タフネス系乙女ゲー主人公VS一般転生モブ兄妹VS出遅れたイケメンども。   作:はめるん用

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 作者はコンビニより薬局やホームセンターを利用するので初投稿です。



セーブポイントの確認は長距離移動のときのトイレ休憩ポイントの確保ぐらい大事。

 まったく驚く要素が無いであろう事実として、なんと東風三郎太は若い時は現役バリバリの侍として鬼と戦っていた。現場を知る職人の武器というだけで、聞く者が聞けばそれなら信頼できるだろうと納得する経歴である。

 

 だからこそ現役の侍や巫女たちにできることはしてやりたいと思っているが、それなりに立場が出来上がったことで現役時代に不満に感じていた上の対応にも意味があるのだと思い知ることにもなる。

 ひとつ例を挙げるなら「鬼が現世を歩けると知った悪党が、悪事を鬼の仕業とカモフラージュしたらどうする?」というもの。かつて人間が邪魔者を鬼に献上して取引していたそれを、現代でも行われたときに責任を取れるのかと言われてしまえば黙るしか無い。

 

 こういう話のテンプレとして貴族階級の人間辺りが積極的にやっていそうなものだが、幸いなことに神霊や精霊の加護を重視する風潮からそういう事実は存在しない。だからこそ、それらとの縁に恵まれなかった野心家が鬼を利用しようとして利用されたりするのだが。

 

 ともかく、上のやり方にも意味があると知った東風先生はときには黙ることで守れるモノもあると学習した。が、だからこそ今回は自重する必要がないと判断した。

 彼らが軽んじている加護持たずの侍が現世侵攻の可能性に気付き、それを四神の侍のうちふたりに知られたのでは黙秘するより開示してしまったほうが万が一への備えになるからだ。

 

 こうなったときの年寄りの行動力とは、それはもう元気100倍どころではないので止められるワケがない。若い世代を護るため責任も実績も全部磨り潰してなにが悪いと腹を括ったところに現世で黄龍の巫女が襲われたという事実が転がり込んできたのだから尚更である。

 

 と。

 

 いうことで。

 

 さっそく東風先生と現世侵攻対策チームの人間が集まり、まずは四神の侍にそれらの事情について教えようという話になった。本当ならここに当事者である真白も参加するはずなのだが、ここで彼女が一般家庭の出身であることに難癖を付ける者が出てきた。

 散々に神輿扱いしておいていまさらそんなことをッ! そもそも襲われた本人だってわかってんのかボケどもがァッ!! と、まぁ気に食わないとかそういうレベルの話ではないのだが、理屈が通用しない妖怪連中と無意味な問答を続けるくらいなら四神の侍たちに話を通してしまうほうが良い。真白の周囲には鬼豪討伐の実績がある棗、凪菜、更紗の3人もいるということで、そちらは対策チームが個人的な用向きとして接触することにした。

 

 

 これで何処かの転生者が余計なことをしなければ、この会話イベントは恙無く終了したはずなのだが。

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

「ほぅ、ほぅ……? なかなか良い気迫を纏うではないか。よいぞ、よいぞ。それでこそ一騎打ちを申し込んだ甲斐があるというもの。果たしてそれが虚仮威しかそうでないのか……玄武の侍よ、その弓の業にて妾を退けてみせるがよい」

 

 

 喜多家が管理する物語後半に向けての稼ぎポイント、神霊版の迷宮とも言える『水の伽藍洞』にて。

 

 涼蘭姫と厳正なる審査(じゃんけん)により選ばれた側近たちによる襲撃が発生し、これに喜多家の侍と巫女が対応して時間を稼いでいる間に攻略対象のイケメン4人が到着した。

 一騎打ちを受けるのであれば周辺への被害について最大限の配慮をする、と提案されれば静流の性格からして断ることなどできない。両親や、風魔と大地も当然ながら、迎撃に参加している人間たちからはその提案を疑われていたとしても。

 

 ただひとり、紅蓮だけはアホとの戦いを思い出して「今度は正々堂々とした手合わせを申し込めばいいのか……」とか考えていたが。

 

 別に紅蓮に危機感が無いというワケではない。彼方との死合から常識とされていた様々な価値観に疑問を持ち視野を広げたことで、涼蘭姫たちの行動が人間を害することを目的としていないと雰囲気から察しているだけのこと。

 なによりも、この場にいる全員が大事なことを忘れていると紅蓮だけが気付いていた。日本各地にある伽藍洞の周囲には強力な防護結界が張り巡らされているが、それらは強力であるが故に敵意を持つ者にしか反応しないという性質があるのだ。

 

 アテルイとの出会いから、紅蓮は鬼というものは人間と敵対しているが、そこに負の感情があるとは限らないと学習した。ならば、伽藍洞の結界を潜り抜けてきた涼蘭姫たちの目的はなんなのか? 

