夢を見た。
あの日の夢、叔父さんがどこか遠くに行って、二度と帰ってこなかった。そして、お義母さんと一緒にオラリオに来た時の記憶。
アストレア様にあって、姉たちに出会い今の生活になるまでの記憶。そして、そこで記憶は終わり。現実に戻される。
「……夢。」
夢であって夢では無い。それにどうしようもなく悲しくなってくる。
「どうかしたか?ベル」
「……お義母さん。」
そんなことを考えていると、ベルの横にいた義母のアルフィアが話しかけてくる。
「今日、また、悪夢を見たの。」
「そうか……。」
あの日から悪夢を見るようになった。スキルになるじゃねと思うほど、苦しくなる。悪夢はベルに牙を剥く。
「顔を洗え。悪夢なら、また後で聞いてやる。今日は
「うん!」
「だったら早く行ってやれ。いっぱい見て回りたいのだろう?」
「……うん!わかった!」
そう言って、ベルは一階に降りていく。
「エレボス、何をしたんだ。」
そんな、呟きはベルには聞こえなかった。
┉┉┉┉┉┉┉┉
「……ま、まよった。」
今ベルは朝食を食べてアリーゼと街を回ろうとしたところで少し目を離した隙にアリーゼが見えなくなっていた。
「えっ、と……どうしよう。」
ベルはアリーゼ達と違って巡回はあまりしていないので地形があまり把握していないのだ。
「……あるいてみよ…」
だから、ここで待つよりは知り合いを見つけることにしようと思い歩くことにした。
「……わかんない…」
さらに変なところに迷い込んでしまった。恐らくは路地裏辺りだろう。
「ねぇ、きみ」
そんな時、後ろから声がした。綺麗で幼い声、それが聞こえベルは後ろを向く。すると
「迷子?」
「えっ……と…?」
すると、そこには自分と同じくらいの少女がいた。まるで人形のような容姿、金髪が綺麗で腰くらいまであるシルクの髪、髪と同じ色の瞳がベルを見つめている。それはまさに人形姫というのが正しいというような。
「迷子…だよね?」
「……うん。」
「どうして、ここにいるの?」
「あるいてたら……ここに。」
拙い言葉使い、幼い子供同士だからか、そうなっていた。
「そうなんだ。」
「…うん、君こそなんで?」
「なんとなく?」
無感情と言うしかないこの子、全く何を考えているのかが分からない。
「迷子……なら、私といっしょくる?」
「……えっ。」
「い、や……?」
あまつさえ、その少女はそんな提案をしてきた。勿論、ベルは戸惑った。だが、少女は首を傾げてそう聞いてくる。
「……いく。」
「うん。……あ、」
「ど、どうしたの?」
「…名前、私、アイズ」
そして今更、名前を言った。それで、僕も名前を言ってないことを思い出した。
「アイズさん……?僕、ベル。よろしくお願いします……。」
「ベル、よろしく。」
それが、僕達の初めての出会いだった。
「じゃあ、いこ。」
「はい!」
そうして、僕はアイズさんと一緒に街を歩いていく。
「そういえば、どこに行くんですか?」
「ん……
「えっ……どこの…?」
「私の……【ロキ・ファミリア】の。」
それを聞いて僕はえっ?ってなった。つまり、この子は都市最強派閥の【ロキ・ファミリア】の団員なのだろう。
「アイズさんって、【ロキ・ファミリア】なんですか…?」
「うん、そう。」
淡々と2人は会話する。
「……ねぇ、ベル。」
「!は、はい!?」
突然名前を呼ばれたことにびっくりしながらもベルは声を出した。
「ベルって、強いね。」
「っえ……?」
いきなり言われた言葉に困惑するベル。当たり前だ、ベルは
「な、なんで?」
「強いって言うか……よく分からないけど、そう思った。」
「そうなんですか……?」
「うん、あ、着いたよ。」
そんなことを話しているうちに着いたらしい。都市最強と謳われる【ロキ・ファミリア】の
「って!今思ったんですけど、なんで、【ロキ・ファミリア】まで来てるんですか?僕。」
当然の疑問、普通はギルドやベルの本拠に連れていくはずなのに、連れてこられたのは《黄昏の館》。
「あ、そうだね。……ならさ、少しやりたいことあるの、付き合ってくれる?」
そういって
───────────
少し前の《星屑の庭》
