そういえば僕はSAOのゲームは未プレイの上にアリシゼーションは全く読んでないので、ソードスキルとかは適当で原作との矛盾点が出てくると思います。
まあ、二次創作と言うことで多めに見てやってください。
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闇夜に包まれた森の中を突き進む、昼間ほどの明るさはないが、薄青い光が足元まで照らしているので走るのに不便ではない。
この森に入ってすぐ、俺はまたジャックの強さを目の当たりにした。
レベル1のプレイヤーに与えられている《スキルスロット》は二つ。
一つはもちろん《
勿論ジャックにはこの事を《はじまりの街》を出るときに伝えた。
ジャックは一つ目の《スキルスロット》に《短剣》を入れたのだが、二つ目のスロットには《投剣》を入れたのだ。
俺が戦闘系のスキルだけ入れていてもソロじゃ生きていけないという言葉に耳も傾けず、ジャックに迷いの色は無かった。
自分から生存率を下げて何になるのか、いくらパーティープレイでは重視されないからといっても、ソロでは手に入れておきたい安全性の非常に高いスキルには違いない。
ジャックは一体何を考えているのか、俺が《索敵》のスキルをとっているから安心しきっているとでも言うのだろうか。
いや、この世界で安心する事なんて出来るはずはない、それに今俺達は誰よりも前を走っている、ここでその判断を許しても良かったのか。
――しかし、俺はまたしてもジャックのポテンシャルの高さに驚愕することになる。
「あそこにまた《リトルネペント》だ。さーて、こんどは《花つき》かなぁ」
嬉々として語りかけるジャックに、俺は何度目になるかわからない溜息を心の中で吐いた。
(なんで《索敵》スキルで反応距離が増加してるのに俺が気付くよりも前にこいつは敵を発見できるんだ!!)
思わず「はは……」と言うことしかできなかった。
もし他の誰かが俺の位置に立っていたら、こいつ本当は超強力なNPCなんじゃないの?と言いたくもなるだろう。
それくらい俺のパートナーは滅茶苦茶な事をやってのけているという事だ。
システムアシストすら超越する五感。
全く、《チーター》もいいとこじゃないだろうか。
潜在能力なので文句を言うことも出来ない俺はとりあえず目の前の《リトルネペント》に意識を向ける。
「ジャック、さっきと同じように一気に決めるぞ」
「OK」
短剣を持つ方の手の親指を立て、ジャックは走り出した。
その先にいる《リトルネペント》の頭を確認した俺は「………ハズレ」と呟く。
あの口の上に大きな花を咲かせているヤツが出現するのだ。
《ホルンカの村》で受けたクエストのキーアイテム《リトルネペントの胚珠》は花つきのネペントからしかドロップしない。
そして花つきの出現率は恐らく一パーセント以下。
しかし、普通のネペントでも倒し続けていれば花つきの出現率も上がる。
「おらよっ!!」
ジャックはネペントの右の蔓の攻撃を素早く左に回避するそのまま《短剣》の突進技《スティムルス》を発動し、ウツボ部分と太い茎の接合部――弱点に叩き込む。
手応え十分、ネペントのHPバーがガクッと削れる。
ネペントが攻撃の呼び動作に入る前に俺が側面から接近する。
ジャックがバックステップでネペントと距離をとるとネペントは俺の方を向いたがもう遅い。
剣を右に大きく引き、一瞬のタメ動作によって《剣技》が発動し、刀身を薄水色の光が包む。
「……らあっ!」
単発水平斬撃技《ホリゾンタル》で正確に弱点部分を狙う。
