Persona5 ーRevealedー   作:TATAL

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Interlude-Three women make a market-

 テスト期間が終わったある日、怪盗団の面々で行くお祭りを前にして蓮と杏、真の怪盗団女子三人の姿がファミレスにあった。

 

「ガールズトークしようよ!」

 

 きっかけは杏の些細な一言だ。怪盗団のメンバーとしてついに三人目の女子が加わった。怪盗団という大きな秘密を共有する三人が他とは一線を画す連帯感を持つのは当然の話で、そして怪盗団の男メンバー、竜司、祐介、そしてついでにモルガナも除いた女子だけの集まりなんかを開きたくなるのもむべなるかな。

 蓮と真も、特に真はそうした遊びやガールズトークといったものに疎く、それだけに興味を惹かれて参加しないという選択肢は無かった。そんなわけで、テスト期間も終了したことだし、お疲れ様会も兼ねて男子禁制の会がこうして開催されたのだった。

 

「それでさそれでさ、やっぱり女子が集まったら話題は一つだよね!」

 

 ドリンクバーで思い思いの飲み物を用意し、注文したポテトを囲んで杏が興奮したように話を切り出す。

 

「チキチキ女だらけのコイバナ選手けーん!」

 

「何を話すのかと思ったら……」

 

 意気揚々と告げられた議題に真が呆れたように零し、蓮は我関せずとポテトを摘まんでいた。

 

「ちょっとノリ悪い~」

 

 二人が乗り気でないことを見て取った杏が不満げにストローを咥える。だが、それに対する真と蓮の反応は淡泊だった。

 

「そう言われても特に話すことがない」

 

「右に同じく、よ」

 

 すげなく返した蓮に同調する真。だが、杏は二人のその言葉を聞いてもめげない。むしろ楽しそうに口を歪めて真に目を向けた。

 

「またまた~、蓮はともかく真は副会長とどうなのよ?」

 

「か、彼とはただの友達よ……?」

 

「動揺している」

 

「どうして蓮までそっち側に行くのよ……!」

 

 杏に水を向けられ、少し口ごもったところを蓮に指摘される。あっさりと構図は二対一となってしまい、真の戦況は不利になる。

 

「それで、実際どうなのかなって。結構噂になってたりするしね。二人が付き合ってるんじゃないかって」

 

「つ、付き合っては無いわよ!」

 

「付き合って()無い、と」

 

「言葉尻を捕まえて変に誘導しないの!」

 

 杏が切り込み、蓮が些細な違和感を指摘する。二人の見事なコンビネーションに翻弄された真は、一旦自分を落ち着かせるために飲み物を口に含むと、この窮地を切り抜ける方策を考える。

 

「海藤君とはそういう関係じゃないから。というか、誰に対してもあの人は同じような態度じゃない」

 

「うーん、確かに言われればそうなんだよねぇ」

 

 冷たい飲み物で熱を持ち始めた頭が冷えたのか、真は冷静に返す。杏も真の言葉は否定出来ずにポテトを口に咥えて眉根を寄せる。

 

「副会長は誰に対しても同じ態度かもしれないけど真は副会長には他の人とは違う態度になる」

 

「ちょ、蓮!?」

 

 だが杏の追及は防げても蓮は防げなかった。怪盗団のリーダーだけに観察眼と冷静な判断力はメンバー随一である。使い所がガールズトークではあるが。

 

「それを言ったら蓮だって副会長と仲良さげじゃん?」

 

「何故背中から撃ってくる……!」

 

 コイバナという戦場では敵も味方も無いらしい。杏の無慈悲な援()射撃によって蓮も砲火に晒されることになる。

 

「そう! 蓮も彼と本の感想会とかしてるの知ってるんだからね!」

 

「何それ何それ! 私も気になる!」

 

