「近づくな!この怪物ッ!!」
「……」
「
長い耳を持つ少年が、一人の男に拒絶されていた。
少年は潔癖で美しい種族であるエルフの少年だ。
しかし、その少年の身なりはお世辞にも良いとは言えないボロ切れ、美しい筈の髪も、くすんで汚れが目立つ。
「……はい、わかりました」
少年は一言、そう言い片手に抱えていた
「──ッたく、気味の悪いガキだ……」
少年は一人、とぼとぼと帰路へついていた。
その後ろ姿は寂しげで、薄汚い服装も相まってより悲壮感にあふれていた。
足取りは重く、その目には生気が無い。
少年が歩く姿を見て、周りのエルフ達はひそひそと話を始めた。
「おい、見ろあいつ……」
「ああ、あの怪物の子供だろう……」
「正直に言って、私たちの森に入ってきて欲しく無いわよね…森の
少年は自身にまとわりつく言葉を取り払う様に走り出した。
走った所でなにか変わる訳でもない。
ただ、走り出さずにはいられなかった。この場から逃げずにはいられなかった。
そんな少年の姿に、エルフ達はただただ侮蔑の視線を向けていた。
────アルヴの王森、その端の森林。
王森と比べると湿気が多く、野生のモンスターも数多く棲息する危険な区域。
危険なモンスター達がアルヴの王森に侵入する前に狩り尽くし、そのドロップアイテムを献上する。────それが自身の仕事。
「ぐぅ!?、このっ!」
「ギャァァ!───グァ!?」
一匹の竜のようなモンスターが居る。
翼を持たない、翼竜というより、地竜というような感じ。
体色は灰色で、鋭い牙を持つモンスター、その鋭い牙が自身の腕を食い千切る。
「!?ぐぅぅあ゛ぁぁ───!」
思わず泣き叫びたくなるほどの激しい痛み。────やはり、
「お前も、少しは喰らってけよ…!」
「グァァ゛!?ギャァァァ゛!!」
「あっ────あ、あぁ……」
地竜の目に向けて放った一撃、それは確かに効果はあった。
左目の視力は奪えたし、それと同時に顔の肉も斬り裂く事が出来た。
────だが、失敗だった。
顔に近づきすぎた、地竜の
飛びそうな意識の中、それでも必死に地竜の方に目を向ければ、────その大きな脚が、すぐ目の前にまで迫っていた。
ぐちゃり
「グゥゥゥル……グッ?」
「モンスターでも、驚くよね…
「何度死んだって、絶対にお前は倒す────」
「グゥゥゥ……ギガァァァ────!!」
闘いは、まだ始まったばかりだ。
直後、物凄い勢いで駆け出して来る地竜。
身体から新しい
「ギィ!?ガァァ?」
今まで見たことのない人間の変化に面食らう地竜。
「────ふっ!」
増やした腕からも骨の刃を伸ばし、四方八方から斬りかかる。
全ての刃を避けきれずに身体を斬りつけられる地竜。
「ギィ!ガァ!ゴォォ゛ォ゛──グゥゥァァア゛───」
「────しゃあ!」
「!?────ッ───ッッ!!」
腕の刃に苦戦している間に懐に滑り込み、地竜のちょうど喉元を斬り裂く。
途端に噴き出す血しぶき。
力を失い、その場に倒れる地竜。
「これでもう、
「ッッ────ッ!?────!」
動けなくなった地竜の頭目掛けて、剣を振り上げる。
「ッ────!!ッッ───!!」
思いっきり剣を振り下げ、その地竜にドドメを刺した。
気づいた時には、あたりは暗くなり、日が傾いていた。
「あの地竜…強かった…いてて」
ズキズキと鈍い痛みの残る全身をさすりながら、独り言を呟く。
増やした腕や目にもちゃんと神経が通っている、骨が突きでれば痛いし、再生する際にも痒みと痛みが走る
「…この力に助けられてる……でも…」
ふと自身の両手に目を向け、考えにふける。
思い出すのは、王森のエルフ達。
いつも侮蔑の目を向け、自身をこの仕事を押し付けた者達。
思えば、自身が幼い時からそうだった、いや、その時の方が酷かった。
他のどんな者も持たない、異質な力。
怪物だ、悪魔の子だ、────言葉は違うが自身を排除しようと言う意思のみが一致していた。
頭も、腕も脚も、同じエルフ達に潰されたんだった。
「ぎゃああああああ!?」
苦しい、痛い、やめて、ごめんなさい、何度心の中でそう思ったって、やめてくれなかった。
幾ら、死んでも、死ななかった────死ねなかった。
何をしても死なないと知ったエルフ達はこの森林に僕を捨てた。
「薄汚い
「…ぁ、ぁぁぁ…」
逆らう気など、起きなかった。
ただただ、恐ろしかった、エルフ達が、僕に向けられた圧倒的な悪意────その暴力が。
────そうして、今は森の守護者としての仕事に就いている。
毎日毎日、モンスターを見つけ、狩る。
何匹だろうと、何回死のうと以前よりはマシだと、そう自分に言い聞かせながら。
正直、エルフ達を守ろうとかは考えてもいない、エルフ達も自分のような
ただ恐ろしいから従っている、あの悪意が頭にこびり付いて離れない。
「……?なんだ、あれ」
空に目を向けてみれば、淡い光の柱が立ち昇っている。
場所は森林の大きい池の近く、それほど離れていない。
「……確かめに行ってみよう」
ただ単に好奇心なのか、その場に赴くことにした、────何かに吸い寄せられる様に、池に向かって進んだ。
「お?おおぉ…ここが下界か、草木の匂いに、虫達の鳴き声…なんだか不思議な感覚だ、そう思わない?────ねぇ、エルフ君?」
「気付いて、いたの?…」
「まぁーね、私ってほら、神様だから、並の子供たちよりは優れた感覚とか持ってるからさ」
「あな、たは?」
「……もう気付いてるんじゃないの?神様だよ、かみさま、子供たちの言う、言わば────