アニメ特集第2弾は1990年代をピックアップ!
アニメ特集の第2弾は1990年代。NHKオリジナルアニメの創世記でもあるこの時期は、いま20代後半~30代前半の若者がリアルタイムで視聴していたころにあたる。ここでは、夢や希望、憧れ、ときには笑いや感動を与えてくれた1990年代のアニメの数々を振り返っていく。
©NHK・総合ビジョン
NHKの完全オリジナルアニメ誕生
記念すべきNHKの完全オリジナルアニメ第1作目は、1995(平成7)年に放送された『飛べ!イサミ』。主人公は幕末に活躍したあの“新選組”の子孫にあたるという設定で、小学五年生の女の子・花丘イサミが、同じく新撰組子孫の月影トシ、雪見ソウシらとともに悪の秘密組織“黒天狗党”と戦っていくストーリーになっている。ちなみに、実在の新選組に詳しい人ならすでにピンと来ているかもしれないが、3人の名前は新選組隊士の名前をもじってつけられている。イサミはご存じ局長・近藤勇、トシは鬼の副長と呼ばれた土方歳三、そしてソウシは剣豪として名をはせた沖田総司といった具合だ。同様に新選組や関連人物が思い浮かぶような名前のキャラクターもでてくるので、その点に着目してみても面白いかもしれない。
また、イサミ役の声優・中嶋美智代は本作が声優デビュー作にもかかわらず、いきなりの主役に大抜てきされて話題となった。そんな中嶋は収録当時にこんな苦労を明かしている。「イサミは、一見がさつで男勝りな少女ですが、お母さんみたいな温かさを持っているんですよね。ただ、とってもおてんばなので大変です。口に物を入れたまま話す場面も多いんですよ。まさか私も一緒になって食事をするワケにはいかないので(笑)、イサミならではの難しさを感じますね」。
(『NHKウィークリー週刊ステラ』より)
『飛べ、イサミ!』で反響を得たNHKオリジナルアニメは、翌1996(平成8)年に『はりもぐハーリー』が制作される。主人公は元気で好奇心旺盛、夢は「人間に会う」ことというハリモグラの男の子・ハーリー。ちなみにハーリー役の声優は、アニメ『タッチ』の浅倉南役でおなじみの日高のり子。日高は『飛べ!イサミ』でソウシ役も勤めており、NHKオリジナルアニメ2作続けての登板となった。
『はりもぐハーリー』終了以降も、1996年『YAT安心!宇宙旅行』、1998(平成10)年『おじゃる丸』、1999(平成11)年『コレクター・ユイ』などオリジナル作品が続々と登場。まさに1990年代はNHKオリジナルアニメの歴史が始まった年代といえよう。
永遠のあこがれ、「魔法使い」!
誰もが一度は夢見た、魔法使い。アニメの世界では数多くの魔法使いたちが登場・活躍しているが、ここでは1992(平成4)年~1993(平成5)年に放送された『ヤダモン』と1999(平成11)年よりシリーズが放送されている『カードキャプターさくら』の2作品を紹介。
まず『ヤダモン』は落ちこぼれ魔女・ヤダモンが主人公。いたずら好きでワガママなヤダモンは、母である魔女の森の女王によって森を追放されてしまい、人間界にやってくる。物語序盤では、魔法使いにも関わらず、使える魔法はほうきで空を飛ぶこと(条件付き)だけという見事な落ちこぼれっぷりを披露。しかし人間界のルブラン家に居候し、さまざまな経験や特訓を経て他の魔法も使えるようになったヤダモンは、闇の力に魅せられた魔女・キラと対決するまでに成長していく。
一方、『カードキャプターさくら』は、小・中学生の女の子に絶大な人気を誇る月刊『なかよし』で連載されていた人気漫画をアニメ化。物語は小学校4年生の木之本桜が父親の書庫で古い本の中にある“クロウカード”を見つけたことから始まる。このとき、封じ込めてあったカードの精霊たちを世に解き放ってしまったことで、桜はカードの守護神・ケルベロスにカードを集める“カードキャプター”として任命され奮闘していく。この物語の大きな魅力のひとつが原作者である漫画家集団・CLAMPの、もこなあぱぱがデザインする登場人物たちのコスチュームや髪形だ。「原作者が毎回アニメ用にデザインしていて、バトルコスチュームだけでなく普段着も凝ったデザインで可愛いんですよね」(『NHKウィークリー週刊ステラ』より)と監督・浅香守生も述べており、その可愛さはお墨付き!
