Persona5 ーRevealedー   作:TATAL

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今話で原作逸脱、というか捏造設定がまた一つ増えてしまいます。タグもまた増やしておきます…。原作に登場しないペルソナが登場します。(既に原作に出ないコープあるんだから今更なんですが)




I am the strongest monster

「狙い通り、ターゲットは泡食って自分から地盤を弱くし始めてる」

 

「僕の大雑把な作戦が少しは功を奏したようで何よりだよ」

 

 ある日、珍しく明智君から掛かってきた電話に出てみれば、彼は上機嫌に今の状況を僕へと伝え始めた。

 こうして話しているのはマズいんじゃないかと言ってみれば、今の獅童議員にそんな余裕は最早無いと明智君は言い切って見せた。

 

「怪盗団の予告状が持つ意味は、廃人化ビジネスを知っている者とそうでない者で全く違う。そこに目を付けた君の策略は見事だったよ」

 

「偽予告状の束を見ただけで君にそこまで見抜かれる程度にはお粗末な策だけどね」

 

「謙遜は止しなよ。事実、ターゲットはもうまともに周囲の情報を集められなくなってる。目と耳を無くしたようなものさ」

 

 僕が考えた策はとても単純だ。明智君の協力を得て、獅童議員と廃人化ビジネスで関係がありそうな人間に怪盗団の偽予告状を届けさせるだけ。

 

「廃人化ビジネスを知らない人間にとっては怪盗団の予告状は殺人犯からの脅迫状。ただ警察に持って行くだけだ。だけど、廃人化ビジネスを知っている人間からすれば、僕の影がちらつく」

 

「予告状を受け取った結果、君による廃人化の隠れ蓑にされてしまうわけだからね。奥村社長の会見を見ていなかった関係者はいないだろうし。結果、相手は獅童に見捨てられたとパニックになって慌てて連絡を取ろうとするわけだ」

 

「でもその連絡は君が既にシャットアウトしているんだろう?」

 

 そう聞き返してみれば、電話口で明智君が楽しそうに笑ったのが分かった。なんだろう、僕が明智君との取引に勝ってから、明智君が妙に楽しそうだ。ウキウキしているというか、イタズラをしている子どものような無邪気さを感じることがたまにある。

 

「そうなると相手が出来ることは僕に縋るか、黙ってどこかに閉じ籠るかしかない。あれよあれよと言う間に、獅童は持ち駒をほぼ失くしてしまう」

 

「楽しそうだね?」

 

「楽しいさ。僕だけでやっている時よりも、ずっとね」

 

「それは何より。……だけどさ」

 

「安心しなよ。怪盗団は順調だ。僕がこの目で彼らが認知世界を攻略しているのを見ているからね。もうそれほど経たないうちに予告状が獅童に届くだろうね。僕の手助けが必要になりそうなら、癪だけど少しだけ手を貸してやるつもりだよ」

 

 僕の聞きたいことを見透かしたように明智君が先回りして答えてくれるが、生憎と僕が聞きたいことはそれだけじゃない。怪盗団が予告状を出すということは、明智君の裏切りが獅童議員にも知られることを意味している。

 

「君も、これ以上は動かずに身を隠すべきじゃないのかい?」

 

「僕の裏切りが明らかになるからかい?」

 

「分かってるなら……」

 

「身の振り方くらいは考えてるさ。それに、自由に外を出歩けるのはもうあまり長くないだろ?」

 

 そう言われてしまうと僕は何も言えなくなってしまう。獅童議員の裏が明るみになるということは、実行犯として関わっていた明智君のことも芋づる式に明らかにされてしまうことを意味している。怪盗団の勝利は獅童議員と明智君の破滅を伴うものだ。それを承知で、僕は明智君と取引を交わした。明智君にとっては自分自身を破滅に追い込む取引を交わしたことになる。

 

「僕は獅童と一緒に地獄に堕ちる」

 