「……今頃楽しんでいるか、ベルは。」
ソファーに座り、読んでいた本を閉じてそうつぶやくアルフィア。勿論心配っちゃ心配だ。けれど、アリーゼがついていると思い、楽しそうにしている姿を思い浮かべる。
「私は行けなかったが……まあ、いいだろう。今度、埋め合わせをしようか。」
そんなことを考えながら非番であるマリューの入れてくれた紅茶を飲む、アルフィア。
「…………」
そしてなにか考え込むように、ベルのステイタスを見る。そしてため息を着く。
ベル・クラネル
Lv1
力:I 2
耐久:I 10
器用:I 4
敏捷:I 15
魔力:I 7
■魔法
【トゥルエノ・ユスティーツ】
□詠唱式【
□付与魔法
□雷属性
【】
【】
■スキル
【
□早熟する。
□思いが続く限り効果継続
□思いの丈によって効果上昇
【
□
□発動時、一時的にステイタスの向上
□発動時、『俊敏』と『魔力』に強補正
□広範囲に一定確率で
□成功確率は『魔力』のアビリティに依存する
□詠唱式【敵は出た】【我の道を阻む者、正義の断罪を今ここに】【
「正義……」
多分あの子なりに考えているのは分かる。けれどやはり怖い、いつか、ベルが正義を見失ったら、どうなるのかが分からない。
「……あの子は多分、無意識に正義を理解している。それが分かるから、怖い。」
正義を見失ったら、私が死んだら、彼奴らが死んだらどうなってしまうのだろう。今のように優しくあれるだろうか?無理だ。
「まあ、それは彼奴らになんとかしてもらうがな」
仮にもあの子を貰うとか言っているのだ。それくらいは当たり前だ。そんなことを考えていると
「ベル居る!?」
ドアが勢いよく開き、
「【
「喧しいぞ……ところで、ベルはどうした?」
そういうと、アリーゼの肩がびくっと跳ね上がった。そしてアルフィアはそんなアリーゼに怪訝な顔をする。
「……えっ……と……は…ぐれました。」
「【祝福の禍根、生誕の呪い、半身喰らいし我が身の原罪】」
「待って待って待って!?」
アルフィアはアリーゼの言葉を聞いて魔法を発動させようとした。さすがにまずいと思ったのかアリーゼは全力で止める。
「……はぁ、話せ、事の次第では
そんなことを言いながら詠唱をやめてアリーゼの話を聞く、詠唱を何時でも始めれるようにしながら。
「えっとぉ〜?……街でね?すこーし、問題があってぇ、でもね?すぐ解決したのよ?」
ムカつく喋り方をするアリーゼにイライラしながら必死に耐えて聞くアルフィア。
「……で、でも、目を離した隙にメインストーリーだったからか、いなくなってて……それで、はぐれました。」
正座をして指をちょんちょんしながら言うアリーゼに絶対零度の目を向けているアルフィア。そして同時に思った、こいつらに任せていいのか?と。
「……仕方ない…探しに行くぞ。」
「えっ?怒らないの?」
「今怒っても無意味だ。後で覚えていろ」
そういうとアリーゼの顔から色素が無くなった。そして二人一緒に出ていく。
──────────
ベル視点
「…………え?」
「早く構えて?戦お」
【ロキ・ファミリア】の本拠に入り、
「……?は・や・く構えて?」
「い、いやでも!?」
「リヴェリアにもいいって言われたもん。」
そう言われて剣を早く構えろと促されるがおかしい、これが用事なんて聞いてない
「やろうよ?」
「で、でも!?」
「お願い……」
「うぐっ!?」
年上とはいえ、歳の近い女の子に上目遣いでお願いされたらベルは弱い。
「……やろっか。」
「うん。」
ベルがそう言うとアイズは顔には出さないが少し嬉しそうにする。
「じゃあ、本気で。」
そう言うと同時にアイズは地面を蹴ってベルに急接近をする。
「(はっや!?)」
「フンっ!」
ベルは避けようとするがアイズの剣がそれを許さない。それを借りた剣でいなす。だが、level1じゃどうとなる訳でも無く。吹き飛ばされる。
「っぐ!!?」
「【
そしてやられると思った時、ベルは防衛本能が働いたのかとある行動に打って出た。
「【
魔法を使い、体に纏わせて威力を殺す。
「へぇ、私と似た魔法……すごいね。」
