絶賛狂喜乱舞。竜尾です。
ついにこの話も第十話ですね。
段々と僕の趣味が全開になって来たのを感じてます。
それにつれて誤字が増えてないかが懸念されます。
あと意味を間違って使ってるとか。
また気合入れて頑張ります。
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今まで何回も聞いてきた音が、広場全体に響いた。
人が、斬ってきたモンスターと同じように消えていったのだ。
『WINNER/Jack=Gundora 試合時間/10分2秒』
巨大なシステムウィンドウが出現する。
「あー、終わった終わった」
沈黙を破り声を出しだジャックに、広場に居るほぼ全員の視線が集まる。
信じられないといった者。
目を背けて必死に下を向く者。
怒りの眼差しを向ける者。
さまざまな感情が入り乱れる。
「そうだ、テメェらにはちゃんと言っとくか。下層のプレイヤーも大分ここにいるようだしなぁ」
ジャックは一通り周りを見渡し、短剣をしまうと両手を広げた。
「オレが殺すのはあくまでもオレの邪魔をする奴だ。ただ攻略に精を向けるヤツは狙いもしねぇ」
呆然とするプレイヤーたちに、尚もジャックは続ける。
「攻略だけをやれと強制してる訳でもねぇ。余計な事をしなきゃいいだけだ。ただ……」
右手を首の位置まで持ってくる。
「オレの邪魔をするなら、いくら攻略組でも殺す」
親指を立てて首を切るように手を横へ動かす。
瞬間。
脳裏に浮かぶのは先ほどのユースティティアの姿。
この場に居る誰もがそれを思い出し、ジャックの言葉が嘘ではないと自覚する。
「それに、もう一つ、ここに居る奴らには教えてやるよ」
その言葉に、まだジャックには何かあるのかとプレイヤーたちは少しざわめいた。
しかし、次に放たれた一言は、彼がなぜこれほどまで簡単に殺人が出来るのかを裏付ける一言だった。
「オレのこの姿は現実とは別の物だ。つまり、現実世界に戻ってからオレに復讐するのは無駄ってことだ」
「そ、そんなことがありえるわけないだろ」「俺達を動揺させるためだって」
ジャックの放った一言は、広場に衝撃を与えた。
「ジャックの言うことはありえるのか?キリトよお」
クラインの問いかけに、小さく頷いた。
信じられないというようにクラインの息が詰まるのが判る。
正直、俺はジャックの言っていることが嘘じゃないと思っていた。
でなければ、この世界でPKなんて行為が出来るとは思えない。
現実世界に戻った時に、SAO内では殺人を犯したなんてことが知れれば、周りの人間がどう思うのか。
想像しただけで嫌になった。
「チュートリアルの際に茅場からのプレゼントを速攻で破壊した時に起こったバグかなんかで、オレの姿は最初に設定したままって訳だ」
だんだんと、疑いの声が無くなって行く。
だが、ジャックから放たれる言葉に、まだまだ俺達は驚愕することになる。
「それに、テメェらは絶対にオレを見つけることは出来ない」
首に手を当てると不敵に笑った。
『オレ、いやワタシの性別すら、あなたたちが判る筈はないのにね』
「う……嘘だろ?」
その言葉の通りだ、広場は時が止まったように誰も目の前で起きていることに思考が追い付いていなかった。
『やっぱり、こんなことを目の当たりにすればこうなるか』
ジャックが出しているのは、紛れもない『女性』の声だった。