 案外、自分たち四神の侍がどの程度の使い手なのか興味本位で乗り込んできただけかもしれない。迷惑極まりないことではあるが、一般人に被害が出ないなら別に……といったところだ。どう考えてもアホの影響は小さくない。

 

 

 だがしかし。四神の侍としての役目と立場としては、ただ黙って見ているだけというのはよろしくない。周囲にこの一騎打ちは意味があり価値があるものだと知らしめる()()が必要だろう。なので。

 

 

「────封炎結界ッ!!」

 

 朱雀の炎により、静流たちと人間たちとの間に仕切りを作り。

 

「これは玄武の侍・喜多静流と敵将・涼蘭姫との勝負であり、そこに他者の思惑が介入することを認めない。もしこの勝負を穢す者があれば、我が炎にて焼かれ死ぬことを覚悟しろ」

 

 強い言葉で正々堂々とした真剣勝負であることを強調する。

 

 

「紅蓮ッ!? お前……」

 

「確かに一騎打ちという約束ではありますが……ッ!」

 

「連中はそのつもりになれば、いくらでも卑怯な手段でオレたちの動きを封じることができた。それをせずに真っ向勝負を挑んできたのであれば、四神の加護を持つ侍としてこちらもそれに応じなければならないだろう」

 

 優先順位が朝比奈真白になりつつあるふたりでも、四神の侍として人々から求められる姿勢を忘れたりはしない。相手が正々堂々とした戦いを挑んできたから、こちらも正々堂々と迎え撃つのだと言われれば納得するしかなかった。

 チラッ、と鬼の側を見れば。なんとなく服装の雰囲気から側近っぽい男の鬼がニヤリと笑って周囲の部下に指示を出し始めた。これで条件は整った、あとは静流が一騎打ちで勝ってくれれば文句無し。霊気と妖気の差が大きすぎてそうなるビジョンがまったく見えないが、静流本人が“滾っている”ようなので良しとする。

 

 本来ならもっと慌てて対応するべき大事件。それでもこれだけ冷静にアレコレと判断して動けるのであれば、転生者によるハンマーセッションも無駄ではなかった……ということにしておこう。

 

 

 

 

 ちなみに。

 

 

 

 

「今日は山のほうが騒がしいな。なんかあったっけ?」

 

「さぁ。お侍さまや巫女さんたちの用事なんかオラ知らねぇよ〜、ってな」

 

「お前ら、忙しいときに無駄話してんじゃねぇ。ホレ、さっさと料理運べや」

 

「「うっす!」」

 

 

「おまたせしました〜、こちら、ギガ盛りカレーのとんかつ7枚トッピングです」

 

「こちらがトルコライス大陸盛りです」

 

「ありがとう。それと、すまないがドリンクのおかわりも頼みたい」

 

「かしこまりました〜。載せるのはさっきのと同じでよろしいですか?」

 

「あぁ、よろしく」

 

「はい、クリームソーダの特大ジョッキに大盛りアイスが2、大盛りソフトが3ですね〜。ただいまご用意しま〜す」

 

 

「あそこのグループ、美人なのにメッチャ食うな。巫女さんかな? この辺じゃ見たことないし、喜多家の人らじゃなさそうだけど」

 

「でも奥に座ってた人ほかの巫女さんから姫って呼ばれてたし、どっかデカいところの巫女さんたちじゃねぇの?」

 

「あぁ、確かに姫さまデカかったな……ほんと、大盛りで」

 

「バカなこと言ってるとまた店長に説教されるぞ。はやくクリソ用意しようぜ、俺ソフトを上手く立てんの苦手なんだからさ」

 

「しょうがねぇな〜、じゃあ俺が立たせてやるか!」

 

 

 もうひとりの鬼神の姫とその側近たちは、物見遊山気分ではなくガチの物見遊山を満喫していたッ! 

