どーも竜尾です。
部活もあってわりかし大変ですが、今のところなんとかなっています。
やっぱりオリジナルは難しいですね。
特に戦闘描写とかもう書くこと自体が訓練になってます。
ただ、タイピングは早くなったような……。
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巨大な甲冑騎士は呆気なく消滅した。
俺達の視線はたった一人で立ち向かい、力の差を見せつけた彼の姿。
振り返る、その何も感じられない無表情にある種の恐れを感じていた。
隣で小さく悲鳴を出し、恐れ慄く者もいた。
無理もない、あれ程の強さを持ったプレイヤーが殺人行為まで行うのだ。
下手に干渉すれば殺される。
この中に居る数人はそれを想像しているのだろう。
やがて、彼は口を開いた。
「何化け物でも見た顔してんだ?昨日宣言した通り、俺は俺の実力を見せただけだ」
口の端が裂けそうなほどに広がっている。
「あ、あんなことが、普通のプレイヤーに出来る訳……ないだろ……」
あの時のプレイヤーだ、膝は震えているが覚束ない口取りでそう発した。
「オレがチーターとでも言いたいのか?」
「そ……そうだよ……」
ジャックはその返答を聴くとまた無表情に戻る。
腰に手を当てると大きなため息を一つ零した。
「そんなんだったらもうとっくにこのゲームはオレの手によってクリアされてるし、茅場がそんなゲームバランスを丸ごとひっくり返すような奴を見過ごす訳ねぇよ」
「だ、だだ黙れ!!お前みたいな凶悪なヤツをこれ以上攻略組に置いておく事なんて出来るか!!」
恐怖を無理やり振り払うように叫ぶ。
「そうだよ……」
「そんな奴……今ここで殺せばいいんだ」
人混みの中から聞こえるそんな声に、驚愕せざるを得なかった。
「自分の理解出来ない力を間の前にすると、寄って集って排除ってことか?」
「そうだ!!そもそもPKプレイヤーのお前が殺されたって何の問題はない!!!」
眼を見開いた男がのけ反りながら憎悪の対象である彼に向けて指をさす。
ジャックはポケットに手を突っ込むと男に向かって歩を進める。
彼をプレイヤーたちは恐怖の顔を浮かべながら避け、道が出来る。
「な、なんだよ……。俺が間違っているとでもいうのか?」
俯いているせいでジャックの顔を見ることは出来ない。
「答えてみろよ!この糞PK野ろ――」
「黙れ殺すぞ」
男の言葉を遮る様にして放たれた言葉。
背筋が凍りつくような感覚が襲った。
ジャックが見せた顔は、言わば真っ黒。
軽口で『殺す』なんて言葉は言わせないと、警告していた。
それを間近で見ている男の顔は真っ青。
しかし、ジャックの顔は、また口の端を吊り上げた笑った物に戻った
「まあ、テメェの言ったことは間違ってねぇな。確かにオレにいつ自分が襲われるか分からない恐怖はある」
「は……?はあ……」
ジャックの態度の変わりように、男の眼は点になっていた。
「だから言っただろ?オレの目的はこの世界をさっさと攻略するところだ。オレが攻略組を襲う理由なんてねぇよ」
「そんなこと、信じられるはずがない!」
「信じられねぇなら、それで問題ねぇ。ただ、そうやって意固地になってんなら。貴重な戦力を失うだけだぜ」
これには、この場に居る全員が息をのんだ。
先程、ジャックの実力は自分の眼で見たばかりだ。
一撃で葬られるという恐怖にも恐れない度胸。
剣の軌道を逸らしたり、予測して完全にかわしきる回避能力。
正確にピックを投げたり、必要以上の攻撃はしない戦闘センス。
PKプレイヤーでさえなければ、主戦力として重宝されていただろう。
「さぁて、そこいらで傍観してるテメェらにも聴く。オレが攻略組に残ることに反対のヤツはいるか?」
黙り込んだ俺達に、ジャックは両手を広げながら告げる。
「それとも、ここでオレを敵に回すかぁ?」
沈黙。
――ジャックへの信頼。
――PKプレイヤーに対する嫌悪感。
――攻略への渇望。
そんな中で選択を迫られて、即座に答えられる者など、誰もいなかった。
――『見せてやるよ、あいつらにも。オレの手のひらの上で転がされてただけということ。オレがお前らの甘さを全部利用してやるってことをよ』
脳裏に、ジャックのその言葉が浮かぶ。
今の状況は、全くもってその通りだった。
だが、俺に何が出来る。
