【第26回】<補適法第16条解説>「是正措置命令」の本質と、なぜ私たちには出されなかったのか
こんにちは、補助金取消処分を争っている原告です。
本記事では、補助金適正化法第16条に定められた「是正措置命令」について、補助金適正化法解説 全訂新版(増補第2版)の解説内容をもとに掘り下げていきます。そして、なぜ私たちのケースではこの是正措置が一切行われなかったのかを、実体験と照らして考察します。
第16条とは何か?
補助金適正化法第16条は、以下のように規定しています。
「補助事業の成果が交付決定の内容に適合していないと認められる場合、交付行政庁は、補助事業者に対して交付決定の内容に適合させるための是正措置を命じることができる。」
この条文が意味するのは、「補助金の目的が完全に達成されなかった場合でも、すぐに取消すのではなく、まずは改善のチャンスを与える」ということです。
つまり交付取消=最終手段であり、是正措置=優先すべき中間ステップなのです。
法解説書による補足:取消しは“最後の手段”
「補助金適正化法解説(全訂新版 増補第2版)」では、交付取消ができるとしても、それは以下のようなケースに限るとされています:
是正措置が不可能、または著しく困難な場合
補助事業者に是正の意思が見られない場合
成果が著しく交付決定と乖離している場合(例:工法が全く違う工事など)
支出が経済的に過当で是正不能な場合
言い換えれば、それ以外の多くのケースでは、是正措置によって目的の達成を促すことが“補助金行政の本来の姿”であると説かれています。
私たちの訴訟事例と第16条
ところが──私たちのケースでは、この「是正措置命令」は一切出されませんでした。
むしろ、事前の説明もなく、突然「交付取消通知書」が届いたのです。
しかもその通知は、「中小機構」ではなく「パソナ」から送られてきました。
私たちは「改善する機会すら与えられなかった」のです。
これこそが現在の補助金行政の大問題ではないでしょうか?
是正措置があれば、防げた取消処分
もし中小機構が補助金適正化法第16条に従って、
成果が一部未達ならばそれを具体的に指摘し、
是正措置の機会を与えていたならば、
私たちは事業を修正し、結果として補助目的を達成できていたかもしれません。
それが本来の「補助金行政の姿」のはずです。
「外注処分」の現実と第16条の軽視
契約書によれば、中小機構はパソナに対して取消判断や通知の実務を丸投げしていました。
これは実質的に行政処分の外注とも言える異常な体制です。
第16条のような公正で段階的な行政処理を求める規定が、現場で踏みにじられているという実情があるのです。
終わりに:「改善させて、支える」補助金行政を
第16条は、単なる法律の文言ではありません。
それは「失敗しても立て直せる社会」を目指す、日本の行政の理念そのものです。
取消処分一択ではなく、まずは是正措置というステップをきちんと運用する。
それが、公平で人間的な補助金行政の第一歩だと、私は思います。


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