 

 

 ◆◇◆◇

 

 

 喜多家の周囲がピンチのような案外そうでもないような忙しない状況になっているころ、その元凶である彼方はとある廃れた神社にやってきていた。

 

 現世での戦いにおける復活に関わる神社であり、その存在は原作知識からあるだろうとは考えていた。しかし、生死に関わる領域を扱う神霊が祀られているかもしれない場所に軽々しく踏み入るのは……と、あえて近寄るのを避けていた場所である。

 だが実際に現世侵攻が始まればそんな遠慮などしている余裕は無くなった。景気良く人質にされたチンピラを殴り飛ばしていた彼方だが、それでも思うところはあったらしい。万が一のときは、それこそ子どもでも盾にされようものなら、さすがに武器を捨てチャンスを待つため無抵抗になる必要もあるだろう。

 

 と、まぁ。どう頑張ってもムリな状況というものに放り込まれる可能性を考えれば、仮に気休めにしかならなかったとしても祈りのひとつでも捧げたくなるというもの。

 

 

「しっかし、なんというか……想像より荒れてるな。それだけ平和な時期が続いたって証拠でもあるんだろうけど。こりゃ凪菜を連れてこなくて正解だな、アイツの性格からいって腕が動かないからって黙って見てるだけってのはムリだろうし。……よし!」

 

 

 まずは適当にみたらし団子をお供えし、それからゴミの片付けを始める。ゴミといっても基本は全て天然資源の残骸、適当に土属性スキルで穴でも掘って埋めればいつか自然に還元されるだろう。

 これで真白と攻略対象のイケメン4人を中心としたメインキャラクターたちが、そして英雄として語られることが無くても人々を守るために戦う者たちが、そのついでに自分もおこぼれを分けてもらえれば儲け物、と。鼻歌などを嗜みながら掃除を続ける。

 

 

 

 

『ココにいるとも限らねぇ、いたとしても姿は見えねぇ声も聞こえねぇ。そんで俺に縋ってくるのかと思えば頭ン中はほかの連中の心配が先ときたもんだ。いっぺんマジで死んでるだけあって、なかなかご立派な心掛けしてるナ? なぁタマもん』

 

『もっ!』

 

 

 そんな彼方の様子をお供え物のみたらし団子をつまみながら見守るのはワイルドな装いに無精髭がアクセントのイケオジ神霊『黄泉戦(よもついくさ)』と、ギリ虫っぽいナニかとわからなくもないまんじゅうのぬいぐるみのような精霊『魂揺蛍(たまらぼたる)』という日本神話の死に戻り担当であった。

 

 

 システム的には黄泉戦は瀕死で強化系の恩恵を与えてくれる神霊であり、魂揺蛍はエーテルのロストや特殊な条件による一時的な弱体化などのデスペナルティを緩和したり無効化してくれる精霊である。

 後半の未探索のエリアはとりあえずこの組み合わせを使っておけば精神的に余裕が出ると初心者にもオススメされていた。 

 

 ストーリー的には、普通の人間では加護持ちですらまともに活動できない、そんな過酷な環境の迷宮を攻略するためのアイテムを与えてくれるという重要な役割がある。

 ゲーム好きにはラスダン通行証とでも表現すれば伝わるだろうか? もちろん本作の初代メインヒロインである朝比奈真白さんも彼からラスダンである北辰の迷宮を歩くためのアイテムを受け取ることになるだろう。

 

 そして世界観を構築する要素として、先に軽く説明した通りこの黄泉戦こそが死に戻りを管理する神霊である。死者の扱いを月読から任されていることから当然転生者である無銘兄妹のことは知っているし、なんなら日本の歴史において死に戻りランキングのトップランナーだけあって黄泉戦が指示を出さなくても勝手に魂揺蛍たちがエーテル粒子の回収に行くぐらいには顔馴染み? であった。基本はもう事後報告。もッ! 

