一話で終わらせたいがために、今回はいつもよりも文字数が多いです。
それにしてもキリトとジャック以外動かしにくいな…。
やっぱキリト視点だけだと無理があるんですかね?
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化け物の四つの腕が同時に赤く光った。
《タナトス》との二回戦目。
先制打を打ったのは後ろの眼を開眼した双頭の巨人。
最初と同じようにスコータムが前に出て攻撃を受けようとする。
そこへ自分から勝負を仕掛けるように《無刀》スキル《砕》が放たれる。
足を前に大きく踏み出すと、四本の腕が赤い残像を残して突き出される。
それを自分の体が覆いきれるほどの盾でスコータムは防ぐ。
鈍い金属音が鳴り、スコータムの巨体が吹き飛ばされる。
しかし、直撃を受けたのにも関わらず、そのHPゲージは四分の一削れている。
ここまで削った《タナトス》の破壊力に驚嘆すればいいのか、防御力の高いスコータムを褒めればいいのか。
兎に角、今は攻撃に集中だ。
「壁役は四本の腕全部に気をつけるんや!」
キバオウの声で《軍》の壁役隊は気を引き締めるように腰を落とす。
スコータムの穴を埋めるように三人の壁役が《タナトス》の前に立つ。
陣形を崩そうと化け物は四本の腕で攻撃を加えていく。
それを好機と見たのか、左右に散った壁役たちは後ろにある眼を見ながらどちらが攻撃をするかタイミングを窺っている。
そして、その眼は左に居るプレイヤーを見た。
その隙を逃さずと右に居る壁役のプレイヤーが走り出す。
手に握られた斧から光が奔る。
「待て、キバオウ!アイツを戻させろ!!」
しかし、ジャックがそう叫ぶ。
よく見ると、真正面を四本の腕で攻撃しているだけだと思っていたが、眼を左に居るプレイヤーに向け、右に居るプレイヤーが走り出したとき。
――連撃をしていたはずの手は、左後ろから走ってくるプレイヤーを迎え打つように一本だけ止められていた。
「なっ!?ぐあぁっ!!」
スキルモーションを強制終了させられ、肩甲骨辺りから生えた左腕に体ごと掴まれる。
「ま、まずいぞ!!」
回復したばかりのスコータムが声を上げる。
しかし、動くことは出来ない。
感情に任せて動くことは禁物なんだ。
そう言い聞かせて立ち止まる。
《軍》のメンバーの何人かは突撃しようとしているが、キバオウや幹部閣のプレイヤーが必死に止めている。
「フェイントだった、ってことは後ろの顔が目覚めて知性が芽生えたのか……」
ジャックが舌打ちをするが、誰も眼を向けることはない。
左腕から重装備のプレイヤーが軽々と《タナトス》の真上に投げられる。
同時に両肩から赤いライトエフェクト。
《タナトス》の近くに居た壁役の四人は猛りながらスキルキャンセルを試みるが、連携の取れてない動きでは、ボスの下へと辿り着くことすらできなかった。
光っていない残り二本の腕に四人は簡単にあしらわれる。
そして、空中で何も出来ない男に無情にも《無刀》スキル《槌》が放たれる。
両の腕を組んで振り被ってからの一撃。
圧倒的な破壊力の前に、悲鳴を上げることもなく、男は空中で硝子片となって爆散した。
上から天井の光を反射して振って来る様は、人の命の表しているのか――。
「何ぼおっとしてんだ。さっさと現実を受け入れろよ」
それを、ジャックは事も有ろうに一蹴した。
「お前えええええぇぇぇぇぇええぇええええええ!!!」
《軍》のプレイヤーの一人がジャックの胸倉を掴む。
その様子から、彼はあのプレイヤーの友人だったのだろう。
「お前みたいな殺人鬼には人の命なんてさぞかし軽いものだろうな!!」
彼の怒りが、憎しみが声に表れている。
「こんなことしてていいのかよ、ほら、ヤツが来るぜ?」
口元を吊り上げた表情を崩さないジャックが顔をクイッと《タナトス》の方に向けると、ジャックたちの方を向いて歩いているヤツの姿があった。
その間に入る影。
「おおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおお!!!!!!」