「オレは声帯模写がちょっと出来るんでなぁ。今の姿の雰囲気に合わせて声を作ってたんだよ」
呆然とする俺達を見て含み笑いをする。
『ざーんねーん。お前たちが『ジャック』を捕まえる事なんて出来ないんだよ』
その笑った姿には似合わない渋い声。
俺達は、正体も判らないこの者に命を習われると思うと、気が気でなかった。
崩れ落ちて泣いている者も視界に映った。
「けど、流石にそれじゃあテメェらがオレを恐れるだけだと思ってオレなりに一つだけルールを作った」
「オレがこの姿でいる限り、オレが『嘘』をつくことは絶対にない」
そう言うとジャックは身を翻すと歩き出した。
進行方向に居るプレイヤーたちは急いで道を開ける。
『邪魔をすれば殺す』という言葉を意識したのか、人一人が通るには十分な広さがあった。
「それじゃあ、明後日のボス攻略で」
後ろを向きながら左手をひらひらと振ってジャックは去って行く。
その姿が見えなくなると、ぽつぽつと帰る者が出始めた。
誰も彼もが浮かばれない顔をしている。
(それも……そうだろうな)
数分すれば、広場に残るプレイヤーはほとんどいなくなっていた。
「キリト……」
立ち尽くしたままの俺にクラインが心配そうに声をかける。
「止めることが……出来なかったんだ」
クラインも見ていたはずだ、ジャックを止めようと大声を上げる俺の姿を。
(悔しい……)
この世界に来て、初めての感覚だった。
アスナやジャックの才能を知った時には何も感じなかったのに。
寧ろ希望を感じていたというのに、今はそれを超えたいと思っている。
「強く、ならなきゃな」
「お、おう……そうだな」
少し戸惑いながらも、クラインは俺の背中を押してくれた。
「リーダー!!行きますよ!」
「あ、ああ!じゃあ、また会おうぜ、キリト」
仲間に呼ばれ、クラインが去って行く。
俺はその背中を見ていた。
(ギルド……か……)
《ビーター》が故の孤独が、今日ばかりは俺を強く苦しめた。
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次の日には、新聞で今日のことが一面に報道されていた。
『SAOの《殺人鬼》ジャック=ガンドーラ』
――《殺人鬼》。
誰からも疎まれる烙印が、ジャックには押されたのだ。
他にはその名前を捩った《ジャック・ザ・リッパー》や《シリアルキラー》などと呼ばれるようになった。
その本人はそれにも気にせず挑発的な笑みだけを浮かべている。
見えている姿も聞こえている声も偽りなのに、実力は本物だ。
結局第十九層でもジャックは十分に活躍した。
誰も口を出す者はいない。
作戦を立てるときだってジャックは黙って聞いているだけなのに他の連中はやけにジャックの動向を窺っていた。
そうはいってもやはりジャックは恐るべき対象なのだろう。
そして、自分がいつその逆鱗に触れ、狙われるか。
しかし、それも徐々に薄れてきていた。
それに違和感を覚えたプレイヤーが何人いたのだろうか。
ジャックが皆に溶け込んだのか、皆が受け入れたのかは分からない。
第二十四層のボス攻略時には、攻略組は第九層のような雰囲気になっていた。
――いや、それは良い事なんだ。
全員がボス攻略に集中している。
危険な攻撃はちゃんとかわしているし、連携だってきちんと取れている。
でも、誰もジャックに何も思っていないのか?
もしかすると、みんなは恐怖に耐えかねて目を逸らしているだけなのか?
