ITエンジニアが絶対に言ってはいけない言葉
昔、厳しかった上司から教わった言葉がある。
それは「ITエンジニアが 『できない』と言ったら終わりだ」という言葉である。
当時はITエンジニアとして駆け出しで、何かにつけて「無理だ」「難しい」とまず否定的に考えてしまいがちだった。
すると上司は必ずといっていいほど「開口一番 『できない』 ってなんだ? まずはどうしたらできるのか考えるのがエンジニアの仕事だろう。せめて、どういう条件下なら可能になるのか考えてからものを言え」と叱責してきた。
その頃はITエンジニアとして「できないものはできない」とはっきり言ったほうが誠実だと思っていたが、上司から叩き込まれたのは、「エンジニアの一言」が周囲に与える影響の大きさだった。
ITエンジニアは、ある意味「魔法使い」のように見られることが多い。
技術をよく知らない人からすると、どんな難題でもエンジニアリングという魔法で解決に導いてくれる存在だと期待されているからである。
その魔法使いが「できない」と言ってしまえば、どんな優れた企画も世界を変える可能性を秘めたアイデアも、魔法はそこで解けて、物語は終わってしまう。
実際の体験談
かつて大手企業のクライアントから「この業務フローを自動化できないか」という相談を受けたときがあった。
既存システムとの連携は複雑でスケジュールも厳しく、正直「これは無理だ…」と思わざるを得ない状況だった。
だが、そのとき脳裏に浮かんだのは上司の言葉である。
「まずは、どうしたらできるかを考えろ」
そこでプロジェクトメンバーと徹底的に仕様や課題を洗い出し、外部ツールやAPIとの連携など可能な部分から着手することにした。
結果として、すべてを一度に自動化するのは難しかったが、SaaSを段階的に導入する計画を立てることで大幅な工数削減に成功した。
クライアントからは「これだけ掛かっていた作業を減らせたのはありがたい」「もっと早く相談すればよかった」という声を貰った。
もしあのとき昔の自分のように開口一番「できない」と言っていたら、生まれなかった成果だと今でも思う。
「できない」ではなく「どうすればできるか」
ITエンジニアが「できない」と言わなければ、物語は続く。
ほんの少しの言葉の選び方や考え方の違いが、大きな結果の違いに結びつくことを、何度も痛感してきた。
例えば、こういった言葉の転換だけでも、物事は驚くほど前進する。
「できない」→ 「どうすればできるか」
「無理だ」 → 「何があれば可能になるか」
「難しい」 → 「どういった条件下なら実行できるか」
ITエンジニアが「ただの人」で終わらないためには「魔法使い」としての役割を果たすべきだ。
そのためには最初の一言を「できない」で終わらせないことが肝心である。
最後に
厳しいながらも、色々なことを教えてくれた上司は、「できる上司」のお手本のようにハイレベルな会社に転職してしまった。
それでも、その教えは忠実に守ろうと考えている。
それ以来、営業の人が「この業務を効率化したいんですが、できますかね?」と言ったら、ひとまずこう答えるようにしている。
「できるように考えるのが私の仕事です。まずは背景から聞かせて貰えますか?」と。



コメント
3「結果として、あらゆる工程を自動化することが難しく、無駄な調査費用をクライアントに請求することになった。」というシナリオもあり得るわけで、早期に見切りをつけることは間違いではない。挑戦を過度に礼賛することはよくない。ただし、条件を変えれば可能かどうか検討する癖はあった方が良い気がする。思考のコストはそれほど高くはないので。
本投稿は、エンジニアにとって「できない」と発言することが致命的だと指摘し、常に可能性を模索する姿勢が重要だと説いている。その姿勢自体は前向きであり、職業的倫理や責任感という意味で一定の価値を持つことは間違いない。しかし、「できないことを証明する」困難さや不条理な状況に対して、個人の努力や自己犠牲によって吸収するしかないという現実には触れていない。つまり、本質的には「悪魔の証明」に挑んでいるようなものであり、無理難題の境界線を曖昧にするリスクが存在する。これは企業や上司にとっては好都合であり、「できない」と言わないエンジニアに際限なく負荷をかける構造を生む可能性が高い。投稿では成功体験が強調されているが、それが誰にとっても普遍的に当てはまるとは限らず、むしろ逆に個人の精神的・肉体的な負担を増加させるケースも考えられる。したがって、個人の努力に依存しすぎるこの考え方を安易に一般化するのは慎重になるべきであり、「できない」を許容する文化や、現実的な線引きを認める視点も合わせて提示することで、よりバランスの取れた提言になるのではないか。
自分もほぼ同じ事を新卒エンジニアの時に言われ座右の銘になりました
僕の上司は「できない」は全てのルートでできない事を証明しなければならないが「できる」は1通りを証明すればいい、だから軽率に「できない」とは言ってはいけない、と