《タナトス》の左の拳を弾き、叫び声を上げたのはスコータムだった。
彼の勇士に、全員の意識が戦場へと戻る。
「悔しいが、ジャックの言っていることは正しい!全員、気を引き締めろ!!」
「そう言うことだ、な!」
胸倉を掴んでいる手を外し、短剣を回転させる。
《軍》の壁役も全員戻って来る。
その各々が先程のスコータムの一喝で解ったのか、誰一人として暗い顔をしていなかった。
《ドラゴンナイツ》の壁役と合わせて十一人の部隊が《タナトス》に向かう。
それを率いる大盾を持った彼に俺達は大きな声援を上げた。
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「焦るな!壁役の間から落ち着いて攻撃を加えるんだ!」
リンドの声と共に《ドラゴンナイツ》のアタッカー達が一斉に動き出す。
迫りくる腕はきっちりと壁役たちが防いでいる。
あれから、スコータム率いる壁役部隊は凄まじい勢いで動いていた。
まるで腕がどう動くか解っているようだった。
おかげで、俺達もかなり自由に動けている。
そして、戦闘開始から一時間半弱で二本目のHPバーが消滅した。
「全員撤退や!なんか来るで!!」
HPが半分削れたと同時に《タナトス》が四本の腕を高々と上げ、それを見たキバオウが大声を上げた。
その拳に赤い光が奔るのを見て全員が急いで後退する。
《無刀》スキル《破》。
赤く光る四本の腕を四方向に叩きつける。
その衝撃で、ボス部屋が揺れた。
まだ暴れ足りないのか《タナトス》は叫びながら地面を叩き続けているが、やがて鎖によって止められると、俺達の方を向く。
だが、化け物は腰を落とし、鎖が繋がっている六つの金具の内四つを掴んだ。
(一体……何をする気だ?)
誰もが《タナトス》の動向を窺った。
腰を上げると《タナトス》は同時に腕に力を込める。
すると、金具がついていたドーナツ状の床が十数センチ程浮いた。
それを身体と共にちょうど半回転させる。
つまり、今俺達の方を向いているのは首の後ろから生えている顔だ。
「ロオオオオオォォォオオオオオオオオオオオォォォォ……」
赤い煙を吐いて、高い位置にある顔は俺達を見下すように眼を向ける。
ガシャンと音を立てて床は元の位置へと戻った。
「なるほどな、通りで肩甲骨から生える腕の手のひらが内側を向いているわけだ」
そう、ジャックの言葉通り《タナトス》の腕は三百六十度どの角度にも手は届く。
それは後ろを向いて戦うときも同じ。
「とにかくまた私たちが先に出よう、後ろを向いただけでは変化に気付けないのでな」
再びスコータムが前に出る。
全く恐ろしい者だ。
誰よりもボスと戦っているというのにその疲労の色は未だに見えていない。
「頼んだで、スコータム!」
キバオウの激励に背中を向けたまま盾を一度地面に打つ。
そのまま、十一人の戦士たちは化け物に向かって行った。
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「このままじゃ埒が明かなねぇな……」
そう零したのはジャックだった。
あれから四十五分、《タナトス》の三本目のHPゲージは三分の一残っている。
しかし、俺達は心身ともにかなり疲弊していた。
一撃でも直撃を食らえばHPを全損させられるという緊張感。
特に攻撃を受け続けている壁役たちの疲労が一番大きかった。
それに後ろの顔が主体となったことにより、知性が前面に出ているのか攻撃を只管打つようなことはしない。
非常に厄介だ。
あのパワーに知性まで加わるとそう簡単には攻撃させてくれない。
辛うじて数発加えたりすることでHPを削って行ったがこのままではジリ貧だ。
ジャックですらまだ大きな動きを見せていない。
何か策があるのかと思えばそれっぽい動きを見せているだけ。
「ロオオオオオォォォオオオオオォォォォ……」
「B隊は下がるで!《砲》が来る!」
腕の一本だけが上がったことによりキバオウが指示を出す。
腕を一直線に素早く突き出す《砲》は、早急に対応しなければ避けられないと解ってのことだった。
