仮想世界に棚引く霧   作:海銅竜尾

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はい、どーも竜尾です!
三年前は別の二次創作サイトで活動し、二年前は小説家になろうで活動し、失踪したのですが活動を再開することにしました!
アニメを見ながら構想を練るのに半年。
設定を加えて本格化していくのに半年。
やる気を出すのに半年かかってついに書き始めました!
今回は失踪する気はないです。
以前投稿していた時は誤字がものすごく多かったので指摘してもらえるとありがたいです。
それでは物語のほうをどうぞ。



殺人鬼捜索編
霧の誕生


==========

 

「……っっ、はぁ…はぁ…」

「…やっぱり、止めときゃよかったんだよ!!」

 

静かな森の中、二人の男たちが落ち葉を蹴散らし、怯えるように走り去る。

 

――いくら走っても疲れるはずのないこの《仮想世界》で、何故自分はこんなにも疲れているのか。

 

これが、『恐怖を目の当たりにする』と言う事なのか。

 

あの茅場晶彦によって宣言された《ナーヴギア》による脳の破壊を聴いた時にも驚愕こそしたが、明確な死への恐怖は感じる事が出来なかった。

 

だから、こうして自分たちは二人で第二層まで登り、第一層のボスモンスターを倒してこの世界の通貨である『コル』やレア武器を持っていそうなプレイヤーを殺して自分たちの物にしようとしたのだ。

 

――どうして、こんなことになってしまったのか……。

 

==========

 

サービス開始初日の騒動でパニックに陥り、現実世界でも友達だったプレイヤーを見付け二人で一カ月の間モンスターと戦うこともなく、初期設定の所持金で何とか食いつないできた。

 

しかし、当然のようにコルは底を尽き、モンスターと戦って死ぬ危険を負うよりは、二人で一人のプレイヤーからコルを強奪することに決めた。

 

それも、貪欲に…。攻略組のプレイヤーを狙えば一気に大量のコルを巻き上げられると考え、昨日解放された第二層まで登ってきた。

 

モンスターとの戦闘経験もほとんどなく、自分たちのレベルも高くなかった所為で相方のHPはレッドゾーンに入ってしまったが、不意打ちをすればそんなモノ関係なく相手からコルを奪えるだろうと思い、迷宮区の森へと一人で入ったプレイヤーの後を追い駆けた。

 

気配を殺すなんてことは出来ないが、出来るだけ音を立てず、距離をとりながら様子を窺った。

 

……こうしてみると、自分たちが《暗殺者(アサシン)》のように思えてきて、口元が緩んでしまった。

 

そんな自分たちの金蔓はモンスターを倒したところだった。

 

相方に合図をして、奴が獲得したコルと経験値を見ている隙に、後ろから不意打ちを仕掛けるという簡単なモノ。

 

幸い奴は《索敵》スキルを持っていないようで、熟練度も大して上がっていない《隠蔽》スキルを使っていたため接近には気付いていない。

 

尖ったような鋭い金髪、背丈から感じる雰囲気は高校生と言ったところだろうか…。

 

その背中に、ゆっくりと自身の武器である《両手剣》を振り上げる。

 

しかし……。

 

《両手剣》は、なにもない空を斬った。

 

体制を崩して思わず地面に膝を付き、殺すはずだったプレイヤーを見上げる。

 

追跡に気付き、余裕綽々といった顔で無様に跪く自分の姿に嘲笑しているのかと思えば、その顔は驚愕に染まっていた。

 

時が止まった気がした。

 

沈黙を破ったのは相方だった。

 

覚束ない動きで《(ソード)(スキル)》こそ発動しなかったが、見ただけでも判るくらいに軽装備だった奴のHPはガクンと削れイエローゾーンまで落ちる。

 

それと同時に相方のカーソルがグリーンからオレンジに変わった。

 

奴の顔は驚愕に染まったまま、斬られた部分を見て立ち尽くしている。

 

相方が追撃しようと《剣技》を発動し、それに続いて斬りかかった。

 

一気にHPバーが削れる、目には危険域を表す赤。

 

((殺れる!!))

