第三者委に「体罰ゼロは無理だと思う」 性的いじめ、不適切指導…福岡の高2自殺、直接謝罪ないまま顧問が一時復帰
2021年3月に東海大福岡高(福岡県宗像市)2年の男子生徒=当時(17)=が剣道部でのいじめ被害や監督を兼ねていた男性顧問への不満などを訴える遺書を残して命を絶った問題で、学校が設置した第三者委員会が自殺の一因として不適切指導を認定した顧問が、学校から遺族に詳細な説明がないまま剣道部に復帰した。男子生徒の自死から4年。その後、顧問は今年3月31日付で退職したが、母親はやるせなさを募らせている。 【写真】侑大さんの遺影に手を合わせる母親 男子生徒の名前は「侑大(ゆうだい)」さん。第三者委は「自殺の直接的な原因を特定できない」とする一方、当時の上級生4人による性的いじめや、顧問が侑大さんを無視するなどした不適切指導を認定。自死の一因と結論付けた。 母親は学校に顧問の処分など再発防止策を求めた。昨春になって「(顧問を)処分した」と連絡を受けたものの、処分理由や内容の説明は拒まれた。最近、顧問が剣道部に復帰したことを同校のパンフレットで知った。学校から報告はなかった。顧問は第三者委の聞き取りに「体罰がゼロ(になるの)は無理だと思う」と語っていた。母親は「息子の死が再発防止に生かされているとは思えない」と不信感を口にした。 西日本新聞の取材に学校は「部員や保護者と数回の面談を重ねた上で、(昨年)6月に顧問に復帰させた。監督はさせていない」と説明。再発防止のため、第三者委から管理上の問題が指摘された寮の視察などをしているという。 母親は自死から丸3年がたった昨年、元上級生4人を提訴した。「過ちの重さに向き合ってほしいという思いだった」という。ただ、強制わいせつ容疑で書類送検され、少年審判で保護観察処分を受けた元上級生の1人は「(いじめではなく)じゃれあいだった」などと裁判で主張し、争う姿勢を示すようになった。本紙は提訴時に取材を申し込んだが応じなかった。他の3人は和解金の支払いが決まったものの、直接の謝罪はないままだ。 母親は息子のことを社会に伝え、いじめ被害を少しでも減らしたいとの思いから、幾度も記者会見をしてきた。「この4年、自分がやってきたことに意味があるのか不安になる」と語り、言葉を継いだ。「それでも、声を上げれば何かが変わると信じています」 侑大さんの自死の原因を巡っては、県が「学校の調査は事実関係が十分に明確になっていない」などとして再調査をしている。 (長田健吾)