しかし、その指示は余りにも早過ぎた。
まだ初期動作だけであって《剣技》が発動した訳ではない。
この進みもしない戦闘に焦ってしまったのだ。
B隊が後退したことにより、《タナトス》の左側が手薄になる。
その隙で左の方についている腕が二本構えられる。
その先に居るのは《軍》のC隊だった。
「あかん!B隊急いで戻――」
顔色を青くしたキバオウ達が急いで戻ろうとする。
もちろんC隊以外の隊も攻撃をしていた。
しかし、《タナトス》が《剣技》を放つまで、先程の一瞬の隙だけで十分だった。
《無刀》スキル《礫》は二本の腕を《砲》のように一気に放つ技だ。
恐るべきはその威力。
《砕》の破壊力程ではないが、タメが短いこの技は十分に気をつけなければならない技だった。
――一瞬の判断ミスが死を招く。
赤黒い腕が重なって一つの武器となって襲いかかる。
C隊は他の腕を攻撃していたので完全に対応に遅れていた。
「させるかあああああああ!!!」
が、彼らを守ろうとしたのはスコータム。
その攻撃線上に大きな盾と自分の体を入れる。
だが、《タナトス》の拳の一つが盾を弾き残ったもう一本の腕がC隊の中心に突き刺さった。
「なっ……」
絶句して後ろを振り向くスコータム。
C隊の内二人は直撃を受けHPを全損させた後、無数の硝子片となって爆散した。
残りの四人はいずれも重傷、全員のHPが危険域に入っていた。
「クソッ、わいのせいで……」
自分に対してキバオウは悪態をつくが、誰も「無理もない」という顔をしていた。
それでも、まだ諦めない者も当然いる。
「キリト、オレが隙を作るから突っ込め」
俺の肩に手を置いて姿勢を低くしたジャックの言葉に返事を返すことは出来なかった。
ジャックが俺に告げると同時に走り出したからだ。
急いでその後を追う。
ジャックが一直線に向かうその先にはC隊を追撃する《タナトス》とそれに対峙するスコータム。
今度こそ、と言わんばかりに気合を入れたスコータムは化け物の拳を弾く。
「そのまま盾上げとけぇぇぇぇええええええ!!!」
ジャックがスコータムに向かって叫び、その場から跳ぶ。
そのまま攻撃を弾いて上を向いている盾に両足をつけて更に高く跳んだ。
「よぉ、随分と見下ろしてくれたじゃねぇかぁ!!」
《タナトス》より高く跳んだジャックはもう《剣技》の発動態勢に入っている。
化け物は危機を悟り、急いでジャックを打ち落そうとするが――。
――ジャックの放つ五連撃《クイン・トリプカタム》の初撃が化け物のもう一つの顔を切り裂いた。
落下しながら残りの四発も全てその顔に叩き込む。
弱点部位だったのか、大きくHPゲージが削れる。
そして、今のヤツは弱点を攻撃されて確実に隙が出来ていた。
その事に気付いてキバオウ達が声を上げる。
俺はその先陣を切り、《ホリゾンタル・スクエア》をその腹部に叩き込んだ。
続いて総攻撃が始まる。
しかし、それも長くは続かなかった。
「オオオオオオオォォォォォォオオオオォォォォ!!!!!!!!」
《タナトス》は俺達に攻撃されていたのにも拘わらず、四本の腕を高く上げる。
その全てに光が奔る。
「まずい!《破》が来るで!!」
先のことで少し指示が遅れてしまったキバオウだが、スキル発動までに何とか全員が十分に後退することが出来た。
そして《破》による衝撃波と風圧が俺達を襲う。
《タナトス》のHPは既に最後の一本になり、それも四分の三まで削れていた。
が、化け物がその場でまた暴れ始めた。
鎖に阻まれているというのに、動き続けることを止めない。
ついに、《砕》を打つ体勢にまで入った。
周りには誰もいないというのに、どこに打つというのか。
その答えは、すぐに分かった。
轟音と共に、破壊されたのは両足についていた鎖。
金具と完全に分断された鎖は、まだ足首に残る枷と、金具と共に爆散した。
そして腰を落とすと鎖が短くなり地面から四つの腕に繋がる鎖が一直線になる。
そのまま体を回転させると、当然のように金具に止められた鎖によって動きが止まる。
しかし、俺に感じていた違和感が蘇る。
(あの金具の音が変わっている!?)
