Hump Back(前編)|「女性同士だからこそ共感し合えた」同時期出産の裏側と妊娠中の思い

2023年7月からメンバーの妊娠により、ライブ活動を休止していたスリーピースロックバンドのHump Backが、2024年5月にメンバー全員の出産を無事に終えたという発表を耳にした。

3人全員が同時期に出産したことに驚いた一方で、同時期での出産に至った経緯には、妊娠時は活動を休止せざるを得ないという、女性バンドならではの悩みがあったのではないだろうかとも感じた。そして、パートナーの協力があったとしても、育児とバンド活動の両立は、時間的にも体力的にも難しい部分があるのではないかと想像できる。ライブ活動を再開したHump Backは、いま育児とバンド活動にどのように向き合っているのだろうか。

そこで、Hump Backのメンバーに、同時期出産に至った経緯や妊娠中の様子、育児と仕事を両立するために意識していること等についてお話を伺った。そこで見えてきたのは、出産や育児の不安を共有できる仲間の大切さと、パートナー等の周りの理解であった。

記事は前後編の2回に分け、前編では同時期出産に至った経緯や妊娠中の思いについてお届けする。

同時期出産に至った経緯とは

子どもを授かりたいという思いは、いつ頃からあったのでしょうか。

林萌々子(以下、林):私は元々子どもが好きで、人生の中で子どもを授かり、育てたいという気持ちがありました。

ぴか:私もいつかは子どもがほしいなって思っていました。メンバーとも、「どこかでタイミングを合わせて出産したいね」と以前から話していたので、そのタイミングが昨年(2024年)だったという感じです。

美咲:私は子どもがほしいと思っていたけど、バンドをやっていたのでちょっと諦めていた部分があったんです。でも、メンバーの2人と子どもがほしいという意見が一致して、周りの方もみんな協力してくれたので、出産に向けて気持ちが変わりましたね。

実際に3人は同時期に出産されていますよね。

林:そうですね。私たちはライブ活動に重きを置いているので、妊娠してライブができなくなってしまうことを考えた際に、なるべくその期間を最短に抑えたいなと話していました。そして、みんなで考えた結果、出産の時期を揃えようという話になりましたね。

私とみさち(美咲)はまだ結婚前だった気がするけど、ざっくりこのぐらいのタイミングで子どもを産みたいよねと話して、まだ全然プロポーズもされていない段階で当時の恋人(いまの旦那)に、「このぐらいのタイミングで妊娠を考えてる」と話しましたね(笑)。

そのときのパートナーさんはどんな反応でしたか。

林:めちゃくちゃギョッとしてました(笑)。おそらく自分の中で少しずつ気持ちの整理をつけていったのだと思いますが、その場では「分かった」と言ってくれましたね。

ぴか:私の夫もすんなり受け入れてくれましたね。

美咲:うちも同じですね。

林:本来、妊活は夫婦で決めることなのに、それをバンドで決めちゃっているので、旦那の懐の深さがすごいですよね(笑)。とても感謝しています。

妊活のタイミングも話し合われていたのでしょうか?経緯があれば教えていただきたいです。

林:当初はもっと早いタイミングから妊活を始めようと話していたのですが、2022年に「ACHATTERS」っていうイベントをやって、それがすごい楽しかったので、また来年もやろうという話になり、期間が延びたんですよね。それで、「ACHATTERS 2023」が終わった後に妊活を開始しました。

妊活中だと、いつ妊娠するかが分からない状況だと思うので、先の予定を入れづらいという話をよく聞きますが、どのようにバンド活動されていたのですか。

林:妊活していることを公表すると自分たちのプレッシャーにもなってしまうので、いままで通り活動しているように見せていました。

ただ、誘っていただいたライブやイベントに対しては、正直に、妊活をしているので急遽出演できなくなる可能性があることをお伝えして、それでもよかったら…と逆オファーのようなことをしていました。その上で、受け入れていただけたライブには出演してきましたね。​​

そうだったのですね。妊娠中は体を動かすことができなかったと思いますが、そのときはどう過ごしていましたか。

林:のんびり過ごしていましたし、いい時間でした。ライブはすっごい大好きだけど、休んでみて、少なからずプレッシャーを感じていたことにも気付きました。その緊張から解放されて、少しホッとしたような時間でしたね。

ぴか:私は根がぐうたらなんですが、これまで全力でライブやバンド活動をして、自分の人生では考えられないくらいずっと忙しくしていたので、妊娠期間はゆっくり過ごせて、最高でした。