ジャックの行った行為についてはなかったことにすることは出来ない。
攻略組は狙わないと言っても、それでは下層に居るプレイヤーを俺達が見捨てたと言うことになる。
でも、俺達は自分の保身を一に考えてきた奴らが多い。
死にたくないからパーティーを組んで。
死にたくないから不安要素を排除して。
死にたくないから友すらを見捨てて。
ここまでジャックの計算の内なのか。
「だんまり、か。沈黙は是也だ。第十一層のボス攻略会議でもオレは現れるからまたよろしくな」
静寂の部屋に戦っていた時とは違って、響く足音は一つ。
次の階層に続く扉を開けると、ジャックは俺達の方にもう一度振り返った。
「恐らく、上の階層にはオレの起点が効かない奴がいるはずだ。そんときは攻略組の数の力が必要になる。」
みんなの視線が地面からジャックに向けられる。
「つまり、オレ達は利害の一致ってことで戦ってんだ。安心しろ、オレだって死にたくねぇんだ。下手に殺人もしねぇよ」
その言葉と同時に、ジャックは第十一層へと消えていった。
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その後は数十秒の沈黙が続いた。
誰かが立ち上がり、第十層と戻り始めるとそれに続いて皆がどれに続いた。
彼らには心の休息が必要だ。
そう思い、俺も戻るかと決めると、ふとあの栗色の髪が目に付いた。
――アスナだ。
立ってはいるが、両手で腕を押さえて、わずかながら震えている。
「だ、大丈夫かアスナ」
「――キリト君」
弱々しい声だった。
彼女も、少なからずジャックと接していた。
きっと、今でも状況があまりつかめていないのかもしれない。
「キリト君は、このゲームが始まった時からジャック君と一緒に居たよね。そのときの彼はPKをするような人に思えた?」
「いや、いつか大きなギルドを作って、皆を引っ張って、このゲームを攻略していく奴だと思っていた」
紛れもない本音。
きっと彼女にとってこの世界においての『死』は完全に理解出来たものではないのだろう。
「どうして、ジャック君は……」
「わからない、とにかく戻ろう。ここにいつまでもいる訳にはいかない」
それに、こんな状態だ。
下手を打ってモンスターにやられる危険性もある。
小さく頷いた彼女の背中を押して未だに呆然とする者のいる部屋から、俺達は主街区を目指して歩いて行った。
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後日、ジャックという名は、このゲーム始まって初のPKプレイヤーとして駆け回った。
この新聞記事を見て、すぐにアルゴのもとに向かったが、彼女が俺に姿を見せたのはそれから二日後のことだった。
ただ一言「すまない」と言われて、すぐに去ってしまった。
攻略組にも、「なぜあのような危険なプレイヤーがいるのか」「今すぐ粛清すべきだ」と声が上がった。
その全てに対応したのはジャックだった。
「なら、テメェらがオレの代わりになれんのか?」
それからジャックには度々デュエルを申し込む者が現れたが、ジャックはその全てを蹴散らしていた。
――オレを引きずり下ろしたいなら自分の手でやれ。
ジャックの言動には、結果的に功を奏した。
彼に負けじと、多くのプレイヤーが攻略に積極的になった。
彼も人間の端くれだ。
同じ人間である自分たちに超えられないわけがない。
だが、同時にジャックに対する当たりも強くなった。
三人のプレイヤーが、ジャックによって殺されたという話を聞いた。
聞けば、「悪であるジャックは死ぬべきだ」と彼が迷宮区に入っている隙を窺って襲いかかり、返り討ちにあった挙句殺されたというのだ。
それでも、ジャックは最前線に立つ。
俺に会う度に、「悪いな」と言ってそのまま去ってしまう。
やがて、クラインがギルド『風林火山』のメンバー引き連れて、攻略組に加わった。
最初は、ジャックと衝突し、何度もジャックに立ち向かっては、はじき返されていた。
しかし、クラインがやがてジャックの動きに少しついてこられるようになると、攻略組で頭角を現すようになった。
そうして、攻略組でジャックと組み手として戦う者が増えた。
ジャックはそんなプレイヤーの全てと戦っている。
しだいに、攻略組の雰囲気は良くなってきていた。
