女帝からは逃げないと。   作:霧江牡丹

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最終話「女帝からは逃げないと……」

 幾星霜の時を経た。

 歴史は地球とは全く違う様相を見せ、技術も文化も様々な分岐を見せていったけれど、変わらないものもあった。

 

 それは、子供という存在。

 

 いつでも無邪気で、いつでも無垢で。

 元より私の容姿が神族らしくないというか、威圧や魂のアレソレを抑えていればなんでもない九歳児なこともあってか、大人も子供も特段警戒してくることはないのだけど……子供は殊更に、である。

 

 だからまー、見る人が見れば驚くだろうけど、私は今。

 

(シェン)ちゃん、あーそぼ!」

「ああ、いいよ」

「やったぁ! じゃあみんなのとこ行こ!」

 

 ──小学生をしている。

 うむ。

 時折会いに来る桃湯からは「……そろそろ殺すべきなの? これ、ちゃんとトチ狂っていない? 大丈夫?」とか言われているし、奔迹から「似合ってる似合ってる似合って……いやそう! 俺は流離いの奔迹! 爆笑などしなブハァッ!」とか言われているし、濁戒からは「もう少し言葉遣いを直しましょう。言語があなたのものと同等になったのですから、できますよね?」とか圧をかけられている……けど。

 媧、燧、祝からは好評だ。やはり鬼はダメだな。

 

 ちなみに今は午後休みの時間。校庭の木陰で子供達を眺めていたら、遊びに誘われてしまった。

 本懐だからね、子供の。特に断る理由も無い。

 

 毛先の元結をちろりと撫でて、皆のもとへ行く。

 

「うげー、祆蘭かよー」

「なに、私と遊ぶのは嫌?」

「お前足速すぎるんだよー! ぜってー捕まえらんねーじゃんか」

「そもそも何で遊ぶかを聞いていないのだけど?」

「え、あれ、言ってなかったっけ」

(あかり)はそそっかしいからなぁ」

 

 子供たちの遊びは地球とそう大差がない。

 まぁさも当然のように玩具としてディアボロがあったりシルホイールがあったりするのにはツッコミを入れざるを得なかったけど、そういうものなのだと納得すれば、まぁ、まぁ、まぁまぁ。

 

「それより(すすむ)、やる前から負け宣言とは、短距離走者の名が泣くんじゃない?」

「そうだぞ進! 俺達も協力すっからよ!」

「いやそれはルール違反だけど。……対して儀祭(ハレ)、あなたは燃えているみたいね」

「当然よ! 今日こそ男子の注目はあたしがかっさらってやるんだから!」

 

 そんな「子供たちの遊び」の中で、一風変わったものが一つだけある。

 地球では絶対に発生し得なかった遊び。それが。

 

「ほら、文句を言っていると、午後休みが終わってしまうから。……立候補がいないなら、今日は私からやるけれど、他にやりたい子は?」

 

 静まり返る少年少女にクスリと笑みを零して。

 

「では私が最初の()()ね。そら、十を数えるから、散らばれ散らばれー」

「今日はぜってー逃げ切ってやる!」

「木の上はアリだよね!?」

「みんな校庭から出ないようにねー?」

 

 散っていく子供達。

 そう……この遊びは、この世界で発生した「鬼ごっこ」の亜種。まぁ鬼が実際にいるから、というのもあるのだろうけど……他に無かったのかねえ、なんて思いながらも。

 

「九、十。……さぁて、女帝からは逃げないと……連れ去ってしまうぞ~」

「きゃー!」

「逃げろ逃げろ! あいつホントに足はえーんだから!!」

 

 "女帝ごっこ"。

 遠い昔、誰からも大切にされていた巫女様が、悪いわるーい女帝に連れ去られてしまったことをモデルにしたごっこ遊び、だとか。

 

 誰が悪いわるーい女帝なんだか。

 

 ──まだ、お前を追いかけられそうには無いが。

 もう少し……こっちで、楽しくやるよ。それまでは……何か、私があっと驚くようなものを作って、待っていてくれ。

 

 今度はもう、逃がさないから。




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