 明智君の言葉に、僕は何かを言おうと口を開いて、また閉じた。今までの明智君なら、獅童議員を破滅させれば自分はどうなっても良いと思ってしまっていたんだろう。けれど、今の彼はそうではないと僕は知っている。

 

「だけど君はそれだけじゃ許してくれないだろう?」

 

「……ああ、許さないさ。這ってでも生き延びてもらう。首根っこ引っ掴んででも帰らせて、一発くらいは殴らせてもらうよ」

 

「それで良い。だから僕は君に協力するんだ。僕を許さないでくれよ、ワトソン君。それと、今ならあまり大っぴらに顔を晒さないなら出歩いても平気だと思う。顔を見せておかないといけない人には、ちゃんと見せておくべきだと思うよ」

 

 その言葉を最後に電話は切れた。唐突に電話を掛けてきたと思ったら、切るときも唐突だ。

 

「明智君なりの気遣いなのかな……」

 

 現状の共有だなんて言っておいて、実のところは最後の一言を伝えたかったのかもしれない。だとすると明智君も世話焼きな人間だと少し可笑しくなって笑ってしまった。僕の心配をしている場合じゃないだろうに。怪盗団のことも、そして僕のことも気に掛けている。それは獅童議員のことを許さないという彼の中にある怒りからくるものなのかもしれないけれど、それだけじゃない。彼の生来の優しさもそこにはあったりするんじゃないかと、僕は期待している。

 

「さて、明智君にも言われちゃったし。父さんと母さんに顔を出しに行こうかな」

 

 店の奥にいるララさんに少し出掛けますと伝えれば、「大丈夫なの?」と心配されたけれど、明智君から聞いた内容を伝えれば渋々といった様子で送り出してくれた。

 

「危ないと思ったら逃げてきなさいよ。オカマバーに躊躇なく入れる人間なんてそう多くないんだし」

 

「いつもありがとうございます。お店が開くまでには帰ってきますね。もう少し、ここでお世話になると思いますから」

 

「ハイハイ。いくらでも居て良いから、ちゃんと親御さんに顔見せてきなさいな」

 

 ララさんはため息交じりでありながらそう言って僕を送り出してくれた。ララさんに借りたキャップを被って外に出てみれば、久しぶりに見る太陽の光が目に染みる。

 

「……時間があれば、真にも会っておきたいけど、今は無理そうかな」

 

 昼の新宿は、夜とはまたガラッと違った表情をしていた。

 

 


 

 

「『トラブル処理役』がヤクザとか、獅童やっぱりやべー奴じゃねえか」

 

 獅童の認知世界(パレス)において、敵対者や不穏分子を処理する役割を担った人間。社会の裏側に生きていることが一目見て分かるこのシャドウこそが、シャドウ獅童が潜む議場へと至る為の最後の招待状を持った特別なシャドウだった。居所さえ掴めなかったそのシャドウをどうにか追跡し、船の最下層である船倉まで追いかけた怪盗団。『トラブル処理役』であるシャドウとの戦闘の末、疲弊しながらもどうにか力を認めさせた彼らはようやく最深部に至るための最後の招待状を手にしたのだった。

 

「スカル、まだ油断しないで。『トラブル処理役』が船を降りると言っても、まだシャドウは残ってるんだから」

 

 疲れを隠そうともせず肩を落とした竜司に、真が周囲を警戒しながら注意喚起する。船倉の奥にあるセキュリティルームから出たところは、敵が待ち伏せをするのに打ってつけだと真は危惧していた。なにより、怪盗団は先の『トラブル処理役』との戦闘で消耗している。

 

「なぁんだ。油断してると思ったのに」

 

「ッ!?」

 

「敵襲!?」

 

 そんな彼らに向かって、聞き覚えのある声が響く。蓮と真が真っ先に反応し、声のする方を見れば、そこに立っていたのは冷たい表情で怪盗団を見下す明智吾郎の姿。

 

「明智……!」

 

「フォックス、違う!」

 

「反応が人じゃない、本人じゃないぞあれ……」

 