 背中から撃たれた蓮をこれ幸いと真は追及する。便乗して矛先を逸らす狙いがあるのと同時、真自身も蓮と徹の感想会なるものが気になっていたのは確かなので一石二鳥とも言えた。遠目にも楽し気な様子で生徒会室で話し込む二人が気にならないわけが無かった。そして感想会については杏も初耳だったようで、彼女も身を乗り出して蓮を問い詰める。

 

「あ、う……。別に、読んだ本の感想を言い合ってるだけ」

 

 少し口ごもった調子で否定する蓮に対し、杏は獲物を見つけたとばかりにニヤニヤと笑みを浮かべる。

 

「おやぁ?」

 

「これは怪しいわね……」

 

 誤魔化すように俯いてストローに口をつける蓮を微笑ましいものを見る目で眺める二人。怪盗団として活動しているといつもクールで、年齢に見合わぬ冷静に皆を引っ張っていく頼れる女リーダーが、今は年相応の反応を見せている。そのギャップに二人の胸中にえもいわれぬ感情が広がっていく。それと同時に真の中には何故か不安にも似た焦燥感が生じていたのだが、本人はそれを見ないふりをしながら話を続ける。

 

「でも実際さ、副会長と一緒にいて楽しいのは確かなんでしょ?」

 

「それはそう。でも真に悪い」

 

「なんでそこで私が出てくるのよ?!」

 

 自分だけが的にされてなるものかという蓮の企みにより、安全圏に逃げたと思っていた真も再度舞台に引きずり出されることになった。

 

「花火大会に誘ったけど来てくれなくて残念だったね」

 

「う……。それは、そうなんだけど」

 

 ルブランでの勉強会で杏が発案した花火大会に徹を誘ったが見事に躱されたことを思い出して真の顔が沈む。

 

「せっかく真がこんなにアピールしてるのにね」

 

「あ、アピールとかじゃないから! ただ友達として一緒に……」

 

「大丈夫、私も杏も真を応援してる」

 

「だから違うってば……!」

 

 違う、と言いながら顔を赤くさせていては説得力も何も無いだろう、という言葉は杏も蓮も口に出さないだけの優しさがあった。

 

「副会長は放っておくといつか刺される。だからそうなる前に真が捕まえておくべき」

 

「刺されるの!?」

 

 つい先日あった出来事を思い返しながら蓮は真面目な顔で真に忠告する。

 

「……いや、確かにその可能性はあるかも」

 

「杏まで!?」

 

 そう言う杏の脳裏に過るのはここにはいない彼女のもう一人の親友の顔。いや、彼女に関しては事情が事情だから仕方ないと思うが、それにしたって徹の対応は出来すぎだと言いたくなっても仕方がなかった。淡い憧れで済んでいるからまだ良かったが、それに留まらなかった子もいるだろうことは想像に難くない。

 

「副会長って実際優しいし、頼りになるから狙ってる子もいたりしそうじゃない?」

 

「だけど副会長は誰に対してもある一線以上の距離を詰めようとしない」

 

 杏の疑問に対し、蓮はそう徹を評する。蓮が見る限り、徹の交友関係は広い。廊下で見かければクラスを超えて色々な人と話しているのを見かけるし、実際頼られているのだと思う。しかし、いつも一緒にいる、例えば蓮にとっての怪盗団メンバーのように、共に苦境を乗り越えるような仲間とまで言えるほど深い仲の人間はそういないのではないかとも睨んでいた。

 

「副会長は自分で完結してる。だから頼りになるけど、誰かに頼ったりしない」

 

 鴨志田のときもそうだった。徹は蓮達を頼りにしていると言った。結果として鴨志田を改心させ、問題を解決したのは怪盗団だったが、それまで鴨志田を抑え、なんとか解決しようと動いていたのは徹の方だ。蓮の中では、怪盗団が何もしなくても徹が鴨志田の件を解決していたのではないかという思いもあった。

 それもあり、蓮は徹がどこか自分達と距離を感じることになんとなくだが不満を感じていたのだった。

 

「……そうなのかしら。別に私はそんな風に感じたことはないけど。花火大会の後も……」

 

