JA史上稀にみる巨額赤字、支払われない賠償金…JA秋田おばこの「不正会計の闇」
共同計算とは
今回の不祥事が発覚したのは、2017年、JAグループの総本山である「JA全中」の内部組織「JA全国監査機構」の秋田県監査部が行った期中監査によってだった。第四章で取り上げるように、全国のJAの監査は2019年8月まで、同機構が一手に引き受けていた。 秋田県監査部がコメの直接販売の収支を調べたところ、約40億円が不足していることを突き止めた。ただ、これはあまりに遅かったといえる。不適切な収支管理は2004年から続いていたからだ。所詮は身内の監査であり、10年以上にわたって放置されていたことが後に分かる。 JA秋田おばこの不正会計によって生まれた巨額の損失の内訳は、二つに分けられる。一つは、JA独自の農産物の精算方法である「共同計算」による赤字。もう一つは、宮城県の卸売業者からの未収金である。仮にI社としておこう。 まずは、共同計算について説明しておきたい。一般にJAは農家から農産物を買い取るのではなく、委託されて販売している。これはコメについても同じだ。農家から集めたコメは同じ品質であっても、販売する時期や取引先によって、当然ながら値段が変わってくる。販売条件の違いによって不公平が生じないよう、農家への精算は一定期間の平均価格をもって行う。この仕組みを共同計算と呼ぶ。 共同計算の精算が終わるのは、その年産のコメをすべて売り切った時点だ。通常はこれにおおむね1年半から2年かかる。とはいえ、すべて売り切るまで何も支払われないと、農家も食うに困る。だから、まずは集荷した時点で農家に一時金を払う。これを「生産者概算金」と呼ぶ。一般的には、これが最終精算の9割程度になる。 各年産ごとに収支が黒字になれば、これに追加払いをする。逆に収支が赤字になれば、農家に生産者概算金の一部を返還するよう求める。あるいは翌年産の共同計算に赤字を繰り越すこともある。以上が、共同計算のおおまかな内容だ。