会議の際に、他のプレイヤーとジャックが陽気に話しているのを見かける。
俺とも、何気ない会話をしてくれるようになった。
今、俺達が攻略しているのは第十九層。
――やはり、この世界は理不尽だ。
――組み上げられた物を次々と壊していく。
――ジャックにあんなに言われたのに、俺はまだ甘い考えを持っていたんだ。
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「えーと、みなさん始めまして!この階層から攻略組に参加させていただきます《ユースティティア》です。よろしくお願いします!!」
その元気な声が響いたのは第十九層でのボス攻略会議。
薄い茶髪に若くて爽やかな顔立ち。
その姿は、あの時俺達を引っ張り、散って行った騎士《ディアベル》の姿を彷彿とさせた。
「ユースティティアくんはソロ上がりだから、最初のうちはなれないかもしれないが、みんなも積極的にパーティーに誘ってやってくれ」
「はい!足手纏いにならないように頑張ります!!」
まだ緊張しているのか、彼は背筋を伸ばして敬礼のポーズをした。
同時に笑い声も上がる。
しかし、この時期になって単身で攻略組に上がってくるプレイヤーがいるのは珍しい事だった。
クラインたちは『風林火山』全員で攻略組に上がってきたし、最近力をつけているギルド《血盟騎士団》も複数のメンバーで攻略組に参加していた。
「なあ、あいつの肩の防具見たことあるか?」
ジャックが肩を叩いて小さな声で話す。
そういえばあまり目立っていないが周りの装備とは異彩を放つ銀色の防具がついていた。
そこで、俺は思考を巡らせた。
恐らく、どこかでアルゴに聞かされたはずだ。
「……あれは第十五層のクエストで手に入るレア武具だ」
「……なるほどな。ソロで上がってくるってことは、そこそこ強いんだろぉな」
それだけ言うと、ジャックは視線をユースティティアに移す。
すると、彼はそれに気付いたのか、小さく会釈をした。
そうして、ボス攻略会議は始まったのだが、事件が起こったのは会議が終わった時だった。
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「そんじゃ、各自装備を今日中にそろえときや!解散!!」
キバオウの声で会議は終わり、場を立ち去る者もぽつぽつと出てきた。
(俺も、今日は迷宮には行かずに寝ておくかな)
その時だった。
「あの、あなたがジャック=ガンドーラさん……ですよね?」
「あ?」
振り返るとユースティティアがジャックに話しかけているところだった。
普通、ジャックの起こしてきたことを知っている者なら、ジャックにかかわるものは珍しい者なのだが。
例としては喧嘩を売ったクラインや普通に話しかけた《血盟騎士団》の《ヒースクリフ》だ。
その光景に、何人かのプレイヤーは振り返り二人に耳を傾けていた。
「オレがそうだけど、何か用か?」
「ええ」
そう言ってユースティティアは自身の片手剣をジャックの眼前に突き出した。
全く動じなかったジャックの顔は無表情。
「僕はどうしてもあなたを認める訳にはいきません。誰もあなたに制裁を加えないと言うなら、僕が、あなたに今までの犠牲者の恨みを晴らさせてもらいます」
一瞬の静寂の後、会場はざわついた。
彼が取った選択は、俺達が自己保身のために認めなかったモノ。
それを、彼はジャックに突き付けたのだ。
その刀身は、片手剣にしては少し長い分類の物で、肩の装備と同じ銀色をしている。
恐らくどっちも相当のレアリティの物だ。
ジャックに挑むということは、十分な自信と覚悟を持ってきているということだろう。
「んで?要するにデュエルでオレを攻略組の座から引きずり降ろそうってことか?」
相も変わらずジャックは坦坦と口を開く。
「はい、そうです」
その声に、「おお」と、いくつか歓声が上がる。
――自信過剰な者か。
――お調子者か。
――結局今までと同じ敗北する者か。
――中途半端な覚悟を持ってきた者か。
――はたまた、本当にジャックを倒してしまう者か。
傍観していた者たちに、そんな想像が膨らんでいた。
今まで、これほどの啖呵を切ったプレイヤーは誰一人としていなかったからだ。
だが、その歓声も、次に彼が放った一言に掻き消された。
「もちろん、《ノーマルモード》でのデュエルでね」
(……なっ!?)
