婚外交渉が違法のモロッコ シングルマザーたちを救った女性
国際女性デーの3月8日から、朝日新聞を含む世界の報道機関14社は、ジェンダー平等社会の実現に向けた特集「#Towards Equality」を展開していきます。NPOスパークニュース(パリ)の呼びかけによるもので、各国のジェンダー平等の取り組みなどに関する記事を、世界で同じ時期に発信します。朝日新聞デジタルでも随時、記事を掲載します。今回は、モロッコのメディア「エコノミスト」からお届けします。
2022年9月25日に81歳で亡くなったエイチャ・エク・チェンナ氏は、安らかに眠ることができる。のけ者にされているシングルマザーたちは、チェンナ氏が1985年に設立したアソシアシオン・ソリダリテ・フェミニヌ(ASF)で、今も親身に話を聞いてもらい、必要な支援を受けられる。
看護師だったチェンナ氏はモロッコで女性の権利のための闘争の中心になり、名誉ある賞をもらった。未婚の母が生活を立て直したり、尊厳を持ち子どもと暮らす権利を理解したりする機会を提供するASFで最も知られた存在だ。
「レイプや近親相姦(そうかん)で妊娠した少女がなぜ有罪になるのでしょうか」。ASF代表のナイマ・エメ氏は問う。焦点は「未婚者同士が性的関係を持った場合、1カ月から1年の投獄」と定める刑法490条だ。中絶も違法なため、少女たちは内密に出産し、子どもを捨てざるをえない。
こうした心の傷を避けるためメディアや公的機関への啓発を強化し、02年に公益団体として認められた。
ASFは、絶望的な状況の母親に年中無休で門戸を開く。法的支援や心理的、社会的支援に加え、職業訓練や仕事も提供する。経済的自立のための読み書きや会計のプログラムもある。
シハム(仮名)は「ASFに出会えて幸運だった」と話す。「婚約者の男性は妊娠を知ると姿を消した。友人からASFの住所を教えられ、良い状態で出産ができた」という。5年がたち、飲食会社で働きながら息子を育てている。
こうした進歩は励みになるが、まだやるべきことがある。父方の認知がない婚外子が法的に犠牲にならないようにしなければならない。エメ氏は「家族法改正では、未婚の母がファミリーブック(戸籍のようなもの)を持つ権利が認められなかった」と説明する。
子どもが民法上の身分を持つには父方の認知が必要だが、父方の血縁関係を証明するのはほぼ不可能だ。「子どもたちは二等の国民になる定めだ」
ASFには32人の従業員と十数人のボランティアがいる。ビジネスのような運営で成長し、長続きしてきた。チェンナ氏は「今日は寄付する人がいるが、明日は?」と常に述べていた。
主な収入源は商業活動だ。二つのレストランやハマム(公衆浴場)、ヘアサロンなどはすべて未婚の母が経営する。エメ氏は「職業訓練ができ、社会復帰にも役立つ。そしてASFも経済的に自立し続けることができる」と話す。
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