どーも竜尾です。
やっとこの小説も軌道に乗ってきた気がします。
気がします。本当に。
僕の私情そっちのけで小説が進んでいく…。
ペースは落とせないしストックも足りないし。
ま、頑張りますです。
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俺達の目の前に浮かぶ『Congratulation!』の文字とファンファーレ。
数時間緊張感が張りつめた戦いで、ファンファーレが鳴った途端に倒れ込む者や、歓喜の声を上げる者もいた。
もちろん、この勝利を素直に喜ぶことが出来ない者たちもいた。
今回一番大損害を被ったのは《軍》だった。
《軍》から参加した十八人の内、七人が帰らざる人となった。
その中には、戦闘の序盤を支え続けたあのスコータムもいるのだ。
《軍》のプレイヤーの顔は一様に暗いものだった。
「んじゃ、オレはさっさと上に上がってるぜ」
今回も戦火を上げたジャックはもう集団から離れ、次の階層へと続く扉に手をかけていた。
「そういやおめえよ、LAボーナスは何だったんだ?」
ジャックを引きとめようとしたクラインの言葉に、全員の視線がジャックに集まる。
「確かに、あれだけ強いボスなら相当のレアアイテムが出てるんじゃないのか?」
それに賛同するようにエギルも言葉を発した。
ジャックは右手を軽く動かしウィンドウを操作している。
やがてその手が止まり、皆ジャックが手に入れたアイテムに期待の眼差しを向けている。
「あー、悪いがこれについてはノーコメントだ」
が、ジャックから放たれた言葉はその期待を裏切るものだった。
不満の声を上げるプレイヤーたちにジャックは苦笑いしながら答える。
「生憎嘘は吐かねぇって言ったんでな、どうしても知りたきゃオレを倒すんだな」
強引に非難の声を断ち切って扉を開ける。
俺もジャックが手に入れた者には興味があったが、何せ疲労で立つことが出来なかった。
(まだ、あんなに動けるのかよ……)
ジャックの強さに思わず苦笑いするのが自分でも判る。
(とにかく、今はゆっくり休んでおくか)
手の力を抜いて大の字になって地面に転がる。
やっと四分の一まで登って来たんだ。
そう実感すると、両の手を強く握る。
いや、まだ四分の一しか登りきれてないんだ。
現実世界では、きっと俺達を病院に搬送する準備や死者が増えることにたくさんの人間が仕事に追われているだろう。
それに、俺達がこの世界で戦っている今も現実は確実に変わって行く。
ふと、家族のことを思い出しそうになる思考を断ち切る。
――この世界で《殺人鬼》と呼ばれる彼は現実世界を思い出すことはあるのだろうか。
ジャックの言葉が真実なら、彼の今の姿は現実とはまったく違う物。
現実から一番かけ離れた姿をしているからこそ現実を一番理解しているのだろう。
彼が去って行った扉の先に視線を向ける。
そこにはもう彼の姿は無く、ただ風が吹くだけであった。
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第二十六層主街区《ピキャトム》。
第二十五層で《軍》が大損害を追ったことにより戦線離脱。
話によればしばらくは《はじまりの街》の治安維持に専念するとか。
その開いた穴を埋めなければならなくなった攻略組は人員を増やさなければならなかった。
そして迎えた第二十六層ボス攻略会議。
「なんとか今日までに攻略組を四十八人にすることが出来た!皆協力を感謝する!!」
攻略組は《軍》がいなくなったことにより《ドラゴンナイツ》改め《聖竜連合》のリンドが実質的に攻略組のリーダーとなっている。
そして彼によって新しく参加するメンバーが発表され、各々軽く挨拶をしている。
新参者が多く、上手く連携が取れるのか少し不安になったがまあ、上手くやって行くしかないかと考えていた。
「それじゃ、最後は《シンディア》さんだね」
だがリンドの紹介で姿を現したプレイヤーに俺達は驚愕することになる。
「えーと、ご紹介に預かりました《シンディア》と言います。今までソロでやってきたのでレイドを組むのは初めてですが足を引っ張らないように頑張るのでよろしくお願いします!」
その声の主がSAOにおいて絶滅危惧種と言われる程の美貌を持っていたからだ。
肩の先辺りまで伸びた白い髪は、光を反射して艶やかな輝きを発している。
顔も整っていて髪の美しさに劣らない真っ白な肌。
両眼は透き通るような蒼色をしていて、それもまた彼女の魅力を引き立てている。
身長も高く、体つきも女性の魅力を詰め込んだような、まさに男の求める女性理想形がそこにはあった。
年も二十歳か十代後半くらいだろう。
そんなアスナに勝るとも劣らない美少女の登場に、この場に居るほとんどのプレイヤーが度胆を抜かれていた。
そして、我に返ったプレイヤーたちも三度彼女の姿を見ると、あることに気付く。
