【第28回】<補適法第17条解説>:「取消権の発動」の正当性と濫用の境界
前回の第26回では「是正措置命令」(第16条)について取り上げましたが、今回はその“次の段階”である交付決定の取消しに関する【第17条】について解説します。
この条文は、まさに私たちが受けた処分の根拠とされているものです。
ですが、法律上の「取消し」が許されるためには、厳密な要件と手続が求められています。
本記事では、『補助金適正化法解説 全訂新版(増補第2版)』の内容を参照しながら、私たちのケースに照らして考察します。
第17条の概要:「義務違反に対する交付決定の取消し」
補助金適正化法第17条は、ざっくり言えばこうです。
補助事業者が補助金の使い道を間違えたり、交付決定に反する行為をした場合には、交付決定を取り消すことができる。
法的には「授益的行政行為の撤回」と呼ばれ、相手方に責任があるときに限って“交付をなかったこと”にする手続です。
要件1:重大な義務違反があること
条文上の主な取消し理由は以下の3つ:
補助金の他用途使用(つまり流用)
交付決定内容や条件への違反(例:未遂行、目的外使用)
その他法令違反(行政処分違反など)
これらはすべて「補助事業者に責任があるか」が問われるポイントです。
要件2:是正措置によって対応できない場合であること
重要なのはここです。
補助金適正化法の解説書では、「是正措置や命令で対応できるなら取消しは回避すべき」というのが原則とされています。
実際に判例(名古屋高裁など)でも、
「義務違反があるからといって直ちに取消せるものではなく、補助目的の達成可能性を総合的に判断しなければならない」
と明言されています。
私たちのケース:この原則は守られたのか?
私たちは、突然「交付決定取消通知書」を受け取りました。
しかし、その前に「是正措置命令」や「着手命令」は一切ありませんでした。
つまり、改善の機会すら与えられていないまま、いきなり“取消し”という最終手段を受けたのです。
また、通知は中小機構名義ではなく、委託先の「パソナ」から届きました。
これは法的に有効な「行政処分」と言えるのでしょうか?
確定後の取消しにも注意
第17条第3項では、補助金額の確定後であっても取消しができると定められています。
つまり、交付が終わった後でも「実績報告が嘘だった」と判断されれば、遡って取消される可能性があるということです。
ですがその場合、確定判断そのものにミスがあったことを前提に、訂正→取消という慎重な対応が本来必要です。
私たちの事例では、何の訂正もされず、いきなり取消し通知が届いたのです。
適法な取消しか、裁量の濫用か?
補助金の取消しには確かに公益的必要性があります。
しかし、「交付決定を覆す」という重大な処分である以上、法的要件と段階的プロセスを踏む必要があるのです。
解説書では、取消しが認められるための判断基準として、
是正措置の余地がない
相手方に改善意思がない
補助目的の達成が完全に不能
などが挙げられていますが、私たちのケースには当てはまりません。
終わりに:「取消し」は本当に必要だったのか?
補助金適正化法第17条は、「罰するため」ではなく、「行政目的が果たせなくなったとき」に使う手段です。
ですが今、多くの中小企業が説明もなく、一方的に取消処分を受けている現実があります。
果たして、それは法律に則った行政なのでしょうか?


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