アルゴでさえも、ジャックのことが判らないと真情を吐露していた。
ユースティティアを追いつめたときのジャックの言葉がよみがえる。
『人間相手に、負ける気はしねぇな』
彼は解っていたのだ。
俺達に心の底からジャックを理解するなんてことは出来ないということを。
だがら、俺達は弱いままだ。
ジャックに勝つことなんて出来る訳がない。
「―――。キリト」
突然の声と共に意識が戻される。
そうだ、俺は今第二十四層のボス攻略をしているんだ。
視線を横に向けるとボスの武器が身体の数センチ横を通り過ぎていた。
目の前には尖った金色の短髪。
全くボスに集中できていなかった。
ジャックが攻撃を逸らしてくれなければ危なかったかもしてない。
「わ、悪い」
「ったく……テメェが死んでどうする」
一度ボスの間合いから距離を取る。
考え事をしている場合ではない。
とにかく今は前だけを見るんだ。
――それにしても、あの時ジャックは何と言ったのだろう。
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「それで、偵察を送ったのだが犠牲者が四人でた」
「な、なんだと!?」
現在俺達がいるのは第二十五層。
ボス攻略会議が行われているのだが、リンドが発した言葉はその場に居るプレイヤーのほとんどを黙らせた。
「それ程強い相手だったってのか?」
「そうだ、軽装備の物は通常攻撃一発でHPをすべて持って行かれたらしい」
(つまり、俺たちにとって直撃はそのまま死を意味するのか)
ちらりとジャックの方を見ると、顎に手を当てて何かを考えていた。
「今回はわいら《アインクラッド開放軍》が総力を上げて参加するんや!」
そう言うキバオウの後ろには十七人の《軍》のプレイヤーがいた。
その誰もが装備を固めて、真剣な顔をしている。
「《軍》はこの戦いのために今まで貯め込んできたレアアイテムを前面に出して来るらしいぜ」
クラインが俺に耳打ちする。
確かにアインクラッドの四分の一の地点であるこの階層の突破を《軍》の手柄に出来れば発言力も十分に上がるだろう。
それ故に、今回のボス攻略のリーダーを務めるのもキバオウだ。
第二十五層ボス《ザ・タナトス》
死を表す神の名を持つその姿は五メートルの双頭の巨人。
顔が前後に付いており、手の数は四本。
両足首と全ての手首に鎖が取り付けられており、大きな金具で地面に固定されているが、鎖が状況に合わせて伸び、部屋の奥まで移動は可能。
動きは早いとは言えないが、四本の腕からの波状攻撃を受けると壁役でもHPを全損させられる危険性がある。
鎖には腕程ではないがしっかりと当たり判定があり、それらにも気を配らなければならない。
故に、俺達に被弾することは許されない。
この攻略組の中でも群を抜いてレベルの高い俺やジャックでも直撃を食らえば生還は絶望的だ。
そんな彼は片手で短剣をジャグリングしているが、その眼は真剣そのものだった。
今までもジャックはボスの攻撃はほぼ全てを回避していた。
その柔軟な腕と短剣を使いHPの減少を最小限に抑え且つ攻撃の軌道を逸らし、俺もそれに救われたこともある。
ジャックは、いったいどれほどまで強くなるのだろうか。
今や彼はアインクラッドで《殺人鬼》として恐れられているが、同時に《英雄》でもあることを誰も否定することは出来ない。
ジャックなら殺すことが出来るはずだ。
アインクラッドの最上階で俺達を待ち続ける最終ボスを……。
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《The Thanatos》
ちょうど第二十五層の中心にあるボス部屋のさらに中心に立ち尽くしているその姿は真っ黒で巨大な置物を置いた様。
辛うじて銀色の鎖が六つ、暗闇の中から生えているようだった。
それらは正六角形状に設置された大きな金具に固定されている。
今まで戦ってきたボスとは違い、今度のボスが使ってくるのは腕と鎖だ。
目の前に居る真っ黒な塊は依然として動かない。
徐々に近づくと、その全貌が明らかになってゆく。
筋肉があるとは言えない体つきは、人間的なものでも動物的なものでもなく、寧ろ化け物というものだった。
その四本の腕は体を守る繭のように曲線を描いてぶら下げられている。
そして、その灼眼が開く。
同時に、真っ黒な体に血が通って行くように体が赤みを帯びていく。
四本の腕が掲げられ、鎖が地面を引きずる音が鳴る。
「ウオォオオオォォォォオオオオオオオ!!!」
「ほな、行くで!生き残ってこの階層を突破するんや!!」