彼女、《シンデイア》の腕に付いている籠手と腰から下に付いている金属製の装備が黄金色に煌めいていたことを。
当然、これには俺も驚いた。
――《ルクスリア・ゴールド・ルナシリーズ》。
通称《LGL》。
シンディアの付けている装備はアルゴに聞いたことのある物だ。
十層毎に発生するクエストでソロでしか受けられないことに加え、その難易度が恐ろしい程に高いのだ。
第二十層に出現したクエストでは死者が出たという話すら聞いた。
おまけにこのクエストは二つともクリアするまでに最低でも一週間の時間を要する。
正直挑戦してみたい気にもなったが、攻略組として一週間も潜る訳にはいかないのでクエストを受けることはなかった。
そのクリア報酬として手に入れられるのが、この金色の装備である。
アルゴの話では防御力が高い上にそれほど重量もなく筋力値が低くても十分に装備が出来る。
重装備そうに見えて全く動きを阻害することが無い激レア防具だが唯一欠点があるらしい。
その黄金の輝きから解るように装備者はモンスターのヘイトをかなり高くとる。
それに加えて――。
『この装備は装備者の魅力を引き立てる効果を持っているんダ。つまり、アーちゃんが装備すれば攻略組の男共は即座に骨抜きダヨ!』
なんてことを陽気に言っていたが……。
目の前で複数の男たちが目を血走らせているのを見ると、あの話が本当だったのだとよく分かった。
俺も始めて彼女の姿を目にしたときには流石に見惚れてしまったが、何故か背中にゾクッとする物を感じたので正気を保つことが出来た。
「皆落ち着いてくれ、シンディアさんも困っているだろ」
リンドがそういうと男共は舌打ちを飛ばしながら黙る。
その原因となった当の本人はやっぱりか、と苦笑いを浮かべている。
「これで攻略組はまた四十八人揃った!これから第二十六層ボス攻略会議を始める!!」
その声に全員の顔が引き締まる。
誰もが第二十五層の大惨事を知っているのだ。
『アインクラッド史上最大の悲劇』として俺達の戦いはボス攻略の翌日に新聞にとり上げられた。
死者十人にも及んだ戦いが皆の緊張感をよりいっそう高めていた。
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「こんにちは、ガンドーラ」
攻略会議も終わり、飯でも食べに行こうとジャックと共に歩いていたところに声をかけて来たのはシンディアだった。
「何か用か?」
足を止め、振り返ると真剣な顔をしたシンディアが立っていた。
「あなたには伝えておくことがあったから、《
「あ、ああ」
《
全身を真っ黒く染めていることからそう付けられたらしいのだが、俺にとってはちょっと不服な渾名だった。
俺が了承するとシンディアはジャックの方を向く。
その眼に何らかの感情が込められているのは見て取れた。
「始めましてになるわねガンドーラ」
蒼眼は真っ直ぐとジャックを捉えている。
その姿が、あの時の彼の姿を俺に思い出させた。
――ジャックに四肢を切断されて最後には首を切られて殺されたあの姿が。
「ガンドーラ、わたしは許さないから」
彼女が放ったのは間違いなくジャックへの挑戦の一言。
必ず勝てると確信を得ているような笑みを浮かべながら放った言葉には不思議と強さを感じた。
「あぁ、戦うってんなら今でも良いぜぇ?」
口元を大きく釣り上げながら返答する彼の目は、あの時と同じような光景が映っているのだろう。
間違いなくジャックはシンディアを殺すつもりだ。
「残念ながら今のわたしじゃまだ力不足なのはよくわかってるわ。いつかの話よ」
「なら、オレと戦うまでにせいぜい死なないことだな」
嫌味たっぷりにジャックは言うが、シンディアは気にする様子もなく踵を返して歩き始めた。
「無駄死になんてしないから」
その言葉は、俺に言われた訳ではないのに深く心に突き刺さっていた。
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シンディアによるジャックへの宣戦布告はあったが、二人とも何もアクションを起こすことは無く、俺達を攻略を続けていった。
彼女の力は付けている装備からも予想できた通りかなりの手練だった。
左手には彼女の身長ほどはあるんじゃないかというランスが握られ、右手には片手剣使いが使うような小型の盾。
それらを非常にうまく駆使してヘイトの高く溜まる欠点をもった《LGL》をカバーしている。
女性にはとても持つことは出来なさそうなランスを振って敵をなぎ倒し、盾でしっかりと攻撃を往なす。
まるでアタッカーと壁役を同時に熟しているようだ。
加えてあの美貌。
アスナと言い彼女と言い、天は何故にこうも一人の人に物を与えるのか。
ま、悪い気はしないが。
シンディアがいることにより主に精神面の方で強化された攻略組は《軍》が抜けた今でも順調に攻略を続けている。
ジャックは相変わらずだ。
挑戦者を蹴散らしては一人、また一人と無謀にも圏外で彼を襲ったプレイヤーたちを惨殺していると聞く。