――それは、確信へと変わる。
ズッと引き摺る音がした瞬間、《タナトス》の巨体が一回転する。
何度も金具を引っ張ったことにより、地面への打ちつけが弱まったってことなのだろう。
驚くべきはその金具の裏だ。
「あれは……短剣のようだが……」
「なんであんなところに」
小さく声が上がるが、みんなも気付き初めている。
――確かに鎖は歩行の妨害こそあったが、防具の手薄な俺が当たっても大した威力は無かった。
――なら何故そんなものが最初からボスについているのか。
――そして俺達はその伸縮性を十分に知っている。
――つまり、ヤツが持っているのは間違いなく遠距離攻撃を可能にする武器だということだ。
俺達の視線の先で、《タナトス》は不敵に笑っているようだった。
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「兎に角今は耐えるんや!壁役隊がどっかで道を切り開くのを待つんや!」
キバオウが叫ぶが、正直言ってこれは辛い。
拳の後に遅れて鎖が短剣つきで飛んでくるのだ。
こんな二重攻撃を、簡単に攻略出来るはずはなく、結局またジリ貧な戦いを強いられた。
なんとか壁役たちが攻撃を当ててHPは残り半分だ。
しかし、このままではまたいつ犠牲者が出るとも限らない。
そんな焦りが、攻略組全体に広がっていた。
が、いよいよ戦局が動いた。
疲労に押しつぶされた壁役のプレイヤーが短剣の攻撃を受け切れずに吹き飛ばされる。
化け物はスコータムと再び対峙する。
しかし、盾を持った彼にも焦りが浮かんでいた。
鎖の外れた《タナトス》と一対一になるのはこれが初めてだ。
それを解っていたからこそ、スコータムは両手で盾を《タナトス》に向ける。
容赦なく放たれたのは彼を吹き飛ばした《無刀》スキル《砕》。
再びあの時の光景が映るのかと思えば、スコータムはそれに何とか耐えていた。
その姿に「おお」と声が上がるが、まだ攻撃は終わっていない。
突き出された四本の腕の後ろから四本の鎖が襲いかかる。
スコータムは四本同時に受け切るようにと少し後ろに下がった。
だが、盾に当たる直前で、《タナトス》はその腕を動かした。
それに作用して鎖が波打つ。
取り付けられた短剣は盾を回り込み、スコータムの体に深々と突き刺さった。
「ぐ……ああっ……」
「「「スコータムさん!!」」」
呻き声を上げるスコータムに《軍》のメンバーは驚愕の声を上げる。
その姿見た化け物は、右側の腕を二本とも素早く戻すともう一度踏み込んだ。
「スコータム!!!!!」
叫ぶ声を無視して《礫》が弱ったスコータムの盾を弾く。
そして無防備になったその体に《砲》が突き刺さった。
いくら防御力の高いスコータムといっても、とても耐えきれるものではなかった。
HPゲージがゼロになる。
巨体が青い光に包まれて消える直前、彼は最後に口を開いた。
「頼んだぞ、ジャック=ガンドーラ」
スコータムは、ジャックの実力を認めた上での遺言だった。
彼が消えるのと、新しい悲鳴が上がるのはほぼ同時だった。
あれだけの防御力を誇り俺達を支えてきたスコータムが死んだのだ。
同じ《軍》の物や壁役たちがパニックになるのは当然のことだった。
ただでさえこの緊張感でここまで戦ってきたんだ。
それでも、《タナトス》が悠長に待つはずなど無い。
先制攻撃に鎖だけを集団に打ち込む。
慌てふためいた者はそれに躓き、目の前から迫りくる大きな壁に恐れ、逃げようと背を向けたところを《槌》で捩じ伏せられる。
キバオウやリンドも必死に体勢を立て直そうとするが、彼らも動揺の色が隠せていない。
気がつけばあっという間に地獄絵図に――。
「キリト君」
立ち尽くす俺に声をかけたのはアスナだった。
「ジャック君も来て」
その声は震えていた。
アスナは、ジャックが《殺人鬼》と呼ばれるようになってから彼に対して苦手意識を持っていた。
『死』を招くことが、彼女には恐怖の象徴でしかなかったのだろう。
ジャックは戦況を見ながら俺達の方に寄ってきた。
「それで、どうした?アスナ」
「あいつを、私たちで倒そう」
あいつとはやはり《タナトス》のことだろう。
だが、そんなことが俺達だけで出来るのか?