赤と黒の化け物と、四十余りの俺達が叫ぶのは、全く同じタイミングだった。
まず先陣を切ったのはキバオウ達《軍》の壁役隊だった。
どこから攻撃が来てもいいように陣形を組み、《タナトス》の一挙一動に目を配りながらじりじりと近づいていく。
対して、赤黒の化け物は霧のような赤い煙を吐いて接近する。
そして、前についている顔の両眼が、目の前の敵だけを見た。
右手の一本に赤いライトエフェクト。
《剣技》いや、武器を使わないボスのみが使うスキル《無刀》だ。
「全員散開だ、私が受け切る」
隊の先頭に立つ一際大きな盾を持ったプレイヤーが支持をすると、他のプレイヤーはその男一人を残して指示通りに散らばる。
そこに振り下ろされるのは《無刀》スキル《隕》が放たれる。
右に散った者に鎖が襲いかかるが、壁役とは思えないほどの跳躍を見せて躱す。
そして、言葉通り真正面から攻撃を盾で受け切ると、腕を弾き返して隙を作る。
背中に回り込んだ壁役の重い一撃が突き刺さる。
「やはり、まだ『後ろの眼』は開いていません!!」
化け物の呻き声の中から声が聞こえる。
情報通りだ。
首の付け根から、さらに首が生えている後ろの顔は、最初の内は開かないらしい。
それでも、HPが削れていけば目を覚ますだろう。
(それまでは、犠牲者は出さずに行きたい……)
「おっしゃ!取りあえずニ本目までは大丈夫や!全員攻撃態勢を取るんや、スイッチを繰り返してガンガン削って行くで!!」
キバオウの声に、俺達も動き出す。
《ドラゴンナイツ》の壁役隊も加わり、ヘイトをそっちに任せて、俺達はヘイトを取り過ぎないように攻撃していく。
次第に、《タナトス》はヘイトが目まぐるしく動いて翻弄される。
《軍》の壁役の頭を張っているプレイヤー《スコータム》が《タナトス》の攻撃を正面から受け切っているのが大きい。
大きくヘイトを取って、隙を作ってくれている。
「軍の奴らは完全にこの時に合わせてやがったな。こりゃオレの出番もないかもな」
攻撃の隙を窺っているとジャックが笑いながら話しかけてくる。
「ま、そんなことはねぇだろうがな。あの鎖、まだ何かあるな。外れるだけじゃ芸がねぇ」
期待しているのか、危惧しているのかジャックは敵よりも大きな金具を見ていた。
すると、スコータムがまた攻撃を弾き返したようだ。
俺達のパーティーのプレイヤーも何人か動き出している。
「ジャック、行くぞ」
背中を叩いてやるとボスに向かって一直線に走りだす。
その隣を俺よりも敏捷値の高いジャックが走り抜ける。
金色の線が《スティムルス》で《タナトス》の両足を切り裂いて抜けていく。
相変わらず早いな、と思いながら、俺も《剣技》を発動させる。
そして、化け物の一本目のHPゲージは消滅した。
再び、最初と同じ陣形になる。
「さて、どう化けるか見せてもやおうやないか」
キバオウが剣を《タナトス》に向ける。
「ウ、ウオォォ……オオオオオォォォオオオオオオオ!!!!!!!」
化け物は力を込めて咆哮する。
が、打ち込まれた金具が一度大きく引っ張られるが、地面から抜けることはない。
人を一人飲み込めるほど開かれた口からは恐竜のような鋭く長い歯が剥き出しになる。
力が抜けたように《タナトス》が前傾姿勢になる。
刹那。
「オオオオオオオオオ………」
それは、ボス部屋の奥の壁に反射して俺達の耳に届いた。
化け物の首の後ろから煙のような者が出ているのが見える。
「取りあえず、二本目で変わったのは後ろの眼が開いただけだな」
ジャックが言うとキバオウは再び口を開いた。
「今度は後ろから攻撃が効くとも敵わん、下手を打てば後ろを攻撃しても四本のどれかにやられるで!今は壁役に先行させてまた隙を窺うんや!!」
その声を聴いてスコータムたちが前に出る。
《ドラゴンナイツ》も、先程の防御力を見ているからか、自分たちの壁役は出さない。
「二回戦目、行くでええぇぇぇ!!!」
キバオウが吼え、《タナトス》がそれに答えるように四本の手を構えた。
そして鳴り響く鎖の音。
――心なしか、先ほどよりも音が違って聞こえたのは、俺だけだろうか。
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ジャック強すぎ感があるかもしれませんがここまでしないとダメなんじゃ…。
という感じで妥協しましたけど、どうっすかね?
でもオリ主最強タグつけてるし、ね。
今回登場したタナトスさんも名前こそ違いますがタート・テセラスと同じところからネタをとってきました。
それでは。