3月30日、全国各地で一斉に行われた農家や酪農家による「令和の百姓一揆」。花冷えの東京でも約30台のトラクター行進が繰り広げられ渋谷や原宿を快走した。コメの品薄や価格高に消費者の不安が高まる中、農村では離農が進み、食を守るには農政の抜本的な転換が必要と訴える。デモに集まった人々の思いを聞いた。(木原育子、山田祐一郎、山田雄之)
◆大根やタマネギぶら下げて
3月30日、東京・青山公園。「百姓は国の宝」「お米を守ろう」と各県からののぼり旗も掲げられる中、一揆を告げるほら貝の合図で、約30台のトラクター行進が始まった。
高級車が居並ぶ西麻布では、ヨガに行く途中だった女性(20)が思わず二度見し、「マジで?」と絶句。ボボボボ…と鈍い音を鳴らし、大根やタマネギをぶら下げた車両が、目の前を通り過ぎていった。
コメの価格高が注目される中、近年の飼料肥料の高騰、異常気象にも見舞われる生産者の苦境を訴えようと、農家や市民の有志でつくる実行委員会が行った「令和の百姓一揆」。この日は14都道府県で一斉に実施され、都内では沿道含め約4500人(主催者発表)が参加。渋谷や原宿が一時騒然となった。
◆「絶対に見に行かなきゃ」歓声も
農業白書によると、日本で農業を主な仕事にする「基幹的農業従事者」の数は2023年で約116万人と2000年の約240万人から半減した。23年度の食料自給率はカロリーベースで38%。百姓一揆は農家への所得補償の拡充や食料自給率の向上を目標に掲げた。
約5.5キロのトラクター行進に「こちら特報部」も並走した。広尾駅付近でバゲットを抱えていた女性(32)は「パン食ですし。野菜も別に…」と意に介さぬ一方、別の女性(53)は「妹が農家に嫁いだ。農家をやめる、やめないでいつももめている」と神妙な表情。新潟から出張中のゆみこさん(39)は「絶対に見に行かなきゃって」と駆けつけた。「東京の人こそ自分事。農家の窮状を知ってほしい」
桜並木の明治通りを快走するトラクター。沿道から「頑張れ」「かっこいい」と声が上がる。渋谷の歩道橋では家族3人で見に来た三好円さん(50)が「安心して食べられる世の中になってほしい」。児童養護施設で働く女性(43)は「お米が高くて買えず、まもなく底をつく。子どもたちにご飯を食べさせられなくなる」と嘆いた。
◆「原発が設置され農地は売った」
複雑な表情で見守ったのは、福島県双葉町出身の谷津田良蔵さん(61)。3歳頃東京に引っ越したが、故郷の原風景は「今も福島で広がった田畑」という。「1960年代に原発が設置され農地を売ってしまった。戻りたいと思っても一度手放したら戻れない」
ゴール地点の原宿にいた前田起志子さん(70)は日仏を行き来している。「フランスでもトマトを道路にぶちまけて通れなくし、農家は怒りの声を上げている。日本は戦争をしたがっているようにみえるが...
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