2024年の難民認定109人。ギリギリ3桁越。けど7年ぶりの減少に。そして、注目したい点。
NPO法人WELgeeの渡部カンコロンゴ清花です。出入国在留管理庁(以下、入管庁)から「令和6年における難民認定者数等について」が出ました。
難民認定申請者数は12,373人と、去年よりやや少なくなりましたが1万人を上回りました。
コロナの時期には一旦は、外国から日本への入国ができなくなりましたが、入国制限が解かれた後、世界的にも人の移動が戻り、難民として避難せざるを得ない人たちの動きも再開しています。
難民認定された人数
2024年に、日本政府に難民として認定された人は190人。
特徴としては、そのうち半数以上がアフガニスタン国籍ということ。
<2024年に難民認定された人の国籍>
アフガニスタン・・・102人
ミャンマー・・・・・36人
イエメン・・・・・・18人
パレスチナ・・・・・8人
中国・・・・・・・・5人
エリトリア・・・・・4人
イラン・・・・・・・3人
ウガンダ・・・・・・3人
カメルーン・・・・・3人
カンボジア・・・・・2人
イラク・・・・・・・1人
エチオピア・・・・・1人
コンゴ民主共和国・・1人
バングラデシュ・・・1人
マリ・・・・・・・・1人
ロシア・・・・・・・1人
ちなみに、この5年間に認定された人の出身国の推移はこんな感じです。
日本の難民認定数が3桁になったこの3年間は、アフガニスタン出身者が最も多く認定されています。
アフガニスタンでは2021年8月にイスラム主義勢力・タリバンが実権を掌握して以降、国内情勢が不安定に。首都カブールの日本大使館やJICAで勤務していたアフガン人職員らがタリバン復権によって日本に退避していますが、こういった人たちが難民認定されました。難民として認定されると「定住者」という安定した在留資格で暮らしてゆくことができるようになります。
190人という数字、これ、多いと思いますか?少ないと思いますか?
難民に関わってきた者からすると、「ここ最近の難民認定数は多くなってきた」という傾向です。
難民認定数や難民認定率の低さが、先進諸国の中でも非常に低い日本では、難民として認定される人の数はずっと以下のような推移でした。
<過去の難民認定数>
2012年・・・18人
2013年・・・6人
2014年・・・11人
2015年・・・27人
2016年・・・28人
2017年・・・20人
2018年・・・42人
2019年・・・44人
2020年・・・47人
2021年・・・74人
2022年・・・202人
2023年・・・303人
2024年・・・190人(←今回)
この10年をみると、この3年、認定数が大きく増加していることがわかります。とはいえ、命をかけて難民として逃れてくる人たちの日本での人生再建に伴走するNPOの現場感覚からすると、きちんと難民性が認められ、適切に認定・保護されるべきであろう人たちはまだまだいると感じます。
さて、他にもいくつかポイントを見てゆきましょう。
難民認定「不認定」になった人の数は?