するとアイズはバックステップで距離を取り剣を構え直す。そしてベルの魔法を観察する。だが、アイズはまだ全然余裕。
「じゃあ、これ躱せる?」
少し観察をして剣を前に突き出して突撃してくる。躱そうとした時、剣先が軌道を変えベルに牙を剥く。
「ガハッ!?ケホッゲホッ!」
吹き飛ばされ壁にぶつかり咳き込むベル。
「終わり?」
短くそう聞いてきたアイズ。そして、それと同時にベルはムカついた。
「【
超短文詠唱の魔法を発動させる。けれど、アイズの瞳には雷は出ない。首を上げていると、ベルが少しニヤリと笑った。
「!?」
そして、上空に影ができたのが分かり、上を見上げる。すると、そこには。
「千?万?……分からない。」
そう雷の矢が幾千もあり、全てアイズに向いていた。それはまるで、鳥のよう、じっくり相手を見て狩りをする。
「【
そして、それは振り下ろされる。
「っ!!」
アイズは必死に避ける。levelに見合わない魔法はその見ての通り必殺。
「ぐぁぁぁ!!!?」
全部を躱し切れるわけがなく、アイズは当たってしまう、その時電撃が体を走り激痛が走る。けれど、levelの差のせいなのか痛みが終わると体に目立った傷はなかった。
「すごい……【
それを言うと同時に反撃開始。
「はぁ!!」
「っ、やぁ!」
剣がぶつかり合う、アルフィアを義母に持つせいかベルの剣技は凄かった。
「ふっ!」
お互いの剣を躱し、隙を見て攻撃する。力なら、絶対に勝ち目はない。ただ、アイズはさっきの魔法のせいで体があまり動かせなく普段より格段に遅くなっている。
「ぐぁ!?」
隙を見たベルの攻撃を見切ったアイズがベルの剣をかいくぐりベルのお腹へと強烈な一打。そして追い打ちをかけようとアイズが剣を振りおろそうとした時。
「何をやっている!アイズ!!」
「!!」
そこには、鬼の形相をしたリヴェリアとアルフィア、そして二人にビビっているがアイズを少し睨んでいるアリーゼ。
「何をやっている!!」
「……訓練。」
「私はなんて言った?」
「……えっと、居ていい?」
「この大馬鹿者!私は館の中で大人しくしていろと言ったのだ!誰も訓練をしていいとはいっていない!!」
「ごめんなさい……」
それを聞いてリヴェリアも少し顔を緩めた、だが、これからお説教には違いないが。
「おい年増エルフ、何許そうとしている?」
それを許さないのがアルフィアだ。
「許そうなんてしていない!」
「していただろう?気持ち悪く顔を緩めて、ああ、歳をとると涙腺が緩くなるのと同じか?」
「なんだと!?アルフィアー!!」
「これだから、歳を食っただけのやつはしょっちゅう喚き散らかして敵わん。」
吐き捨てるように言うアルフィアに怒っているリヴェリア、ベルはアリーゼに起き上がらされアイズに謝り倒されている。
「……お、お義母さん。」
「…ベル、大丈夫か?」
アルフィアが聞くと、ベルは小さく頷いた。
「そうか……」
それにアルフィアは安心する。
「お義母さん……!アイズさんのこと、許してあげて欲しいの…!」
「……何故だ?」
「やろうって言った時、僕も頷いちゃったし……それに」
そして、ベルはいう。
「とっても、楽しかったから♪」
その言葉にその顔にその声に全てが怖かった。アルフィアは背中がゾクッとした。
「だから、怒らないで欲しい。」
そういってアルフィアにお願いする、ベル。
「……わかった。なら、もう帰るぞ。」
「うん!ありがとう!」
そういうとベルは怒られてしょげているアイズに近づく
「……ごめんなさい。」
「いいんだよ!また、会おうね!バイバイ!」
「うん、バイバイ……。」
そうして、ベルとアイズは別れた。
「いくぞ。ベル」
「あ、うん!」
そう言ってアルフィアはベルを連れて館を出る。
「ちょ!まって!?」
その後をアリーゼが追いかける。
「ベル、楽しかったか?」
「うん!アイズさんとね歩きながらお話してた時もとっても楽しかったんだよ!」
「良かったな。」
ベルの笑顔にアルフィアは頬を緩ませ、ベルの頭を優しく撫でる。
「えへへ。お義母さんだーいすき!」
不意にベルがそう言った。そして、アルフィアとアリーゼがというより、見ていた人々が倒れた。
「っえ!?」
