未来視持ちの聖女にギャン泣きされた


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作:みょん侍@次章作成中
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第24話


 

「手、おっきくなったなあ」

 

 縁側に先生と一緒に座り、すっかり暗くなった空を見上げていた。

 俺の膝の間に収まるように先生は座り、俺の手と自分の手を重ねてくすくすと笑っていた。

 

「もう何年も経ってますから」

「私は全然成長してないのに」

「俺は嬉しかったですよ、先生が変わってなくて」

「なんだとー!」

 

 先生は頬を膨らませた――かと思えば、すぐに寂しげな笑みを浮かべる。

 俺の目を見つめながら、何かを口にしようとして、かぶりを振って、しばらくしてから再び口を開いた。

 

「……なあ、その先生って呼び方、やめにしないか」

「いやです」

「はやいな」

 

 先生に助けられた恩があるからというのもある。

 尊敬している相手には敬語を使いたいと思うし、先生の場合、今更ため口を聞くというのもな。

 

「私は」

 

 その返答が不満だったのか、困ったような笑みを浮かべてから、

 

「私はな、この村の異常について気づいてたんだ」

 

 空を見ながら、俺の身体に体重を預けてくる。

 先の戦闘の迫力からは考えられないような軽さだった。温かな体温が全身に伝わってくる。

 

「私が王都に移ってから、しばらくは近所のお婆さんにお家の管理をお願いしてたんだ。でもその方がね、少し前に亡くなってしまって。私も騎士団を退団しようと考えていたから、思い切って帰ることにしたんだよ」

「それは、最近の話ですか?」

「ほんの、2、3週間前の話かな」

 

 俺とリリウムがこの村に着く少し前だ。

 

「久々の帰省とは言っても、不安は尽きなくてね。この村に歓迎されるのか、って悩みが大きかった」

「……なぜですか? 先生はこの村に馴染んでいるように見えましたし、村の人たちとの仲もそれほど悪いわけじゃなさそうでしたけど」

「あはは、まあ、そうだな。昔は……この村を出る前は、アルと一緒に私も随分可愛がられたよ」

 

 でもね、と声のトーンが少し落ちて、

 

「私はブランチリバーの出として多くの功績を上げてきた。騎士団に入団し、近衛騎士にまで成り、色々な人から羨望の眼差しを向けられてきたんだ」

「そうでしたね。騎士団の人たちも、先生にだけは頭が上がってなかったし、時折明らかに偉そうな人が会いに来てたりもしてましたもんね」

「何人かは生意気な奴がいたけどなー?」

 

 からかうような声色。

 そうだった。俺も問題児筆頭だったが、俺とつるんでいつも怒られてた奴もいたなあ。

 今更ながら「ごめんなさい」と謝ると、「冗談だよ」と言いながら先生は笑ってくれた。

 

「……良いことばかりじゃないんだよ。私はブランチリバーの人たちにとっても羨望の的になって、この村の若者たちの憧れになってしまった」

「……ああ、なるほど」

 

 宿屋の部屋で見つけた手帳を思い出す。

 カレン先生に憧れて騎士団に入り、近衛騎士を目指すと、そう書かれていた。

 

「そうして、戦争に参加させられてしまった」

 

 もちろん、彼らが入団した時には戦争はまだ始まってなかった。

 ホワイトクラウン騎士団は、平時は治安維持や犯罪の摘発などを行う。警察みたいなもんだな。

 犯人の確保などの際も、多少の衝突は起こるものの、命を奪うような真似は基本的にしない。

 安全に確保する技術なんかを教えられていたのを、訓練場の端から見ていた覚えがある。

 反乱みたいな大きな事件はそうそう起きないし、普段から血が流れるような職業ではないのだ。

 

 ……だけど、戦争が始まってしまえば。

 騎士団は兵となり、国の命で戦いに行かされる。

 

「私は怖かったんだ。お前のせいだって、言われるんじゃないかって」

 