 その姿を見て明智の名を口にした祐介を、いち早く違和感に気付いたモルガナが否定する。続いて気付いたのは分析を得意とする双葉だった。

 双葉の言葉を聞いて、他の面々も自分達の目の前に降り立った明智吾郎の正体に気付く。

 

「獅童の認知上の明智。シャドウね」

 

「もう少し動揺してくれても良いのにな。つまらない」

 

 杏に正体を看破されたシャドウ明智は、わざとらしくため息を吐いて肩を竦めた。

 

「現実の僕がアテにならないからわざわざ僕が出てきたんだ。今の怪盗団なら、どうとでもなるからね」

 

 そう言って指を鳴らしたシャドウ明智の後ろに、次々とシャドウが湧く。怪盗団を取り囲むように湧いたシャドウの群れは、数えるのも億劫なほどだ。

 

「まったく。優秀な船長の種からどうしてあんな使えない駒が生まれたんだろうね。船長も可哀想だ」

 

「なに……? まさか、獅童が明智の……!?」

 

 驚きの目を瞠る真に対し、シャドウ明智はこれ見よがしに口を手で押さえた。そんなつもりも無いのに、マズいことを口走ったとでもアピールするように。

 

「おっと、口が滑ったかなぁ。でも、あんな使えないクズなんてどうでも良いか。どうせ選挙が終われば死んでもらう予定だし」

 

「んだと、テメェ……!」

 

「利用するだけ利用して、都合が悪くなったら捨てるですって……?」

 

 シャドウ明智が口にしたことは、すなわち現実の獅童が明智吾郎に対してどのような認知を持っているかを示している。それが指し示す事実はただ一つ。獅童は明智吾郎に対しても利用価値の高い駒程度の認識しか持っていないという現実。

 

「当然だろ? 船長に使われるために僕は生まれたんだから。僕はそれで満足なのさ」

 

「……胸糞悪い」

 

「同感よ、ジョーカー!」

 

 自身の血を分けた子と知って尚、明智吾郎は獅童にとって都合の良い駒でしかないと言い切ったシャドウ明智に対し、蓮は心の奥底から湧き上がる嫌悪を吐き出すように呟いた。それを隣で聞いていた真も、ナックルガードをはめた両手を勢いよく打ち合わせて応える。

 

「それで、怒るのは勝手だけどこの数の差を覆せるのかい? 消耗した君達で」

 

 そんな蓮達を嘲るように、シャドウ明智は周囲を手で示して見せる。怪盗団を囲み、威嚇しているシャドウ達はシャドウ明智の指示が一言あれば怪盗団に一斉に襲い掛かるだろう。それを理解しているからこそ、怒りを滲ませながらも怪盗団は迂闊に動くことすら出来ないでいた。

 

「その程度の相手に何してるんだか。……ロキィィ!!」

 

 そんな緊張状態を斬り裂くような声が船倉に響き渡る。同時に、周囲のシャドウ達が目も眩むような閃光に包まれたかと思うと、全て消滅する。

 

「今のは……!?」

 

 驚く蓮の前に降り立ったのは、全身が黒を下地とし、藍色のストライプが斜めに入ったスーツに覆われた男。その顔は、同じく黒く、鼻先から嘴のように尖った仮面で覆われていたものの、その声と、シャドウ明智の驚愕に歪んだ顔で怪盗団は正体を掴んでいた。

 

「明智!?」

 

 竜司の声に振り向いた明智は、黒い仮面の奥から心底呆れたような冷たい目を向けていた。

 

「お前ら、こんな雑魚共相手に何遊んでるんだよ。もうすぐ獅童に手が掛かるって時に」

 

「んな……!」

 

 明智の言い様に何か言い返してやりたいと口を開きかけた竜司だが、今目の前で見せられた圧倒的な力を思い出して口を閉ざした。

 

「クロウ、その姿は……」

 

「まだコードネームで俺を呼ぶんだな、ジョーカー。これが俺の本当の姿。君と同じく、僕も複数のペルソナを持っていたって訳さ。廃人化を引き起こしていたのはこのペルソナの力だよ。嘘と謀略の化身、ロキ。俺にピッタリだろ?」

