フジテレビを揺るがす中居正広「性被害」問題が暴いた、日本テレビ業界の「中国依存」と「内部腐敗」の深刻な実態

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放送局は社会的責任を自覚しているか

3月31日、フジテレビは元タレント中居正広氏の性暴力に関する第三者委員会の調査報告書を公表した。生々しい証言や調査を基に厳しくフジテレビの人権意識の低さや業務の延長線上で起きた性被害への企業としてのコンプライアンス、ガバナンス能力の欠如を厳しく断罪した。

それを受けて清水社長は様々な改革案や、日枝会長の退任、役員構成の大幅な刷新などで企業イメージや信頼回復に努めると謝罪した。しかし、フジテレビの存続を揺るがすほどに社会から批判を浴びたこの問題は、まだまだ終結する道は険しいと思わざるを得ない。

「企業コンプライアンス」や「企業ガバナンス」の未成熟問題は、この元タレント中居正広氏が関係する性被害や性的ハラスメントへの対応問題だけではないからだ。フジテレビだけに内在する問題でもない。これは日本の放送業界全体に侵食する総合的な劣化現象の一端であり、しかも、それは日本社会全体に様々な悪影響を及ぼす危険要素を孕んでいるのだ。

放送法には放送局の議決権を持つ外国人株主が20%以上保有すると免許を取り消す、という規約がある。理由は明白だ。ロシアや中国、北朝鮮など外国の政治的プロパガンダや外国の利益の為に日本の電波を利用されるのを防ぐためだ。

しかし、放送局がこの本来の目的を真摯に理解し社会的責任を自覚しているか、近年の現状には甚だ疑問を感じざるを得ないのだ。

“共同制作”に隠された中国の工作

某キー局が長年続けている著名ドキュメンタリー番組がある。

様々な市民の悲喜こもごもの日常を丁寧に切り取ったドキュメンタリー番組だ。ドキュメンタリー番組が視聴者に及ぼす影響は報道にも近いものがある。バラエティーやドラマと違って社会的事実や現実を映像で掘り下げ、リアルなノンフィクションとして提供する。視聴者もそれを前提として受け止める。そこに価値が生まれるのだ。

しかし、同時にそこに目的を持った作為的な演出が組み込まれると真実とはほど遠い印象操作が可能になる。

その番組では2017年から年数本、中国の某テレビ会社と共同制作を行っている。共同制作となっているが、制作費はすべて中国側が出資し、しかも製作費は通常の3倍の予算だ。露骨な政治的プロパガンダはないが、日本で生活する中国人という設定で中国にとって決してネガティブなイメージはない。むしろポジティブに印象付ける内容だ。

この企画は「日本のドキュメンタリー制作技術を学ぶため」という名目で中国の「G」社から担当プロデューサーX氏に突然、アプローチがあったという。当時、この企画に対し社内から多くの反対があったが、X氏は「会長に直訴して許諾を得て最終的に稟議を通した」と自慢げに話していたのを私は記憶している。まさに鶴の一声で決まったのだ。

この中国の「G」社は共産党国務院新聞弁公室直轄の国営制作会社。宣伝部が国内向け、新聞弁公室は対外発信とすみ分けられ、目的も「共産党の内外政策や社会状況などを世界に紹介し正確な中国報道を推進させる」と明記されている。歴史番組や旅行番組などでの日中共同制作は過去にも各局で何度もある。しかし、中国でロケを行い予算は日本、現地スタッフは中国が協力するなどの制作体制が一般的だ。

「日本のドキュメンタリー技術を学ぶため」という理由と「G」社の組織的目的との齟齬も違和感がある。3倍の制作費を全額出して自国ではほとんど有効活用せずしかも製作スタッフはすべて日本人で殆どが外注。どこで技術を学ぶのだろうか。コンテンツの企画や番組内容の決定権は担当チーフプロデューサーひとりが握っている。まさに中国共産党が「認知戦のような工作」を仕掛けた、と仮定すれば恰好のターゲットだったのではないだろうか。放送局の議決権は掌握できなくとも、番組ごとに掌握できれば、同様の工作を仕掛けることは可能だ。予算確保に苦しみ弱体化する日本のメディアを狙ったテストケースだったのでは?との憶測も生まれる。

法的には抵触しなくとも公共の電波を預かる保守系メディアの社会的責任から見ると「中国政府の下請け放送局」と化す安全保障上の危険もあるグレーゾーンではないだろうか。

人材派遣・制作会社の闇

そしてもうひとつ、日本の放送界における社会的責任の劣化現象を示す例がある。

別の老舗キー局の報道部内に存在する不可思議な「人材派遣・制作会社」だ。

放送法の総則三項に「放送に関わる者の職責を明らかにすることによって放送が健全な民主主義の発展に資するようにすること」という規約がある。公共性の高い電波を扱う者の透明性、社会的責任を問うものだ。

しかし、この某局報道部内にある「人材派遣・制作会社・F」は、平成13年に放送作家A氏が設立した個人の有限会社にもかかわらず、なぜか株式会社への変更を経て役員に当時の報道局長Z氏ら局関係者が登記されていた。つまり現職報道局長とフリーの放送作家の共同経営会社という事だ。

