子ども1人が焼死した「東京デザインウィーク火災」。出火した展示物に関わった当時大学1年生2人の刑事裁判で、2人にそれぞれ罰金50万円を科す判決が下った。重過失が問われた一連の裁判をひも解く。(日経アーキテクチュア)
2016年11月、明治神宮外苑(東京・新宿)で開催されていたアートイベント「東京デザインウィーク」の会場で、木製オブジェが燃える火災が発生。中で遊んでいた子ども1人が焼死し、助け出そうとした父親が重度のやけどを負った。
イベント展示物の安全性を巡り、議論を呼んだこの火災。記憶に残っている読者も多いのではないか。今回取り上げるのは、火災を巡る一連の刑事裁判だ。
概要を見ていこう。出火した展示物は日本工業大学工学部建築学科の学生などの有志グループが制作したものだ。同大学はイベントに5年連続で出展しており、展示物も費用を大学が負担し、教員の指導の下で制作していた。
展示物はスギの角材で立方体の骨組み(キューブ)を数多くつくり、積み上げて固定し、ジャングルジム状に仕立てたものだ。意匠として、キューブ内や地面に多量のかんなくずを使用していた〔図1〕。
火災が起こったのは16年11月6日。日曜日だったこともあり、展示物は多くの子どもたちでにぎわった。イベントは翌日に閉幕する予定だった。子どもたちは、かんなくずに興味を持ち、むしったり投げたり、持ち運んだりして遊んでいたようだ。
日が傾いた午後5時ごろ、この展示物で屋外用投光器の電源が入った。ライトアップされた展示物は目立ち、さらに人が集まった。
投光器の点灯から約15分後。投光器の辺りが急に明るさを増した。直後に大きな炎が立ち上った。火は展示物のほぼ全体に一気に燃え広がった。