片手剣は《剣技》のモーションに乗って狙った場所に吸い込まれていく《リトルネペント》の残りのゲージ全体が真っ赤に染まり、体全体が青く凍りつく。
直後、その巨体は爆散した。
本来なら経験者である俺が初撃を務めるのだが、ジャックの敵の動きを見ておきたいという意見と短剣の方が片手剣よりも早く動けるという事で、ジャックが敵のHPを削ってから俺が威力を最大限までブーストさせた攻撃で倒す。
シンプルだが、敵が一体なら安全に敵を倒せる戦法だ。
それに、ジャックは戦うごとに回避能力も上がっている。
《リトルネペント》の攻撃方法を最初に俺は一人で戦って見せ、次にジャックが戦った時には攻撃が掠りはしたが直撃することは無く、今ではツタくらいなら完全にかわして見せる始末だ。
本当に戦闘の申し子とでも言ったところか、『死』への恐怖すら、ジャックには無いようだった。
「むこうにまたネペントがPOPしたみてぇだぞ」
「よし、どんどん行くぞ」
俺達は再び深い森の底へと走り始めた。
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その後は一分に一匹のペースで《リトルネペント》を屠った。
残念ながらまだ花つきの個体は出現しない。クエストにおいて俺はあまり幸運に恵まれた記憶がないのだ。
「なかなか出ないな《花つき》ってのは、まあ数パーセントじゃそう簡単に巡り合えるわけもねぇか、まあ経験値も手に入ってるから良しとするか」
十数匹目のネペントの戦闘にジャックが余裕が出てきたのか、そんな事を言いながらネペントに攻撃を加える。
HPを全て削ると同時に、金色のライトエフェクトが全身を包む。
「うおっ、眩しっ」なんていう声が聞こえた。
(そう言えば経験値確認するの忘れてたな……)
そうとう戦いに集中していたのか、経験値がレベルアップまでの必要量に近づいていた事に気付いていなかった。
「あーそっか、オレはチュートリアルの時戦ってなかったからキリトの方が先にレベルアップしたってことか」
自分も同じだけ戦っているのにレベルアップしなかった事に納得したらしい。
「じゃあ、もっと数を狩らないとな」
俺が挑発的に言ってやるとジャックはニヤッと笑った。
だが、その顔は一瞬でモンスターと戦っているときの真剣な顔に戻る
俺は獲得したステータスポイントを振り分けてジャックの方を見やると不意に、パンパンと言う、乾いた何らかのサウンドが連続して響いた。
これには自分の甘さを再認識された、ジャックと心強い存在がいるからと理由で警戒を怠るとは初心者以下のミスだ。
内心、自分を罵りジャックへの感謝を述べつつ戦闘態勢を取ろうとするがジャックが武器をとっていない事に気付き、音のした方に視線を移す。
その音の正体は、人だった。
しかもNPCですらない、プレイヤーだ。
ジャックよりやや小さいくらいの背丈、年代は同じくらいか。
防具は《ホルンカの村》で売っている軽量な革鎧と
武器は俺と同じく初期装備の《スモールソード》。
と言っても抜いているわけではない。つまり、さっきの音はこの男というか少年が、俺のレベルアップに対して拍手した音だったのだ。
「……ご、ごめん、脅かして。最初に声をかけるべきだった」
「……いや、俺こそ……過剰反応してごめん」
突然のことで声が吃ってしまう、行き場の無い手をハーフコートのポケットに突っこんだ。
隣でジャックが笑っているのかと思いながらジャックの方に目を向けると、「ほう」とでも言いたそうに口を開け俺の視線に気付いたのか俺の方を向くと前にいる少年に見えないように口元を釣り上げる。
(……こ、こいつ!)