 

 

『しっかし、なんつーか。皮肉っていうヤツ? こーゆーの』

 

『も?』

 

『んー、ほら。俺たちのことは人間たちの記憶や記録から消えちまったのにヨ? 他所の世界から来た転生者がこうして掃除してお供え物までしてくれるってのがナ』

 

『も……』

 

『ハハッ、そんなシケたツラすんなって! 人間たちにも事情があったんだからしょーがねーだろ? そりゃあ、よ……守るはずだった民衆から、死者蘇生の秘術を独占してるって石投げられるようなマネされちまったんじゃあナ……』

 

『も〜』

 

 

 この世界の理は死者の復活を認めた。だからこそ侍と巫女たちは全力で鬼と戦うことができた。

 しかし、彼ら彼女らが死に戻る姿を見た民衆が「自分たちは、家族や友人は死ねばそれまでなのに、何故あいつらばかり」と不満を持ったとしても……大切な誰かを失った者の感情を否定することが正しいことだと胸を張って言える者は少ないだろう。

 

 だが死に戻りとて無制限に可能なワケではない。鬼の支配する迷宮でそれが可能なのは、単純にそのほうが鬼たちにとって都合がいいから。心に、記憶に、恐怖が刻まれた人間が増えれば増えるほど負の感情が膨らむからだ。

 現世での死に戻りはそうもいかない。生者の領域と死者の領域の境界線が曖昧となれば恐ろしいことになる。誰もが椿落としの咎人のように愛する人と再会するまで静かに時を過ごせるのであれば問題なかったかもしれないが、剥き出しの魂が生命の輝きに触れて生への渇望を抑圧できるはずがない。

 

 

 単純に、死に戻るためには強い意志と充分なエーテルが必要という理由もあるのだが……とにかく“現世での死に戻りは特殊な結界の中でのみ発動する”という情報で民衆の認識を上書きすることで対応した結果、黄泉戦の存在は歴史から消えていった。

 その特殊な結界も、学園と義塾の交流戦などの形で民衆の娯楽に使われるのがメインとなってしまっている。それで人々から現世での復活についてのネガティブなイメージが消える、どころか現世に鬼が攻め込んでくる可能性まで忘れてしまったのはアレだが。

 

 さすがに侍や巫女まで色々と知らないのは管理ガバガバ過ぎるって? そりゃ神霊側が本気で隠遁したら人間には感知なんてムリだから仕方ない。

 だからこそ主人公である真白だって彼方に取り憑いている冥界童女の姿が見えていないのだ。たぶん視認できたとしても面白そうだからと黙っていそうだが。

 

 

 秩序を維持するためとはいえ、仕事はしても感謝はされず。そんな毎日を過ごしていた黄泉戦と魂揺蛍にとっては久し振りの来客である。

 彼方のステータスの低さから姿を見せることも会話を楽しむこともできないが、自分たちの存在を知る者が丁寧に神域を掃除してくれるだけでも嬉しいものだ。

 

 

『坊主の独り言によれば、ゲームでは黄龍のジジイが巫女を俺のところに連れてくるって流れらしいが……あのジジイ、面白半分どころか面白さだけで坊主を案内役に仕立てるつもりみたいだナ? ったく、そこのメスガキといいジジイといい、転生者とはいえひとりの人間だってコトわかってンのかねェ?』

 

『も、も〜』

 

『そうだな、坊主が信仰心を持ち込んでくれたおかげで現世との繋がりがちぃっとばかしだが強化されたことだし……それならヨ? 祈りを捧げられちまったんなら、神霊としては少しぐれェは加護ってヤツを与えねぇワケにはいかねーよナ?』

 

『もッ!!』

 

『へっへっへ……ッ! アプリじゃ確認できねェだろうが、状況から少しは察して期待するよなァ? 原作知識とやらがあるんだもんなァ? だから安心して鬼を切り、力無き無辜の民を護り、巫女を────いや、それは別にいいか。とにかく、テメェの在り方を貫くがいい』

 

 

 無銘彼方、神霊『黄泉戦』と精霊『魂揺蛍』の加護、獲得であるッ!! 

 

 このタイミングで急にパワーアップイベント、それも窮地に陥るほど強化されるタイプの加護を得るということはつまり……そういうことであるッ!!




冥界童女
『黄泉戦の加護か……。うーん、推し活的にはぁ? どぅるるるるる……じゃんッ! イノセントッ!! まぁ妥当な流れかと』

黄泉戦
『そもそもテメェの加護とかあんまり関係なく坊主は厄介事に首突っ込んでるしナ』
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