誰もが知っているご長寿アニメ。
1990年代にスタートしたNHKのご長寿アニメといえば、ご存じ『忍たま乱太郎』(1994(平成6)年放送開始)、『おじゃる丸』(1998(平成10)年放送開始)の2本。両作品とも幅広い世代の支持を得ており、映画化や舞台、ミュージカル化されたことも。一度は見たことがあるという人も多いだろう。
『忍たま乱太郎』は尼子騒兵衛の忍者ギャグ漫画『落第忍者乱太郎』が原作。戦国時代を舞台に忍者のたまご“忍たま”たちの明るく楽しく愉快な日々を描いている。先祖代々ヒラ忍者の家系に生まれた乱太郎、豪商の息子・しんべえ、戦で親を亡くしながらもたくましく生きる、きり丸の3人組を中心にストーリーは展開。しかしながら同級生や教師たち、学園長の愛犬・ヘムヘムなどとにかく個性豊かなキャラクターが満載で、大人も楽しめるユニークさが散りばめられた構成になっている。
声優陣も豪華で、乱太郎の声優・高山みなみはアニメ『名探偵コナン』の主人公・江戸川コナンやスタジオジブリのアニメ映画『魔女の宅急便』でヒロイン・キキ役を演じている。さらに、きり丸に声を吹き込む田中真弓は、アニメ『ONE PIECE』のモンキー・D・ルフィ役として有名だ。そんな田中は放送開始まもないころのインタビューで「私ってもともとお嬢さんタイプではないので、ちょっとくらい男の子っぽいキャラクターのほうが自分に向いていると思っています。そういう意味では、きり丸は自分にあったキャラクターだなと捉えているんですよ」(『NHKウィークリー週刊ステラ』より)ときり丸に対しての気持ちを語っていた。
そして、『忍たま乱太郎』に次ぐ長寿アニメが『おじゃる丸』(原案・シリーズ構成:犬丸りん)だ。1000年前の妖精の国・ヘイアンチョウからタイムワープしてきた貴族の少年による現代見聞録ということだが、おじゃる丸のキュートなビジュアルやあの独特の口調にノックアウトされてしまう人が続出。ヘイアンチョウからやってきたおじゃる丸は現代をざん新な目で見るため、ときには現代を風刺するような場面が盛り込まれているのもみどころのひとつ。監督・大地丙太郎は放送スタート当初「子どもたちの間で殺伐とした事件が増えるなか、子どもはいま一体何を考えているんだろうと思っていたときにこのお話をいただき、喜んで取り組みました。とにかくキャラクターが個性豊かで、“それぞれの個性を認めていこう”というメッセージが込められています」(『NHKウィークリー週刊ステラ』より)と作品に対する思いを語っている。
最後にご長寿アニメ・番外編としてもう1作品。1990(平成2)年に放送されて大反響を呼んだアニメ『ふしぎの海のナディア』がEテレで再放送された。(2012(平成25)年1月11日現在)。この作品の舞台は1889年、19世紀のパリ。自然を愛する少女・ナディアは物心ついたときからサーカスで育ち、自分の生い立ちを知らずに生きてきた。ナディアの過去の手がかりは身につけたサファイヤ“ブルーウォーター”だけ。そんなナディアと科学の可能性を信じる少年・ジャンがパリで出会い、物語は大きく動いていく―――。その壮大なスケールで子どもから大人まで多くの人を惹きつけて止まない夢と冒険の物語に、一度足を踏み出してみてはいかが?
©NHK・総合ビジョン
【アカイさんの一言】
幼いころ、若いころに見ていたアニメは、時を経て再度見てみたり考えてみたりすると、懐かしさとともに一味違った気持ちを感じさせてくれる。また、作品に込められた制作者たちの思いを自然とくみ取ることができるのは、大人ならではの体験といえよう。いま改めて懐かしのアニメたちと向き合ってみるのもおすすめだ。
1990年代にNHKで放送された主なアニメ
『ふしぎの海のナディア』 1990(平成2)年 |
『おばけのホーリー』 1991(平成3)年 |
『アニメ ひみつの花園』 1991(平成3)年 |
『コビーの冒険』 1992(平成4)年 |
『おーい!竜馬』 1992(平成4)年 |
『ヤダモン』 1992(平成4)年 |
『ポコニャン!』 1993(平成5)年 |
『忍たま乱太郎』 1993(平成5)年 |
『モンタナ・ジョーンズ』 1994(平成6)年 |
『ウルトラマンキッズ 母をたずねて3000万光年』 1994年(平成6年) |
『飛べ!イサミ』 1995(平成7)年 |
『おまかせスクラッパーズ』 1995(平成7)年 |
『あずきちゃん』 1996(平成8)年 |
『はりもぐハーリー』 1996(平成8)年 |
『YAT安心!宇宙旅行』 1996(平成8)年 |
『ダンジョンズ&ドラゴンズ』 1996(平成8)年 |
『おじゃる丸』 1998(平成10)年 |
『コレクター・ユイ』 1999(平成11)年 |
『カードキャプターさくら』 1999(平成11)年 |
※アーカイブスブログ(2013年1月10日)から加筆・転載
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