長崎 3人死亡ヘリ事故 機長“ラダー使用できず不時着水決心”

長崎県の壱岐の沖合で医療搬送用のヘリコプターが転覆した状態で見つかり3人が死亡した事故で、機長が会社の聞き取りに対し「機体の方向を制御するラダーが使用できなかったため不時着水を決心した」などと話していることがわかりました。機長は「異音がして高度が低下した」とも話していて国の運輸安全委員会は機体に異常がなかったか詳しい原因を調べています。

記事後半では機長の説明の詳細もお伝えしています。

今月6日、長崎県の対馬空港から福岡市の病院に向かっていた医療搬送用のヘリコプターが壱岐沖の海上で転覆した状態で見つかった事故では、患者や医師など3人が死亡し、機長や整備士など3人が治療を受けています。

この事故でヘリコプターを運航していた佐賀市の「エス・ジー・シー佐賀航空」の担当者の聞き取りに対し、機長が「後方から異音がした。その直後、高度が低下していった」と話していることがわかっています。

その後の状況について機長が聞き取りに対し「機体が進む左右の方向を制御するラダーが使用できなかったため不時着水を決心し、フロートを作動させた」と話していることが関係者への取材で新たにわかりました。

さらに「同時に緊急事態を知らせる連絡を実施した。着水前に衝撃を和らげるため機首をやや上げたところ、機体が右に傾き着水した」と話しているということです。

運輸安全委員会は10日に続いて11日も機体の調査を行っていて、整備状況も含め機体に異常がなかったか詳しい原因を調べています。

【機長説明】“金属引きちぎられるような異音後 高度低下”

会社の聞き取りに対し、機長が説明した内容から当時の状況がわかってきました。

ヘリコプターは対馬空港を離陸後、高度450メートルほどまで上昇し、その後、風が安定していた高度300メートルから150メートルの付近を選定し、航行しました。

高度150メートル付近を航行していた際、後方から異音がしました。

異音は金属が引きちぎられるような、トイレで物が吸い込まれるような、聞いたことがない音で、その直後、高度が低下していったため、機体のコントロールに専念したということです。

機体が進む左右の方向を制御するラダーが使用できなかったため不時着水を決心し、フロートを作動させ、同時に緊急事態を知らせる連絡を実施しました。

着水の前、衝撃を和らげるために機首をやや上げたところ、機体が右に傾いて着水しました。

その後、気が付いた時には機内に海水が大量に流入していたため、わずかな空間で呼吸をして、シートベルトを外し、前方の破損しているフロントガラスの部分から外に脱出したということです。

専門家 “機械的なトラブル発生した可能性”

運航会社の聞き取りに対する機長の話について、日本航空の元機長で航空評論家の小林宏之さんは「後ろから金属音のような異音がしたこと、ラダーが使えなくなったこと、この説明からすると何か機械的なトラブルが発生した可能性がある。機体後部にあるテールローターか、エンジンの回転をローターに送るためのトランスミッションにトラブルがあった可能性がある」と話しています。

そのうえで「機体的なトラブルだった場合でも要因は整備不良や金属疲労などさまざまあるので今後の分析が必要だ。定期的な整備での見逃しがなかったかなど整備状況の調査が今後のポイントになってくる」と話しています。

航空事故調査官 運航会社を再び調査

国の運輸安全委員会の航空事故調査官2人が運航や機体の整備状況などを調べるため、佐賀市にあるヘリの運航会社に11日、再び調査に入りました。

ヘリの機体は陸揚げされたあと、運航会社に運び込まれていて、調査官は機体の状況を詳しく調べたということです。

3人の死因は溺死か 海上保安部

海上保安部は11日、患者や付き添っていた息子、それに医師の合わせて3人の死因は溺死とみられると発表しました。

乗っていた6人のうち、機長や整備士など3人は緊急時に使用するフロートと呼ばれる浮きの上で見つかりましたが、死亡した3人は転覆したヘリの機内から発見されていて、海上保安部などが詳しい状況を調べています。

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