まじ尊いと全員が心をひとつにし倒れた。
「えっと……どうしよう。」
そうして、周りのほとんどが倒れた元凶であるベルは困った顔をした。そして数分して、
とんでもない珍事件の発生である。そして、この事件は翌日の一面トップとなっていた。
✕ ✕ ✕
【星屑の庭】にて
「アルフィア、ベルは?」
「もう寝た、随分楽しかったんだろうな。」
「そう。」
【アストレア・ファミリア】本拠にて、そんな会話をする二人。話題は主にベルの事だ。
「でも、いい経験になったようね。」
そう微笑むアストレア。そしてアストレアは端で正座をしているアリーゼを見ないフリしながらアルフィアに聞く。
「冒険者にはならせないのかしら?」
「前にも言っただろう?まだ、早い。」
「そうかしら?level3の【剣姫】に一矢報いたなら十分だと思うけど?」
アストレアはアルフィアにそう言う。当然だ、levelが一個違うと絶対に勝てないとされるこの世界でlevelが2つ上の相手に一矢報いるというのは奇跡に近い。
「まあ、それは認める。けれど、私はあの子に剣を取って欲しくないんだ。」
でも、とアルフィアは言葉を続ける。
「あの子は英雄になると言った。いや言わせた。私達は最低なんだ。」
アルフィアは語る。
「あのスキルも、私のせいみたいなものだ。子供にとんでもないものを背負わせてしまった。」
『僕が!【最後の英雄】になる!』と、ベルは宣言した。アルフィアの前で。
「ベルはいつかこの選択を呪うかもしれない。」
それはあの日から感じている懸念。
「背負ったものの大きさにきづいて、けれどもう引けない場所にいて、絶望する未来が来るかもしれない。」
それは遠くない未来かもしれない。
「でも、あの子がそういったなら、応援しましょ?」
アルフィアの懸念にアストレアはそういった。
「絶望するというのなら、私たちが助けてあげましょう?それがあの子を思う、最善だと思うの。」
だって、あの子は見かけによらず頑固だから。と、アストレアはいう。
「……そうだな。」
そして、アルフィアが微笑む。
「……アルフィア。」
「…なんだ?」
アルフィアの元にさっきまで輝夜達にこってり絞られて正座させられていたアリーゼが近づいてきた。
「あの子の魔法……本当に付与魔法?」
そう行ってきた。聞いていた輝夜達もアリーゼの発言に驚いている。
「何言ってんだよアリーゼ。」
「私みたの、【ロキ・ファミリア】の本拠で。」
ライラがそう言った。何を言ってるんだ?と、それは見たも同意見であった。それでも、アリーゼは言葉を続ける。
「あの子の魔法、【
「……」
「どうして?付与魔法は私も持ってるけど、あんなことできないわよ?」
だって、とアリーゼはことばを続ける。
「空に万もの雷の矢なんて、出来るわけないもの」
「「「「!?」」」」
アリーゼの言葉に、全員が驚きアルフィアが答える。そして驚愕する。
「前に、1度だけ魔法を使わせた。その時、ベルは自分の魔法のことを、こういった。」
アルフィアの言葉に全員が息を飲む。
「付与魔法であって、付与魔法ではないと。」
「……どういうことだ?」
出された答えに疑問を抱く中、輝夜がその真意をアルフィアに聞く。
「なんでもできる、と。例えば、さっき言ったようにベルがイメージ出来るものなら雷で再現は可能だ。」
つまり、ベルの思考が回れば回るほど、雷は形を変えていき、より強いものになると。
「イメージは矢だったり、槍だったり、時には鳥、魔物だって可能だ。」
「それって、」
「ベルがイメージしたものが無制限に出せる、所謂チートだな。」
といった。
「強すぎない?」
「それに加え、アリーゼ並の超短文詠唱だろ?」
「チートね!これはチートよ!」
「普通にずるい……!」
「魔法としては最強格ね。」
「う、羨ましくなどない……」
そんな事を口々に言い出す眷属達。
「みんな、明日も早いんじゃないの?」
アストレアが見かねてそういう。
「そうですね!そろそろ寝ないとです!」
アリーゼが代表して言った。そして、そこから報告会も無事に終わり。ちなみにベルは何故か寝ている隙にアリーゼの部屋に運ばれた。