 

 

そう……。

 

ここまでは順調だったんだ……。

 

 

子供が絵本に描く取って付けたような、勇者が魔王を倒しお姫様を救う、そんな物語。

 

この世界では自分の思い通りになる事なんて、一つだってありはしない事を……。

 

刹那、得も言われぬ不快感に襲われた。

 

汗が出ていないのに発汗しているような感覚、心臓があるわけでもないのに感じる鼓動の速さ。

 

――殺気。

 

安易に想像できるようなドス黒いオーラが体から出ているわけでもない、無表情で、冷徹に。

 

首と心臓を同時に締めつけられたような――。

 

指一つ動かせず、視線はその手に握られた《短剣》に寄せられる。

 

奴自身、HPもレッドゾーンの筈なのに何故逃げようとしないのか。

 

自分を狙った者が生き延びることなど無いとでも言いたげな瞳。

 

殺戮をヒトの形に固めたモノが、そこにはあった。

 

「う……うわあああぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあぁぁあ!!!」

 

足が動いたのは、奇跡ではないかと感じられた。

 

(振り返るな。もう一度奴の姿を見たときには、もう二度とこの足は動かせなくなる)

 

ツーテンポ程遅れて相方も走り出す。

 

後ろから刺すような視線、奴のモノに違いはなかった。

 

しかし、あれ程の殺気を見せて彼でも、やはり人を殺すことまでは出来なかったらしい。

 

心の中で少しだけ安堵した。

 

このまま走り抜け《圏内》まで逃げよう、その後は第一層まで降りて、今度は安全にコルを巻き上げるんだ。

 

数分走った所で、ゆっくりと首を後ろに向ける、相方も真っ青な顔ではあったが、後を付いてきていた。

 

奴の姿も、あの不快な殺気も無かった。

 

膝に手を突き息を整える、まだ油断はできない相手は攻略組だ、PKを行おうとした自分たちを黒鉄宮の牢獄エリアに飛ばそうと追いかけてくるかもしれない。

 

軽く息を吐き、相方に「さっさとこんなところから脱出しよう」そう口を動かそうとした。

 

瞬間。

 

「ストンッ」と軽い音が耳を刺激した。

 

相方が目を見開いて自分の方を見つめる、その真っ赤に染まったHPバーが終焉を示すかのように真っ黒に変わった。

 

目の前で相方が無数の硝子片に変わると同時に、全身に冷たい殺気が突き刺さる。

 

間違いない、奴だ。

 

ゆっくりと自分に近づいてくる。

 

相方の命を奪った《短剣》を拾い上げ、その視線を自分に移した。

 

「……は…ははっ…」

 

歪んだ口から漏れたのは、自分に対する嘲笑だろうか。

 

全くもって最悪な人生だった。

 

――それなら、たった一度きりだけでいいから、反逆してやろう。

 

《両手剣》の《剣技》を奴に向けて放つ。

 

しかし、それは清々しい程に空しく終わった。

 

直後、自分の胸から吹き出す赤いポリゴン片……。

 

すかさず《短剣》による連撃を無抵抗で受け、HPバーが急速に減って行く。

 

全身に激しい冷気が侵入してくる、体の感覚が薄れていく。

 

『死ぬ』と言うのはこういうことか……。

 

==========

 

人の体が硝子のように音を立てて消滅した。

 

殺す気など無かった……。

 

とは、とても言い辛い光景だ。

 

恐らく、このデスゲーム初の殺人であろうと想像できた。

 

第一層のとき、自分を間接的ではあるが殺そうとした彼も、自分と同じような気持ちだったのだろうか。

 

今となっては解るはずもない事だが……。

 

どうも自分は《殺人鬼》の運命とは切っても切れない関係らしい。

 

先程まで人がいた場所を一瞥し、《短剣》を強く握り締め、迷宮区の奥へと突き進んだ。

 

気のせいか、虚ろな自分を霧が覆い隠しているようだった。

 

==========

 




2015 2/12:内容を変えずに文自体に手直しを加えました。
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