審査の結果の不認定者数は8,269人(一次審査 5,117人、審査請求 3,152人)でした。実は、WELgeeが関わる人たちも、アフガニスタン以外は、多くが難民認定されていない(=難民申請中で審査の結果を待っている)人たちです。政情不安等のニュースでも見るシリア、コンゴ民主共和国、カメルーン、エチオピアなどから来ている方々も、なかなか認定はされません。審査期間は3年弱とされていますが、日々出会う人たちの中には、5年を越えて待っている人たちもいます。
難民審査のステップ
難民認定の審査には、まず、最初の「①一次審査」と、そこで不認定になった場合の異議申し立てプロセスである「②審査請求」があります。
例えば以下の記事では、①のステップで、「難民不認定です」という結果になったシリアの方が、②のステップで「難民不認定」という処分の取り消しを国に求めた訴訟にて、名古屋地裁が、処分(不認定結果)を取り消す判決を言い渡し、難民認定するよう国に命じたケースが書かれています。なので、最初のステップで不認定になっても、本来は難民認定されるべき存在だった、という場合もあるのです。(この人の難民性が見過ごされて母国に送還されなくて本当によかった。難民の強制送還は、時には死刑宣告と同じようなものです)
あれ、「ウクライナ避難民」は?⇨「補完的保護」
あれ、ウクライナ避難民の人たちが上の表にはいないけど?と思う人もいるかもしれません。実はウクライナの人たちは2023年12月から、紛争当事国からの避難民を対象とした「補完的保護」という新しい制度によって、在留を認められました。これは「準難民」とも言われ、難民認定申請はせずでOKで、補完的保護の枠に申請。ウクライナに比べると数は少ないですが、シリアやミャンマー、スーダンの方々の中にも、こちらの枠で認定されている方々がいます。
こちら本来は、特定の国籍の人を保護するためではないはずの制度ですが、結果として95%以上がウクライナ国籍の方々です。「紛争当事者国」は他にもあり、公平に制度が適応されることを期待します。
そんなウクライナ避難民ですが、安定した在留資格は得られたものの、だからと言って、異国・日本での定住の道のりは簡単ではありません。当初は、ロシア軍の侵攻が収まったら帰国しようと考えていた多くの人を含め、すでに3年。就労へも、言語の壁やこれまでの専門性をそのままは活かせない難しさもある。WELgeeも取材していたたいだこの記事は現状を垣間見れるかもしれません。
「難民」でも「補完的保護」でもないけれど、人道的な配慮を理由に在留を認められた人
さて、「難民認定」でも、新しくできた「補完的保護」でもないけれど、母国の情勢を鑑みると帰国できないよね…ということで、人道的な観点で在留を認められる人という枠もあります。2024年は、333人。でもこれは前年の3分の1ほどに減少。 これはほとんどが、軍事クーデター後の混乱と人道的危機に直面しているミャンマー出身者(262人)となっています。
他にもカメルーン13人、コンゴ民主共和国・リベリア・無国籍が3人ずつ。ただ、こちらは、「難民認定」や「補完的保護」と異なり、定住者の在留資格を得られるわけではありません。暫定で、とりあえずいてもいいですよと1年の在留期間が得られるのみだったり、いつ、「もう特例は終わりですよ」と言われてしまうか分からない。"帰れない母国"状態の人にとっては、法的に依然として不安定であるという点がポイントです。
ふう、、、ここまで読んでいて、「ややこしい!」と思いませんか?新しくできた補完的保護も含め、年々、制度が複雑になっています。
強制送還について
難民認定数が公表されたのと同じ日、入管庁は難民認定申請者のうち3回以上の申請者17人を強制送還したと明らかにしました。入管法の改正前は、難民申請中は送還されることはありませんでした(「ノン・ルフールマン原則」といいます)が、去年6月の改正法の施行後は、難民申請を3回以上している場合、「相当の理由」を示さない限り、強制送還が可能に。初適応されたのが2024年でした。
「取り下げ」ってなんだろう?
