるぞ」

 

「ッ!……───先輩ッッ!!」

 

 何か行動を起こす、その時点で上条は二手も三手も遅れている。相手は近代兵器なのだから、その速度はマッハの領域。

 言葉を発する前には上条の上空に向けて、様々な兵器による攻撃が高速で駆け抜ける。

 そして、その爆撃に何一つ動くことが出来ないのは他の者達も同様だった。

 降り注ぐ兵器による攻撃に対処可能な超能力者(レベル5)の二人も、体力の消耗により対応することが間に合わない。この場に居る人間は誰一人として天野を救うことは不可能だった。

 

 そう、ここに居る人間には。

 

 

 

 

 

 

「───星に刻まれし傷と栄華、今こそ歌い上げよう───」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのゴールデンレトリバーは自らが撃ち込んだ爆撃の行方をビルの屋上から眺めていた。

 

『これで天野倶佐利は死に魔術サイドの衝突を始めとした様々な問題も解消される。計画(プラン)の修正も可能だろう。君には予定よりも多く動いて貰うことになるがね。

 木原一族全体と暗部を利用すれば目標地点まで辿り着くことも不可能ではない。老犬を酷使させるのも忍びないが君にはこれから精力的に活動して貰うぞ』

 

 通話口でアレイスターが木原脳幹にこれからの予定を告げていく。天野倶佐利が引き起こした数々の問題行動により、空気中の滞空回線(アンダーライン)は使い物にならなくなっていた。

 しかし、今のアレイスターには木原脳幹が居る。学園都市の『死神』が死の鎌を振り下ろしたのならば対象者は確実に絶命している。それは、今までの戦歴から見てもそうであるし、何より意識が無い人間を殺し損ねるほど愚鈍ではないと確信していた。

 だからこそ、発せられたその言葉にアレイスターは驚愕することになる。

 目を細めた『死神』は苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。

 

『……全弾撃ち落とされただと……?馬鹿な、明らかにアレは魔術サイドのゲテモノだろうに』

 

『…………………………………………何だと?』

 

 彼は発射地点に居た薄緑色の髪をした存在が、何かを地面から造りだし迎撃をしたのを目にする。

 だがしかし、これは本来ならばあり得ないことだ。魔術で生み出した物ならば問答無用で粉砕する『A.A.A.』は、魔術で生み出した物で破壊することは不可能だ。

 そのことを、この兵器を多用してきた木原脳幹は誰よりも実感している。それこそ、この兵器を用いて幾度も魔術サイドの人間のみならず、科学サイドの敵勢力も今まで全て粉砕しているのだから。 

 

 彼が見下ろした先では、萌葱色の髪をした存在が微笑みを浮かべながら新しく兵器を地面から生み出している。その事象ですら木原脳幹には受け入れ難くはあるが、問題は更にその先。

 彼はその(つぶ)らな瞳でそれを視認したのだ。光と共に生み出された兵器の側面に刻まれたその文字を。

 

『……アレイスター、まさかお前製造方法を盗まれるなんて初歩的な「失敗」はしてないだろうな?』

 

 人外が生み出した兵器の側面には、彼にとって既に見慣れてしまった文字がそこに刻まれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ───Anti-Art-Attachment───

 

 




これから諸事情で忙しくなるため、しばらく投稿できなくなる可能性が高いです。
何度も述べているように何年掛かっても書き終えるつもりなので(止む終えない理由がなければ)、次の投稿まで待っていただけると嬉しいです。
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