 それはない、と言い切ることはできなかった。

 いくら戦争は国が起こしたものだとは言っても、国に対して怒りをぶつけられるかと言えばまた別の話だ。

 行き場のない怒りが、理不尽にも個人に向くことだってある。

 

「でも……もう、楽になりたい気持ちもあった。私は、ロータス、お前が戦争に行ってしまうのを止められなかったあの日から、ずっと誰かに断罪されたかったんだ」

「……」

「誰も私を責めなくてさ。私の教え子たちも無謀な戦争に参加させられて、それで死んじゃって……なのに、遺族の方たちはあなたのおかげで勇敢に戦ってくれたんです、なんて言ってきて」

 

 先生は悪くない。

 その遺族の方も、悪気あっての発言ではないんだろう。

 でも、当の本人にとってはそうではなかった。

 

「私は私を赦したくなかった。……だからと言って、自分から罰を下す勇気も無かった」

 

 故に、誰でもいいから裁いてくれと願った。

 

「そうしてブランチリバーまでやってきて、あの結界魔法に気づいた。私は普段から精神干渉に対する防護魔法を使っているから、その時はどうにか魔法にかけられずに済んでね」

 

 それで村までやってきたときに、彼らが幻覚を見ていることを理解した。

 さらに言えば、何を見ているのかを。

 

「優しい世界だと思った。ここでなら、またお前のことを想えるんだと、分かったんだよ」

「それで――」

「再び境界まで戻ってね。注意喚起の看板を立てて、私は……防護魔法を解いて、自分から魔法にかかったんだ」

 

 ……そうか。

 例の不可思議な看板は先生のものだったのか。

 

「私は、戦いが無ければ……夢に逃げ込むような弱い女なんだよ」

 

 先生が視線を落とし、黙り込む。

 だから、もう、先生とは呼ばないでくれ、と言うかのように。

 確かに、先生の弱さではあるんだろう。異常を知らせず、自分から魔法にかかるなんて迂闊な真似は、かつての先生なら絶対にしなかった行為だ。

 

「先生は先生ですよ」

 

 それがどうした。

 弱さなんて誰だってある。

 

「俺は、先生が強いからだとか、功績があるからとかではなく、もっと別の理由で先生と呼んでいるんです」

 

 それが先生が先生であるか否かには全く関係ない。

 俺の想いは、あの頃から何一つ変わらないままなんだから。

 

「……それは?」

「時間です」

 

 ぴくりと、先生の小さな肩が反応した。

 

「俺は見てきたんですよ、先生が俺のためにいつも頑張っていてくれたこと」

 

 最初の1年は、俺も抑圧から解放されたのもあって大分フリーダムに生きていたから、先生を振り回してしまったもんだ。

 そんな俺を叱りつけるでもなく、分かりあうために先生は子供のことについて勉強していた。

 接し方も考えて、あくまで寄り添ってくれていて。

 俺の将来のことまで考えてくれていた。

 

「先生の寝る時間が遅いのだって最初から気づいてました。子供のいる友達に子育てのコツを聞くために手紙を書いてたのだって知ってます」

 

 確かに先生は凄い人だ。

 このホワイトクラウンの歴史上でも、上から数えた方が早いくらいの英傑なのは間違いない。

 でもそれだけじゃ人は尊敬なんてしてくれない。

 騎士団の人たちが素直に言うことを聞いたり、お偉いさんが会いに来るのは、彼女の人柄に惹かれているからだろう。

 

「我がままで生意気なガキでしたけど、先生はそんな俺を受け入れてくれて、愛してくれて」

 

 ……奴隷だった頃、俺は全然平気だと思っていた。

 飯はマズいし、部屋は汚い、陽の光を浴びることなんてほとんど無かったし、毎日戦わされるのだって子供の身からすればしんどかった。

 でもこんなもの余裕だし? 俺中身大人だから逆に欺いちゃうし? なんて思いながら生活していたんだ。

 

 あの生活から脱して、先生の温かみに触れて。

 奴隷だった頃の俺が、どこかおかしくなっていたことに気づいたんだ。

 俺は間違いなく壊れていた。

 どうにか繋ぎとめることができたのは、先生のおかげなんだ。

 