『今じゃジャックが圏内に居るのかいないのかでも十分に情報量が取れるヨ……』
そういうアルゴの声は暗かった。
ジャック自身、自分の立場を気にせずアルゴに喋りかけることもあるらしいが、アルゴにはそれが複雑なのだ。
情報屋という危険を背負った仕事はしているが、それでも彼女には明確な『死』への耐性がついていないのだろう。
だから、ジャックという存在が解らなくなる。
――何故、《殺人鬼》と呼ばれている彼が最前線に立ち続けるのか。
――何故、人を殺しておきながら日常を謳歌し、笑顔を浮かべることが出来るのか。
――何故、恐れられながらも誰かといることが出来るのだろうか。
もうこの鋼鉄の城も、下から四分の一が踏破された。
その間ジャックとは何度も戦いを共にしてきた。
それでも、俺達は誰一人として彼のことを理解できていない。
ただただ彼の手の上で踊っているのを、口元を狂気的に釣り上げて見ているのだ。
この世界を作り上げた茅場晶彦はジャックという男についてどんな感情を抱いているのかふと疑問に思った。
殺人に対して全くの躊躇いを見せず、挙句の果てには大観衆の前で見せしめと言わんばかりの虐殺を行うプレイヤーが登場することが彼には想像できたのか。
そんなことを考えさせてしまう程にジャック=ガンドーラというプレイヤーの存在はアインクラッドで大きいモノとなって行った。
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第三十層主街区《ゴールド》。
その名の通り街の建物は黄金の装飾が施されており、街全体が宝箱の中身のように光っていた。
「ま、十層も二十層も似たような装飾はされてたからな。あのクエストをより意識してのことだろ」
ポケットに手を突っ込みながらジャックが溜息交じりに言う。
「確かに綺麗だけど、ちょっと欲望が出てるよなこの町……」
俺も口を引き攣らせながら言うが、ここにたどり着いたほとんどの人間が街のあちこちを走り回っている。
攻略組に居るということは現実世界でも相当のゲーマーだったはずだ。
ナーヴギアによって再現された夢のような街に幼き頃の夢を加速させているのだろう。
「やっと着いたわね、第三十層」
後ろからした声に振り替えると、そのセミロングの髪の毛が風に揺れていた。
隣でジャックがまた一つ大きな溜息を吐く。
「それにしてもこんなに輝いているのね……私の《LGL》よりも輝いてるわね」
それにいちいち目くじらを立てることもなく目の前に広がる光景に言葉を漏らす。
振り返った俺に気付いたのか、少しにこりとして俺達の前に出る。
「それじゃあ、私は先を急ぐから。またね、《黒ずくめ》さんとガンドーラ」
最後にジャックに指を差すとそのまま街に向かって走り出した。
きっと今回の階層に出現した《LGL》装備獲得クエストを受けに行くのだろう。
「随分の気に入られたな、ジャック」
少し冗談交じりに言ってやると、ジャックは少し舌打ちを打つ。
「んじゃ、オレはまだ明るいからここの迷宮区に潜りに行くが。お前はどうする?」
「俺はいいよ、少し下層の方に行ってみようと思う」
そうか、と小さく返すとジャックは迷宮区の方に迷わず走り出して言った。
本当に、ジャックは誰よりも攻略意識の強いヤツだと思う。
《殺人鬼》でなければ、彼が攻略組、ひいては全てのプレイヤーを引っ張る光となっていたはずだ。
それが、今では恐怖の対象となっている。
その思考を断ち切って俺は転移結晶で下層へと降りる準備をする。
そんなこと、今更考えることもないだろう。
――過去に起こったことは絶対になかったことには出来ない。
俺は、未だにクラインのことに関して負い目を感じていた。
それは時が経つほど大きくなっていく。
忘れることが二度とないように自分に戒めをかけて、その結果ここまで肥大してしまった訳だが。
クラインも気にするなと何度も言ってくれている。
それでも、俺は人として最低のことをした一人だ。
――だからこそ、こんな出来事が起こってしまったのだろうか。
俺に対する断罪。
もしくは俺がまだこの世界に対して甘い考えを持っていたからか。
しかも、俺はそんなことが起きたのにもかかわらず、また目を背けたのだ。
本当にどうしようもないヤツだと思う。
だから、ジャックは俺に対して『死』が何なのか、《殺人鬼》というものを教えたんだ。
――この世界に降り立ったその時からこの運命は避けられるものではなかった。
それでも、俺は――。
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そろそろ原作で言うところの第二巻『赤鼻のトナカイ』ですね。
こう、シンディアも出てきてキャラの動かし方に困っております。
プロットはできているのですが、何せ戦闘描写とか心理描写とか全く考えてないもんで…。
それでも後付け設定はしないように何とかやってみます。
それでは。