 

 蓮の言葉にそう返して笑う明智の言葉には自嘲するような色が滲んでいた。そのことに気付いた蓮がまた口を開こうとする前に、シャドウ明智の怒りに満ちた叫びが彼らに届く。

 

「明智ィ! 自分が何をしてるのか分かってるのか!」

 

「獅童の中の俺は随分と頭が悪いんだな。これでもまだ分からないっての?」

 

 シャドウとは対照的に冷え切った声の明智は、手に持った銃をシャドウへと向けた。それは獅童に対する明確な決別の証。

 

「悪いが俺は泥船に乗り続けるつもりは無いんでね。獅童には破滅してもらう」

 

「そうなればお前も道連れなんだぞ!?」

 

「そうだね、それが何か問題でも? 元から選挙後には俺を始末するつもりだったんだろ? 俺に今まで散々頼り切ってたせいで隠し事が下手になったんじゃないの」

 

 獅童の破滅が自身にも波及することを言及されて尚、明智の表情には動揺一つも見られない。

 蓮を含め、怪盗団の面々は突然の事態の連続に頭がついて行かないとシャドウ明智と明智本人を交互に見つめることしか出来なかった。

 

「……ハァ、あのさ。こうやって俺が惹きつけてやってる間に逃げるくらい出来ないノロマなのかい? こんなのにベットしたなんて思いたくないんだけど」

 

「逃がすわけが無いだろうがぁ!」

 

 怪盗団に対して呆れるように言い放った明智に対し、シャドウ明智が無視するなともう一度指を鳴らす。それに反応して船倉に再びシャドウが溢れ、怪盗団と明智を囲い込んだ。その数は先程よりも増え、船倉内はシャドウがひしめき合う異様な様相を呈していた。

 

「数だけ揃えれば勝てると思ってるのが浅いんだよ。おい怪盗団、上が空いてるだろ?」

 

「でもこの数は……」

 

「さっさと行ってくれって言ってんの分からない? 巻き込まれたくないならさ」

 

 シャドウがいない唯一の道である上を指差した明智に、なおも躊躇っていた蓮達だったが、気遣い不要と明智は自分をぐるりと囲むシャドウを見渡し、野生の獣を彷彿とさせる好戦的な笑みを浮かべた。

 

「俺は今この力を試したくてウズウズしてんだからさ」

 

「……死ぬつもりじゃない?」

 

「愚問だろ、それ」

 

 蓮が確かめるようにした質問に、明智はそれだけを返す。その返答に頷いた蓮は、怪盗団全員を連れて頭上に向けてワイヤーフックを打ち込み、シャドウの囲みから抜け出す。

 

「この数、本当に一人で切り抜けられるなんて自惚れてるのかよ」

 

「当たり前だろ。むしろ足りないね」

 

 嘲るように言って来るシャドウ明智に対し、明智は足りないと煽りすら入れて見せる。

 

「ホントに大丈夫なのかよアイツ!?」

 

「大丈夫、だと思う」

 

 肩にしがみついたモルガナに蓮はそう言うと、非常階段を目指す。その眼下、明智がペルソナを呼び出そうと仮面に手を掛けているのが視界に入った。

 

「俺は今最っ高の気分なんだ。お前なんかが止められるなんて自惚れるなよ」

 

 ペルソナ。

 

 一文字ずつ、区切るように発音しながら、明智は仮面を剥ぎ取る。

 

「テュポーン!!」

 

 幾千幾億の蛇が絡み合い、人を象った異形の怪物。他のシャドウを圧倒する物理的な大きさと威圧感を発するのは肩にあたる部位から伸びた二対の竜頭。そして巨大な大蛇と言っても過言ではない下半身。

 ギリシア神話最大最強の怪物の名を冠したペルソナが、船倉どころか船全体を揺らさんばかりの咆哮をあげて顕現した。

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