「そんな先生と過ごした時間があったからこそ、俺は先生を尊敬するに至ったんです」

 

 ならば、カレン先生は俺にとって――

 

「そして、過去はもう変えられない。なら、先生は俺にとって、未来永劫ずっと先生のままです」

 

 ああ、と思い出して。

 

「言うのが遅くなっちゃいましたけど、あのぬいぐるみ、本当に嬉しかったです。ありがとうございました、先生」

 

 毎晩毎晩、遅くまで、苦労しながら作ってくれたぬいぐるみ。

 あれを見てから、俺は先生をずっと大切にしようと誓ったんだ。

 

「……ああ、もう」

 

 先生が手で顔を覆う。

 肩が震えているのが分かった。

 

「今日は泣いてばっかだなあ、私」

 

 先生の身体を後ろから抱きしめる。

 

「そういう先生も好きですよ」

「……こら、誰に教わった口説き文句だ、馬鹿者……っ」

 

 静かな夜に嗚咽が響く。

 俺もまた空を見上げて、目を閉じた。

 

 好き、か。

 好きなのは間違いない。

 大切に思ってるのも、間違いない。

 

 ただ、その先にある感情が。

 またいつものように、霧に覆われて見えなくなった。

 

「本当に、ありがとうございました、先生――」

 

 それでも、力強く抱きしめ続けた。昔の俺だったら、間違いなくそうしただろうから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……お前にアルのことを話さなかったのは、その、嫉妬してしまうんじゃないかって思ってな。境遇が境遇だったから、繊細に扱わないとって気を付けてたんだ」

 

 家の中に戻り、今でくつろぐ。

 コーヒーを飲みながら、リリウムの帰りを待っていた。

 

「良く敵前逃亡なんかが許されましたね? 大抵騎士団で処罰されたような覚えなんですが」

「ああ、自分で自分の腕をへし折ってな、傷病者として内地に逃げ帰ってきて、そのまま退団した」

「たくましすぎる……」

 

 今すぐにでも幻覚を見ていた村の人たちに会いに行くべきだろうか、と先生には聞かれた。

 自分のことを恨んでいるんじゃないかって、まだ不安があるんだろう。

 だけど、とりあえず今日のところは家にいようという結論になった。

 混乱の中顔を出しに行ったとしても、良い反応が返ってくるとは思えないからな。

 

 そう考えると、リリウムには損な役回りをさせてしまったか。

 一人で行かせたのは失敗だったかもしれない。

 

「……今思い出しても恥ずかしいなあ。あの幻覚じゃ、アルはただ音信不通の弟で……弟に先を越されて悔しい思いをしたのが、あれに反映されていたんだろうか。ある日突然、手紙で知らされたんだもんなあ、”結婚したぜ、子供出来たぜ、元気だぜ”って」

 

 精神干渉を受けていた時の記憶はばっちり残っているらしい。

 俺のことは、認識だけじゃなく実際にアルセアに見えていたのかと聞いたが、全然俺のまま見えていたみたいだ。

 思い返して悶絶していた。

 大分気が緩んでたからな……。

 

 逆に、俺は大丈夫だったのだろうか。

 先生に失礼な態度とか取ってないよな?

 見られちゃいけないものとかも無かったはずだし。

 

「ん……そうだ、山の中歩いてきたから、ちょっと臭うな。先生、風呂の準備って――」

 

 風呂。

 風呂?