まあ、これも御愛嬌と言う事で特に言及はしなかった。
「れ、レベルアップ、おめでとう。ずいぶん早いね」
「早いってほどでも……」
「そうだな、それにオレたちは真っ先に突っ走ったのに、誰かがここまで来るのはまだまだだと思ってんだがな」
俺の言葉にジャックが続いて言う。まさか、この少年も、
「あはは、僕も一番乗りだと思ってたよ。ここは、道が解りにくいから」
これで確信を得た、ジャックもやっぱりなと言う顔をしている。
彼は、俺と同じだ。
これほど早くこの《ホルンカの村》にたどり着くにはそれだけの経験と知識が必要になる。
ジャックほどの才能があるビギナーでもここに来るには時間がかかるハズだ。
つまり、《元βテスター》なのだ、俺がそうであるように。
「君たちもやってるんだろ、《森の秘薬》クエ」
「ああ」とジャックが頷くと、相手はにやっと笑いながら、
「あれは、片手剣使いの必須クエだからね。報酬の《アニールブレード》を貰っとけば三層の迷宮区まで使える」
「……見た目はイマイチだけどな、あれ」
「見た目なんか気にする程でもねぇだろ」
俺の捕捉にジャックが軽くツッコミを入れると、少年はあはははと朗らかな声を出した。
やがて笑いを収め、一呼吸置いてから口を開く。
「せっかくだから、クエ、協力してやらない?」
「え……でも、一人用クエだったと思うけど」
反射的にそう答られた。この《森の秘薬》クエストはパーティ状態で遂行すれば全員がクリアできるクエストではない。
キーアイテム《リトルネペントの胚珠》が一匹から一つしかドロップしないので、パーティで挑んでも結局アイテムを人数分集めねばならない。
「そうなんだけどさ、《花つき》はノーマルのを狩れば狩るほど出現率が上がるだろ。キミの隣の彼は短剣を使っているようだし、もっと効率よく乱獲した方がいいよ」
それは、確かにその通りだ。
だが、今ジャックとパーティーを組んでいるし、しかもジャックには関係の無いクエストだ。
俺がジャックの方を向く、俺の言いたい事を察したのか、
「オレたちはこれ以上先を急ぐ必要もないしな、構わねぇよ」
ジャックがそう言うと少年は顔を綻ばせた。
「あっ、別にパーティーを組まなくて良いよ。ここで先にやってたのは君たちなんだから、最初のキーアイテムはもちろん譲る。確率ブーストがかかったまま狩りを続ければ、きっとすぐにニ匹目も出るだろうから、そこまで付き合って貰えれば……」
「あ……ああ、そうか……じゃあ、悪いけど、それで」
俺の承諾に、少年はもう一度笑うと、歩み寄って右手を差し出した。
「よかった、じゃあしばらく宜しく。僕は《コペル》」
同じ元βテスターなら、当時の知り合いであってもおかしくないのだが、その名前に聞き覚えはなかった。
「ジャック……《ジャック=ガンドーラ》だ」
「……よろしく。俺は《キリト》」
俺が名乗ると、少年――コペルは軽く首を傾げた。
「……キリト……あれ、どっかで………」
どうやら、向こうはβ時代の俺を、直接ではないにせよ知っているようだ。
反射的にヤバいと思った俺は、即座に言った。
「人違いだよ。さあ、ガンガン狩ろうぜ。ほかのプレイヤーが追い付いてくる前に、《胚珠》を二個出さないと」
「う……うん、そうだね。頑張ろう」
「左に《リトルネペント》が三匹だ、狩るぞ」
ジャックの言葉を合図に、俺たちは頷き合い、間近で三匹固まっている《リトルネペント》目掛けてダッシュした。
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流石に元βテスターだけあって、コペルの戦闘の堪はなかなかのものだった。
だが、ジャックの戦闘への慣れは、それ以上のものだった。
被弾しないのだ、腐食液ですら防具に触れることなく地面へと落ちていく。
それも最初にやっていたジャックが最初に飛び出すやり方でだ。
これにはコペルも驚きを隠せていない、口を少し開けたままジャックの姿を見ている。
俺の《剣技》《ホリゾンタル》が、植物の茎を断ち切った。
破砕音が響き、実体の無い硝子片が俺を透過して飛び散る。
コペルも戦闘を終えたようで、ふうっと息をつきながら振り向く。
「………出ないね……」
声には、さすがに疲労の色が滲む。
俺達が狩りを始めてから、すでに一時間が経過している。
三人合わせて百五十近いネペントを倒しているハズだが、まだ《花つき》はPOPしていない。
「もしかしたら、βの時と出現率が変わってるのかもな……」
「……ありえるなぁ……。どうする?レベルもずいぶん上がったし、武器もだいぶ消耗したし、いちど村に……」
コペルが続きを言いかけたときジャックが口を開いた。