思わず絶句する。
このゲーム内における正式な決闘方法であるデュエルには、三通りのモードがある。
一番使われる、いや、使わざるを得ないのが《初撃決着モード》。
初めの一撃を決めるか、相手のHPを半分以下にすると勝利するこの方法には、敗北しても死なないという点から、ほぼ全てのデュエルがこれで行われていた。
二つ目は《時間制限モード》。
文字通り互いに時間を決めて、時間切れの時点でHPが多く残っていた者が勝利となる。
しかし、相手をPKしても勝利となる。
そして《ノーマルモード》通称《完全決着モード》。
相手のHPを0にするまで戦いは終わらない。
PKをするか、相手が『リザイン(降参)』するまで戦い続けるこのモードは、今まで一度も使われることもなかった。
それを今、新入りのこの青年は、ジャック相手にそれを挑むというのだ。
「いいのか?」
「構いません」
間髪を容れずにそう答える。
その言葉に不敵に笑ったジャックを見て、周りの人間は一斉に青年を止めに入った。
「おい、馬鹿な事は止めておけ。せっかく攻略組に入った命は大切にするんだ」
「お前はアイツの強さを知らんからそんなことが出来るんだ」
「今は攻略組同士で争っている時間は無いんだ」
など、青年を取り囲んで一斉に彼を止めようとする。
しかし、彼の意思が変わることはなかった。
「皆さんは、自分の命が惜しいだけです。僕は違います。ジャックは間違っている!」
爽やかな少年が見せた怒気に当てられ、周りの者たちは黙り込んだ。
「『悪』は粛清しなくちゃならないんです。膨れ上がった『悪』は、根絶やしにするしかないんですよ!!」
彼の眼には、ジャックに対する明確な憎悪があった。
それを受けてもなお笑みを崩さないジャックが、自身の短剣を取り出した。
「OKだ。断る理由もねぇ」
ジャックは指先で短剣を回し、ユースティティアを見据えた。
「ただ、生温い覚悟でやられてもしょうもないからな。ここは一つ追加ルールだ。
「追加ルール……?」
指でナイフを弾き、再び短剣はジャックの手に戻る。
「互いに『リザイン』は無しだ」
「待て、ジャック!!」
これには、俺も声を出さずには居られなかった。
全てのモードに『リザイン』は適応される。
だから、殺すまでは行かなくても戦いは終わらせることが出来る。
それを自ら破棄するなんて狂気の沙汰としか思えなかった。
「はい、いいですよ。元々リザインを口にするつもりなんてありませんでしたから」
「決まりだな」
しかし、俺の叫びを無視して、二人はデュエルの取り決めをしていた。
痺れを切らせた俺はジャックの肩を掴もうとしたが、その手を逆に掴まれた。
真剣な面持ちで俺を見る。
「生憎、下手に断るとオレの立場が無くなるからなぁ。悪いが、好きにやらせてもらう」
そういうと、また狂気的な笑みを浮かべた。
それを、鋭い目でユースティティアが見る。
「それじゃあ二時間後に広場で」
「ああ」
俺たちを置き去りに、二人は会場を後にした。
その姿に、俺は黙って拳を強く握るしかなかった。
俺にはジャックみたいに人を殺すこともユースティティアのように覚悟を決めることも出来ない。
一丁前に《ビーター》として嫌悪の的となっては逃げているだけなんだ。
――何故だが、ジャックの姿は俺や攻略組の誰よりも輝いて見えた。
『攻略組のPKプレイヤーと新入りが広場にて《完全決着モード》でデュエルをする』
この情報は、瞬く間にアインクラッド中に知れ渡り、二時間後の広場はたくさんの人で埋まっていた。
――俺達は、プレイヤー同士の本気の殺し合いを目の当たりにすることとなる。
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さーてジャックさんの最強さの片鱗が見えてきました。
それにしてもユースティティアって文字数使うな……。
なんかキリトの性格が違うかな?
まあ、ジャックと関わって変わっていくってことにしておいてください。
また次も戦闘です。
はい、頑張ります。
それでは。