 蓮の言葉があまりしっくり来ていないのか、顎に手を当ててそう呟く。蓮や杏に聞かせるつもりのない独り言のような呟きだったのだろうが、同じテーブルに座っている二人の耳にはしっかりと聞こえていた。それも聞き逃せないワードまで。

 

「花火大会の?」

 

「……後?」

 

 杏と蓮が見事なコンビネーションで真に詰め寄る。真はしまった……、と言わんばかりの表情になるが、もはや逃げられない。

 

「あの花火大会の後で副会長と会ってたり?」

 

「待ち合わせ?」

 

「ち、ちがっ! たまたま駅で徹と会っただけで……!」

 

「徹?」

 

 オウム返しの蓮の言葉に、真は更なる失言を悟る。杏の顔が面白いものを見つけたと言うように口角が上がっていくのが真にとっては死刑宣告をする裁判官のようにも見えた。

 

「名前呼びとかずいぶん仲良くなってる~!」

 

「まだ私達は副会長呼び。一歩リード?」

 

「リードとかそういうのじゃないから!」

 

 なんとか矛先を蓮にも逸らそうとしていたが、今の失言でターゲットは真に完全に固定されてしまった。二人の猛攻に屈した真は、花火大会の後、徹と連れ立って帰ったことについて口を割ることになった。

 

「た、たまたま駅で一緒になって、私が傘も持ってなかったから濡れて帰るのもってことで送ってくれたのよ」

 

「うんうん、それで~?」

 

「そ、それで、色々話すことがあって……」

 

「色々とは?」

 

「どうして私はこんなに追い詰められてるのよ……」

 

 パレスやメメントスの戦闘などよりもよほど真は疲労しているように感じた。特に姉が名前呼びされているのに自分は苗字のままだと駄々を捏ねるような調子で徹に迫ってしまったことを思い出すと顔から火が出そうな気分にまでなってしまう。それも雨で濡れた浴衣のせいで色々と気まずいような思いもした。やはりあの時の自分は熱でも出ていたんじゃないだろうか、そう思うほどにあのときの自分はどうかしていた。それでも徹に名前呼びをされて、自分も彼を名前呼び出来たことを後悔する事は無いが。

 

「そんなに顔を赤くして何を思い出したのかな~?」

 

 そしてそんな真の様子を見逃してくれるような杏ではない。杏たちに話すことで先日のことを思い出してしまった真を、ここぞとばかりに追い詰める。

 

「だ、だから……! その、徹が私のことは苗字で呼ぶのに私のお姉ちゃんは名前で呼ぶから、ず、ズルいって」

 

 自分の口から友人にそれを説明することのなんと気恥ずかしいことか。言葉は尻すぼみに小さくなっていき、ついに俯いて何も言えなくなってしまう。

 

「真、よく頑張った」

 

「なんで追い詰めた張本人に慰められてるのよ、私は……」

 

 そんな真を労うように、蓮が真の頭を撫でる。杏はどうして自分は真の対面に座ってしまったのだと後悔した。この可愛い生き物を何故抱きしめられる場所に座らなかったのかと。蓮がやっているように真を撫でて愛でてやりたかったと。

 ただ、今日は予想以上の収穫があった。真と徹の進捗を聞くだけでももうしばらくは楽しめるだろうと杏はご満悦だった。自分の親友から相談を持ち掛けられてはいることも思うと板挟みになっている感もあるが、それとこれとは話が別なのだ。

 

「あの副会長の牙城を崩した。やはり真は優秀な参謀」

 

「どうしてこんなところで私が評価されてるの……」

 

「けど真には先を越された」

 

「……え?」

 

「あ、失言」

 

「ちょっと蓮? 今のはどういうことなの!?」

 

 話が別と言ったが前言撤回。あの副会長は中々厄介な火種になりかねない。杏は目の前でわちゃわちゃとする二人を見ながら内心汗をかくのであった。

 

 

 

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