他にも、少し気になったのは、一次審査で申請を取り下げた者が3,084人となっていること。これは、処理数の約37%だそう。結構な人数です。そのうちの約73%は自分で帰国をしているそうです。(WELgeeが関わる難民の人たちは難民性が高い人たちが多いので、数ヶ月や数年おきに、まる一日かかってのインタビューが行われています。あっさり取り下げしている人たちがいるとしても、関わりがほぼないので、私もわからず)
取り下げを促されるようなことがあるとしたら、あってはならないことですが、もしも本人にとって、必要のない難民認定申請だったのなら、積み上がっている難民申請を前にしている難民調査官の仕事を減らすためにも、難民申請の時点で話を聞き、その際のその人の本当のニーズに合わせてトリアージして別の対処を進めるなど、できないものだろうか。一次申請をして、その後入管とどのようなやりとりが行われ取り下げになっているのか、知りたいと思いました。
専門性・独立性をもった難民審査の専門機関の必要性
最後に。2023年の改正入管法の議論では、日本の難民認定プロセスにおいて、独立性と専門性を備えた新しい機関の必要性も議論されました。背景には、現在の制度に対する 公正性の疑問や審査の厳格さがあります。
1. 現在の難民認定プロセス
日本では、難民認定の審査は 出入国在留管理庁が行いますが、この仕組みにはいくつかの問題点が指摘されています。
独立性の欠如
→ 難民認定を判断する機関が入管庁の内部にあり、「庇護を求める人々の保護」と「国境管理」という相反する役割を持ってしまっている。認定率の低さ
→ もちろん、ここで書いてきたように難民の認定率だけでは比べられませんが、日本の難民認定率は他国に比べ極端に低い。専門性の不足
→ 難民条約の適用基準を正しく理解し、難民申請者の状況を適切に判断できる専門家が十分に確保されていないのではなかろうか。
2. 新しい機関の必要性
これらの問題を受けて、難民認定の審査を 入管庁とは独立した第三者機関 で行うべきだという議論がありました。
独立した難民審査機関のモデル(他国の例)
難民認定における独立性と専門性を確保するため、各国では以下のような独立した審査機関を設置しています。
1. カナダ:移民・難民審判所(Immigration and Refugee Board of Canada: IRB)
カナダでは、IRBが難民認定を含む移民関連の審査を担当しています。IRBは、移民・難民・市民権省(IRCC)から独立した機関であり、公正な審査を行うことを目的としています。
2. ドイツ:連邦移民・難民庁(Bundesamt für Migration und Flüchtlinge: BAMF)
ドイツでは、BAMFが難民認定を行っています。BAMFは連邦内務省の下に位置し、難民認定に関する専門的な審査を実施しています。
3. フランス:フランス難民保護庁(Office Français de Protection des Réfugiés et Apatrides: OFPRA)
フランスでは、OFPRAが難民認定を担当しています。OFPRAは独立した行政機関として、難民認定の一次審査を行います。不服申し立ては、国家亡命権裁判所(CNDA)で審理されます。
4. 韓国:法務部出入国・外国人政策本部
韓国では、法務部出入国・外国人政策本部が難民認定を行っています。審査の公正性と透明性を確保するため、外部の専門家で構成される難民認定委員会が設置されています。
3. 日本での議論の経緯
入管法改正の議論の中で、与野党の一部や支援団体から「独立した審査機関の創設」を求める声が上がった。
しかし、政府は「入管庁内の審査体制を強化する」という方針で、新しい機関の設置には至らず。
4. 今後の展望
現在、日本では難民審査参与員制度(外部の専門家が審査に関与する仕組み)(2005年~)があり、一次審査で不認定となった人が異議申し立てをした際に、審査に関与する外部の専門家なのですが、影響力は限定的とも言われます。本当に必要な人が保護され、そうでないケースの審査もより適正にできるようにするためにも、国際基準に沿った独立した難民審査機関を設置するかどうかは、今後の政策議論に委ねられています。政治家の皆さんには、ぜひ議論を継続していただきたいです。
キャリアを通じて未来を拓く方法も
NPO法人WELgeeは「難民申請中の人」「難民認定された人」「人道配慮の在留資格の人」「難民認定はしていないけれど、祖国に戻れない理由のある人」などを対象にしたキャリアプログラム"WELgee Talents"を運営しています。
キャリアを通じ、活躍できる職場と安定した在留資格を得ることができた人の中には、数年間ただただ不安の中で結果を待ち続けたり、同時期に来た人たちが不認定になってゆくのを見ていたり、狭き門である難民認定の結果がダメだった人もいます。でも、自分の経験やスキルを活かして企業で活躍することで、また別の道を切り開ける可能性があります。
”難民認定”も、1つの大切なゴールではあるけれど、認定されて終わりではない。人生の再建には、様々な要素が絡みます。今もまだ、政府による難民認定の門が狭い中で、民間企業としての役割が、彼らの人生を変えるかもしれません。一旦は国に戻れなくなった人たちと、民間側の力も合わせ、共に生きる方法を1つでも多く築いてゆけたらと感じます。
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