そして、多くの夕方のニュース番組や報道特集番組の制作に関わる局内常駐の派遣ディレクターや派遣プロデューサー、さらに番組に出演する元報道部員のコメンテーターも、なぜかその会社経由で派遣している。

発注者は某テレビ局、そして発注および番組制作責任者はZ報道局長、受注会社「F」の代表は報道部の企画制作に関わる放送作家A氏でその会社の役員としてZ局長が名を連ねる。予算削減を強いられる厳しい経営環境の中で、なぜ、利益相反を疑われるような仕組みを作る必然性はどこにあるのだろうか。F社の収支や利益、役員報酬はどうなっているのか。まさに「放送に関わる者の職責を明らかにする」意味では非常に不可解と言わざるを得ない。中小企業のオーナー企業ならいざ知らず、放送法で規定され公共の電波を預かる老舗テレビ局、「民主主義に沿って公平な真実」を求められる報道局にあってはならない歪な体制に見えるのは当然だろう。

日本のテレビ業界が劣化した根本的な原因

このように長年、マスメディアの雄として君臨してきた日本のテレビ業界の劣化現象は急速に進んでいる。中でも崩壊状態にあるのはこういった「コンプライアンス」、「ガバナンス」への自浄作用と自らへの危機感だ。某報道部の歪な人材派遣システムも業界では長い間、黒い噂にはなっていたが局内部や労働組合から正式に批判の声が上がることはいっさいなかった。さらに、ここから派遣された常勤スタッフが外部スタッフにパワハラ行為を行っていた事実もある。

不可思議な中国との共同制作も是正するチャンスはあったが、自浄作用はまったく機能しなかった。担当プロデューサーのX氏は中国との共同制作を数年続けた後、突然、テレビ局を退職し,しばらく共同制作は中断した。

後任のプロデューサーの話によると、どうやらX氏は中国側の「G」社から何らかの金銭を受けていたらしい、というのだ。中国共産党の工作過程によくある手口だ。ハニートラップ、接待漬け、裏金による支配。中国側の担当者も同時期に退職したという。

しかし、これらが発覚した段階で自浄作用や危機管理能力が働けば、X氏の退職を機に怪しい中国との関係は幕を引けたはずだ。しかし、後任の担当者は、再度北京へ飛び中国との契約を延長している。まさに自浄作用が機能していなかったフジテレビの元タレント中居氏事件と共通するものがあるのは明白だろう。

放送業界が根本から変わる最後のチャンスかもしれない

3月24日放送の日本テレビ「月曜から夜ふかし」の番組内で、「中国人はカラスを煮て食べるから、カラスがいない」など事実とはまったく異なる悪意ある噓の内容に脚色し放送した。

これが表面化した後、日本テレビは「テレビメディアとしてはあってはならない事」「製作スタッフが意図的に編集した」「製作プロセスを徹底的に見直して再発防止に努める」と謝罪し、村上総務大臣も「日本テレビは社会的役割を自覚し適切に対応してほしい」と発言した。

フジテレビ問題が進捗するなかでの異例な素早い反応だろう。しかし、このような「テレビメディアとしてはあってはならない事」は、各局で過去何十年も綿々と繰り返されてきた。数多くの「事前の仕込み」、「作為的演出」などきりがない。優秀なテレビ番組に与えるギャラクシー賞を取った某番組も中国人の取材対象者に「CCTV」の取材と偽って中国人スタッフに取材させていた。日本のTVからの取材だったら受けなかっただろう。翻訳を捻じ曲げるなどもずっと行われてきたことだ。

しかしこれは決して現場の制作スタッフだけの問題ではない。根本原因はすべて現在の日本の放送局が抱える「コンプライアンス」、「ガバナンス」への自浄作用と自らへの危機感の欠如に起因しているのだ。視聴率の為に中国人への印象操作の偽情報を流し、予算の為に危機管理を無視して中国政府の下請けのようなドキュメンタリーを制作する。「やらせ」や「悪意ある演出」、「情報操作」が現象として繰り返し浮かんでは消えるのはあくまで表層的な症状の一端にすぎない。

確固たる市民メディアがいまだ確立しない日本で、玉石混交合のネットメディアが世論を主導する情報の混乱は様々な社会的リスク要因を生む。闇バイトなど新たな社会犯罪やデジタル詐欺も情報の錯綜に影響され進化していく。地方選挙などの政治的混乱も次から次に産まれてくるだろう。TVなどマスメディアの劣化と不信はそれらをさらに加速させる。韓国やアメリカの政治的混乱も決して他人ごとではない。それを狙った認知戦など安全保障の問題も迫りくる危機だ。

総務省はフジテレビに行政指導を開始したが、これを機に放送法の改正や現在の電波の割り当てなど含め、新たな競争原理の導入など大胆な放送改革を早急に審議する必要がある。もうはやTVメディアが世論を主導する時代は終焉に向かっている。今回のフジテレビ問題は存亡を兼ねた日本の放送業界を根本から改革する最後のチャンスかもしれないのだ。

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