「その《アニールブレード》ってのはそんなに強い武器なのか?」
「……まあ、三層まで持って行ける武器だからね、今の時点で安全のために持っていたいって奴もいるんだよ」
俺が返すとジャックは「なるほど」と言う。
「それに強い武器があれば狩りも楽になるし、パーティーだって組みやすくなるだろうし、僕としてはジャックが本当にビギナーっていう方が信じられないよ」
コペルはあははと笑いながら言う、確かにそうだが、ここまでジャックを見てきた俺には、ジャックの能力はもはや才能としか表せないものだった。
「死にたくねぇだけだよ、いや、ただ純粋に茅場晶彦を殺してやりてぇっつった方がいいのか?」
ジャックは指で短剣をくるくるとまわしながら答える、その時、俺達のほんの十メートルほど離れた木の下に、仄かな赤い光が生まれた。
「「「………」」」
俺たちは、草むらに立ち尽くしたまま、ぼんやりと
その捕食器の上には、薄闇の底でも毒々しい赤に輝く、チューリップに似た巨大な花が。
「「「………」」」
俺たちは、尚も数秒そいつをぼぉーっと眺めたあと、無言で顔を見合わせた。
「「………―――!!」」
声にならない雄叫び。
それぞれの剣を振りかざし、俺たちは《花つき》に飛びかかろうと――
「待てキリト!《花つき》の後ろになんか見えねぇか!」
唯一人武器を抜かなかったジャックが俺達を制止する。
冷静に足を止め、《花つき》の方へじっと目を凝らすと、木々に遮られて見えにくいが、その方向に、ネペントの影がもう一つあるのが解った。
気付けたのは、やや熟練度が上昇してきた《索敵》スキルのおかげだ。
ジャックについては言うまでもないだろう、さすがに慣れた。
そのニ匹目の捕食機の上の塊が花なら、俺達が足を止める事も、ジャックが俺達を止める事も無かっただろう。
だが、ニ匹目が細い茎の先にぶらさげているのは、直径二十センチほどの丸いボール――《実》だ。
そいつをわずかにも傷つけてしまえば、即座に炸裂して臭い煙を撒き散らす。
煙は周りのネペントを引き寄せ、いかにレベルが上がっていようとも到底脱出できない危地に俺達を叩き込むだろう。
そのことをしらないジャックが《実つき》を危険視したのは野生の勘か、何にしろどうすべきか……。
戦力的には、《実つき》の実を傷つけずに倒せる可能性は十分にある。
だが絶対ではない。
わずかにでも死の危険があるなら、ここはじっと我慢し、花つきと実つきが遠く離れるまで待つべきか。
「……どうする……」
俺は我知らず、そう呟いていた。
ここで迷うこと自体、危険と安全の線引が出来ていない証拠だ。
ただでさえジャックを守ると決めたんだ。だが、ここでこいつを逃しては二個も胚珠を見付ける事なんて――
「――行こう。僕が《実つき》のタゲを取るから、キリトとジャックは速攻で《花つき》を倒してくれ」
「………解った」
「…OK」
走り出したコペルを俺とジャックが追った。
まずコペルの接近を《花つき》が察知し、ぐるっと体を反転させた。
右に迂回し、《実つき》を目指すコペルを、《花つき》はターゲットし続けた。
その隙を利用して俺とジャックは《花つき》に一気に攻撃を仕掛ける。
HPは削り切れず、ネペントはツルを伸ばしてくるが、ジャックは回避しながら接近。
腐食液を吐き出そうとするネペントに臆しもせず、二連水平斬り《ラップサム》の青い斬撃が、肉質の茎を切断した。
切り離されたウツボ部分がごろりと地面に落下し、ポリゴン片となって四散する――前に、頭頂部の花がはらりと散る。
中から、仄かに光る拳大の玉が転がり出た。
――《リトルネペントの胚珠》だ。
俺は体を屈め、それを拾い上げると危険な《実つき》のタゲを引き受けてくれているコペルの援護に向かおうとする。
――しかし、俺は目の前にいるパートナーの異常に気付いた、いや、気付いてしまったの方が正しい。
何なんだその眼は、お前は一体何を見ているんだ。
その黄金の瞳はまるで完全に広がる全ての光景を文字通り『殺』してしまいそうな。
視線が彼の顔に向けられていたから気付けたかもしれない。一瞬、ほんの一瞬だが口元が動いていた。
読唇術を心得ているわけではないが、その言葉は容易に読み取ることが出来た。
――『殺す』
一点の曇りもない殺意が身体に刺さる、何故彼は今になってそんな一面を見せるのか、俺には解らなかった。
刹那、耳を劈くような音が、暗闇の森に響き渡った。
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全然物語が進まない。
ちょっと書き方の工夫を頑張ってみます。
2015 2/13 内容は変えずに文自体に手直しを加えました。