「これ以上目の前で人が死ぬのは……見てられないの。お願い、力を貸して」
顔を真っすぐこちらに向けてくるその眼には、守りたいという気持ちが込められていた。
「OKだ、オレもちょうどいい方法を思い付いたところだ」
「本当なのジャック君!?」
「お前無策に突っ込むつもりだったのか」
ジャックが溜息をつくが、これで俺も腹を括れた。
「よし、俺も行くよ」
その声を聴いたジャックは楽しそうに口元を釣り上げた。
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「全員防御に徹してくれ!!」
俺が叫び、まずジャックが前に出る。
俺とアスナは左右に展開してジャックに襲いかかる拳についている鎖を剣で弾く。
ジャックは《タナトス》の真横から接近する。
それを打ち抜かんと《砲》が打たれるが、そこは流石といったところだ。
攻撃を確実によけ、鎖も躱して少しだけ短剣で腕を切る。
そのまま足を止めずに《タナトス》の下を潜り抜けた。
「お次はこっちよ!」
ジャックの反対側からアスナが走り出す。
化け物は迎撃を試みるが、ジャックよりも敏捷値の早いアスナを捉えきることは出来ず、拳は空を切った。
僅かに隙が生まれるが《剣技》は出さずに《タナトス》の横を通り過ぎる。
次は俺だ。
二人程の速さないが、化け物の放った拳はしっかりと目で捉えて回避する。
そしてすれ違いざまに攻撃を加える。
俺たち以外のプレイヤーたちは何をしているかまだわかっていない。
「まだへばんじゃねぇぞ!!」
ジャックの声を合図に俺達は同時に走り出す。
《タナトス》はそれぞれの相手に腕を伸ばすが、それらの全てを回避する。
もちろん攻撃をすることも忘れない。
それを俺達はもう一度繰り返した。
――そして、その時は来る。
《タナトス》の動きが止まった。
腕の一本も動かせていない。
その光景を見ていた全員が、驚愕に顔を染めていることだろう。
『あいつの腕はそれぞれの攻撃範囲をもってやがる。俺達がそこに近づくと必然的に腕は飛んでくる。つまり、うまく誘導してやれば鎖を絡ませられるってわけだ』
ジャックの言う通り俺達は突撃する位置を変えながら鎖を足元を通らせたりして確実に狙えるこの時を待っていた。
腕が動いたことにより鎖が体に絡まり、足を掬う。
「突撃しやがれぇ!!」
ジャックの声に攻略組の面々が動き出す。
残りHPは三分の一。
(削りきれるか……)
その不安は辛くも的中する。
あとHPがほんの数ドットの時、《タナトス》は最後の力を振り絞って《砲》を地面に向けて撃った。
大きな黒い塊が反動で数メートル浮いた。
そこに待ち受けていたのは――。
「よぉ、Thanatos」
壁役のプレイヤーを踏み台にして《タナトス》より跳んだジャックだった。
《クイン・トリプカタム》は空中で身動きの取れない化け物にすべて命中した。
そして、その四本のHPはついにゼロになった。
空中で《タナトス》の巨体が大きなサウンドエフェクトと共に爆散する。
硝子片が降り注ぐ中、ジャックはそれらを纏う様に着地をする。
その顔には確かな笑みが浮かんでいた。
――大損害を出し、死闘となった第二十五層ボス攻略は幕を閉じた。
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いやー長かった!
表現は大丈夫かな…。
《無刀》スキルなんてトンデモスキルを出してしまいました。
バンバンいろんな技も出したので追いつけない人もいるかもと思うと内心ガクブルですね。
一応SAO編終了時に設定の殆どを一気にまとめようと思ってます。
それでは。