 あれ、何か――あ。

 

「――」

 

 先生の顔が一瞬で真っ赤になった。

 そうだ。俺は先生と一緒に風呂に入ったんだ。

 いや、でも、俺は先生にとって弟みたいなもの。

 弟、みたいな……。

 

「ロータス」

 

 指先をすり合わせて、もじもじしながら、先生が俺を見た。

 瞳がうるんで、頬は上気して――俺にとっては、初めて見るような表情だった。

 

「お、お前が嫌じゃないなら……えっと、その、ま、また! また昔みたいに、一緒にお風呂、入らないか……?」

 

 昔はいつものように見ていた、あの凛々しい表情はかけらもなく。

 年端もいかない少女を思わせるような、へにゃりとした笑みを浮かべたままの先生の誘いに。

 

「っす」

 

 断れるわけが無かった。

 俺の理性は貧弱です。

 

「あ、ああ! 勘違いはするなよ!? む、昔みたいに、だから! 姉弟というか、そんな感じの付き合いとしてだから、な!」

 

 その”な!”にどれだけの意味が込められているのかは、残念ながら汲み取ることは出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 またまた、風呂場。

 扉一枚隔てた先から衣擦れの音が聞こえる。かつての童心が蘇り、チャイルドロータスが「覗いちゃえよ~」とか甘言をほざいてきやがる。

 クソガキすぎるな、あまりにも……。

 何、動じることは無い。

 先生の裸を見たのは初めてじゃないし、先生だって、俺の裸なんて見飽きているくらいだろう。

 よし。

 冷静さが戻ってきたな。

 風呂場を出よう。

 

「――う、うわっ、ちょ、まだ着替えてる途中だぞ、馬鹿者!」

 

 どこが冷静なんですかね。

 まだ身体を洗ってすらいないのに思わず上がろうとしてしまった。

 パンツに手をかけた姿勢のまま、先生に怒られる。

 桃色だった。

 違う。

 違うんだ。

 

 ……桃色かぁ。

 

「そ、そういうところは昔のまんまなんだな――ひゃ!?」

 

 思わず脱衣所へつながる扉をガン見してしまっていたので、入ってきた先生が驚いたように身体を隠した。

 傷一つない綺麗な身体だ。引き締まった身体だが、それなりに肉付きもある。過度に筋肉がついているというわけではなく、どこからあの槍の勢いが生まれているのか謎でしかなかった。

 ただこうして見てみると分かる事だが、下半身の方ががっしりしている。

 彼女は足さばきで相手を動かす戦い方をするからな、あれが秘訣――

 

「見すぎだぞ」

 

 頭にチョップをいただいた。

 諦めたように嘆息した先生は、多少恥ずかしさを感じているみたいだったが、隠していた手を下ろす。

 生まれたままの姿の先生が、無防備に目の前に立っていた。

 

「もう大人になったっていうのに、お前は……もう。こんなつまらない身体がまだ好きってわけじゃあないだろう?」

 

「しまった、せめてタオルくらいは巻いてくるべきだったか?」とか言いながら、先生は俺の前にあった石鹸を手に取る。

 

「女の人の反応を楽しんでるんだろうけど、いいか? お前はもう大人の男なんだから、異性の扱い方は――」

「は?」

「え?」

 

 俺は頭を抱えた。

 ああ、そうだ。先生は抱え込むタイプで、思い悩みやすい。

 その理由の一つには、先生の自己評価の低さもあるんだろう。

 

「先生」

「あっ、えっ、うん。なんだ?」

 

 確かに俺は、大切に思う以上の感情がわからない。

 昔はそうでもなかったから、たぶん戦争が原因なんだろうけど、ともかくとして。

 それはそれで、興奮はするんだ、それなりに。

 

「俺は、その、ですね」

「……は、はい」

「正直、先生のこと、そういう目で見てます」

 

 先生の無防備さに思わず俺の理性が戻ってきた。

 これは良くない。あまりに良くない。男の子の大切な何かが破壊される距離感だ。

 

「そ、そういう目、って?」

「エロい目です」

「――」

 

 真剣な目で先生の目を見つめる。

 俺の膝が恥ずかしさでガクガク震えているのを勘付かれないように、ガン見した。

 俺の言葉の意味を理解した先生の顔は、見る見るうちに紅色に染まっていき、

 

「……ど、どういうところ、が?」

「え?」

 

 質疑応答が存在するんですか?

