【第27回】「補助金取消し」に異議を唱える道ー行政不服審査と本件訴訟の関係
――行政不服審査という選択肢と、私たちの裁判が示す希望
✅ 「補助金はもらえると思ったのに…」から始まる理不尽な物語
採択されたはずの補助金が、突然の交付取消、
差し戻しが何ヶ月も続く、
返還を求められたが説明もない…。
私のもとには、そんな相談が後を絶ちません。
でも、多くの事業者は「もう仕方ない」と諦めてしまう。
本当に、それでいいのでしょうか?
① 行政不服審査に打って出るメリット
「行政不服審査制度」は、行政の処分に対して正式に異議を申し立てる手段です。
裁判と違って費用はかからず、期間も比較的短く、個人や中小企業でも利用しやすい制度です。
▶ 主なメリットは次の3つ:
簡易・迅速:審査請求書1枚から始められ、裁判よりも早く結果が出ることも多い(弁護士・特定行政書士に代理してもらうことも可能)
制度の建前として“公正性”が求められる:審査会(第三者機関)による判断が行われる
記録が残る:異議申立ての「実績」があることで、後続の支援者・当事者も行動しやすくなる
つまりこれは、理不尽な処分に対して“静かに、でも確実に抗議する”方法なのです。
② 当社の裁判が実体審査に進むこととの関連性
私たちが現在行っている中小機構との裁判は、
「補助金交付取消が行政処分に当たるかどうか(=処分性)」が最大の争点です。
そして、裁判所がこのまま行政事件と進むことで処分性があるという裁判官の心証が示されたことになります、
いよいよ本案審理(実体審査)に進もうとしているところです。
これは、単なる一つの事業者の訴訟ではなく、
「中小機構の補助金は行政処分である」という判断が下されれば、
これまで私法上の裁量権として一方的に処分されてきた他の事業者にも異議申立ての道が開けることを意味します。
つまり、私たちの訴訟が、全国の事業者の行政不服審査の「扉を開く前例」になる可能性があるのです。
③ 処分性と補助金等適正化法を準用する補助金の性質の関係
中小企業基盤整備機構法では補助金の実施について、
**「中小機構法15条に基づき、補助金等適正化法を準用して運用している」**と明記されています。
これは何を意味するかというと:
補助金交付は、法律に基づく手続きに従って行われるべきものであり、
**取消や減額などの行為は、法律に基づく“行政処分”**である可能性が極めて高いということです。
つまり――
「補助金だから文句を言えない」
「運用だから裁量でOK」
…ではなく、
きちんと法律に沿って行わなければならない性質を持っているのです。
この性質が明確になればなるほど、処分に対する異議申立てや不服審査の正当性は高まります。
④ 審査拒否・遅延・不交付・減額・返還などへの行政不服審査の活用
行政不服審査は、以下のようなケースでの活用が可能です:
ケース対応可能性
❌ 代理申請疑いによる審査拒否→ 正当な申請者であることを証明し、審査再開を求める。事務局が判断した証拠の開示を求めることも可能。
❌ 審査の著しい遅れ→ 補助金等適正化法6条2項の「標準処理期間」を根拠に、「不作為の違法」として申立て可能。
❌ 減額処分→ 減額理由の提示が不十分であれば、開示を求め、審査請求により妥当性を争える。
❌ 不交付処分→ 形式的な打ち切り・不適正評価への対抗として、審査基準の開示と再審査請求が可能。
❌ 返還処分→ 補助事業が実施済であり、信頼保護の原則に基づいて返還処分の取消を主張可能。
▶ これらはいずれも、「処分性がある」ことが前提となって初めて有効に機能する制度です。
そして、今まさに私たちの裁判が、その“前提”を確立しようとしているのです。
✅ これから声を上げる事業者へ
これまで中小企業は、
「補助金はもらえるだけありがたい」と言われ続けてきました。
なので、適切な説明もなく「不交付」「減額」と言われやむを得ないと考えてきたかもしれません
でも――
制度の不透明さや一方的な対応に対して、正当に異議を唱える権利は確かにあります。
私たちは訴訟という手段を選びましたが、
これを読んでいるあなたには、「行政不服審査」というもっと身近な選択肢があります。
📢 情報提供・支援希望の方へ
理不尽な審査中止、取消処分、申請放置などでお困りの方
同様の被害事例を知っている士業・支援者の方
ぜひDM・コメント・メールなどでご連絡ください。
また、弁護士・行政書士の先生方へ:
「処分性」に関する制度解釈や実務的な対抗策については、ご専門の知見が活きる分野です。
弊社の裁判事例や照会文書も共有可能ですので、行政不服審査による異議申立て支援について一緒に考えていただければ嬉しく思います。
制度に異議を唱えることは、“わがまま”ではありません。
それは、中小企業に与えられた正当な権利の行使です。


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