 

「あ、ああいや! なんでも、なんでもない! ははは、この、こら! 大人をからかうなよ、まったく!」

 

 そんな風に笑って、先生は俺の背中の方へと移動する。

 冗談のつもりで言ったわけじゃないんだけどな。

 そう訴えるつもりで、振り返ると、

 

「っ!」

 

 先生は。

 隠したんだ。

 身体を。

 俺の視線に反応して。

 

「……」

 

 チャイルドロータスは消し飛んだ。

 奴には刺激が強すぎる光景だったんだ。

 ああ、クソ。

 こっちの方がマズいじゃないか!

 

「せ、背中、流すな……?」

「お、お願いします」

 

 つ、続けるんですか。

 まずお湯で流してもらいながら、思う。

 こういうところも昔のままで、っていうのは難しいよなあ。

 

「……すごい傷だな」

「ん、やっぱり気になっちゃいますか」

「なっちゃうよ」

 

 そこで、先生が俺の背中に触れた。

 小さいけれど、少し硬い手。槍を握り続けてきたから皮が厚くなっているんだ。

 

「ずっと戦ってきたんだもんなあ」

「歴戦のボディです」

「なんだそれ」

 

 冗談めかして言う。

 彼女の手がつつと滑っていき、俺の左肩で止まった。

 

「こっちの腕だけ綺麗なのは、何か理由があるのか?」

「あー、えっと」

 

 言うべきか一瞬迷って、

 

「竜王山での戦いで左腕を砕かれまして」

「っ!」

 

 俺は包み隠さず先生に言うことにした。

 

「回復魔法を使ってもらったんで、綺麗なままの腕になったんです。ほら、脇腹だって綺麗でしょう? ここもまあ、ぐあっと」

「傷が無いのが、逆に傷跡っていうのも、おかしな話だよ……しかし、そうか、竜王山か。やっぱりお前が『赤錆』だったんだな」

「あ、そうか……先生には言ってなかったですっけね」

「薄々勘づいてはいたよ。赤錆は、エルフの国でのお前と同じ戦い方をしていたからな」

 

『赤錆』がロータスであることを知っているのは少数だ。

 戦時中の俺は甲冑を身に纏っていて、兜を外すことはほとんど無かった。

 本当に気を許せる奴だけには、顔を見せろとせがまれるのもあるが、仕方なく兜を外して素顔を晒したりもする。

 

 もう一度、先生は俺の傷を撫でた。

 竜王山のことを知っているのなら、各国での赤錆の活躍についても勿論知っているのだろう。

 

 話を変えるために、記憶の中から話題を探す。

 

「ふふふ、先生、実はとんでもない土産話があるんですけど、聞きます?」

「ん、な、なんだ、気になる! 聞くぞ、聞く!」

 

 実は俺、今の竜王と――と、言いかけて。

 

「先生」

 

 一つ、思いつく。

 

「先生って、お酒、飲めますか?」

「ああ、飲めるが……それがどうした?」

 

 そうだ。

 話したいことはたくさんある。

 今日は色々あったけど、心からの再会を果たすことができた。

 なら、然るべき場でそれを祝いつつ、土産話を話すことにしたい。

 それもまた、俺がしたいことだったから。

 

「しましょう。飲み会!」

 

 実は、リリウムの持っていた荷物の中には酒も入っている。

 旅の途中に酒盛りできたらなあとか思って買ってしまったものだ。

 俺とリリウムと先生。3人で飲むなら量は十分って程度には買い込んだからな。

 

 俺は酔っぱらった先生というのを見たことが無い。

 俺を育てている時は酒を自粛したのかもしれない。

 

「……いいな。成長したお前と一緒に酒を飲むの、ひそかな夢だったんだよ」

 

 よし!

 そうと決まればさっさと身体を綺麗にして、準備をしなきゃな!

 さっさと、身体を、綺麗にして……。

 

「……」

「……」

 

 ふと我に返り、恥ずかしさが蘇る。

 気まずい雰囲気のまま、俺たちは互いの身体を綺麗にしあうのだった。

 

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