美咲:私もゆっくり過ごしていましたが、体を鍛えるのが趣味なのでジムに行って適度に体を動かしたりしていました。

ぴか:あとは、何かをインプットしようとしてましたね。普段だったら観ないような映画やドラマを観たり、音楽を聴いたりしていました。私はギターを弾けないのですが、ギターの練習したり、パソコンで曲を作ってみたりと、音楽制作についてもいろいろと取り組んでいましたね。

美咲:私もこのタイミングでパソコンでの楽曲制作方法を勉強していましたね。妊娠中はリモートでみんなで曲を作っていました。

ゆっくり過ごしつつ、新しいことにもチャレンジしていたのですね。

ぴか:そうですね。でも、最初の方はちょっと焦っていました。

林:わかる。それまで全力疾走で毎日を過ごしていたのに生活が急に変わって、どうしたらいいか分からなくなりました。

美咲:なんかやらなと思って、急に英会話教室に通い出したりしましたね(笑)。

林:私も一瞬、英会話教室に通いました(笑)。ただ、つわりとかも酷くなってきたので、難しくなってだんだんゆっくりするようになりました。いま思えば、本当に何もしなくて良いと思いますね。

Hump Back不定期ラジオ番組「ハンプバック道場」
メンバー全員での出産を発表したり、子育ての様子などを楽しくお喋りしている

妊娠の不安と楽しさ

妊活や出産にあたって不安だったことはありましたか。

林:妊娠も出産も、とにかく想像ができないので、不安でした。

ぴか:自分が子どもを産んで、育てても大丈夫なのかという不安はありましたね。

林:そんななかでも1番不安だったのは、誰かが子どもを授かったけど、他の誰かは子どもができない状況になるかもしれない、そういう危ない橋を渡っているということでした。妊娠って、思った以上にセンシティブなことで、バンド内の関係やバランスが簡単に崩れてしまう可能性もあったと思います。それでも、自分たちがやりたいことを考えたときのベストな答えが「3人で妊活の時期を揃える」ことだったんですよね。

美咲:私も同じく、自分だけ妊娠できなかったらどうしようとか、お腹の中でちゃんと赤ちゃんが育つのかなとか、バンド活動を再開できるのかなと不安になることがありましたね。

出産によって体を動かすことが難しくなり、休まないといけなくなるのは男性には無い状況ですが、女性だからこその葛藤を感じる瞬間はありましたか。

林:バンド活動をするなかで女性として悩んだことはなかったんですが、妊娠に関しては、体を動かすことが難しくなり、物理的にライブが出来なくなるので、タイミングなどは悩みましたね。でも、逆に考えれば、妊娠も出産も、女性にしかできない特別なことなんですよね。わたし、妊娠中にお腹に子どもがいることが幸せすぎて、「これを男性は経験できないのか…。経験させてあげたい…!」と思っていました(笑)

美咲:私も幸せだったかな。胎動を感じるのも幸せだったし、「この言葉にできない幸せを旦那は感じることができないんだ…!」と思いました。私が通っていた病院は私しか検診室に入れなかったので、妊娠時の子どもの様子を旦那は見れなかったんです。なので、この幸せを旦那が味わえなかったのは、本当にもったいないな!と。

ぴか:私は逆で、早く妊娠期間が終わってほしいと思っていました。休めることはありがたいけど、つわりが辛かったり、寝れなかったり、胎動がいつもより少ない日は不安になることもあって、無事に生まれるのか心配になったり、しんどいことは多かったですね。

林:つわりの程度にもよるだろうから、どう感じるかは人それぞれだね。

ぴか:あと、葛藤でいうと、ライブができないもどかしさはありました。でも、いまは休むべきだと割り切っていましたね。

美咲:いろんな不安や葛藤も、私たちが全員女性だから共感し合えたけど、たとえば女性が1人で他のメンバーは男性のバンドの場合だとやりづらさや難しさはあったんじゃないかなと思います。

とにかく優しい世界になってほしい

実際に育児をしていて大変なことも多いと思いますが、楽しいと感じる瞬間もありますか。

林:育児は面白すぎますね(笑)。夜寝るときも、「明日も子どもと遊べる!」と思ってます。もちろん子どもに無理矢理起こされることもありますが、一緒に過ごしている時間がめっちゃ楽しいです。

ぴか:ずっとおもろいよな。育児は楽しい!

美咲:私もつねに楽しいな。

林:もちろん大変なことも多いけど、それも含めて楽しい。でも、楽しいと感じているのは、この3人で共有できているからというのは大きいと思います。大変なことも3人で話せば笑い話になって、楽しみながら子育てをしています。

育児をやってみてどういったことが大変ですか。

林:たとえば、子どもが吐き戻したり、ミルクを全然飲まなかったりして不安になることがあるんです。でも、月齢の近い子どもを持つ2人に共有すると、「うちの子どももそうやねん」とか「逆にすごい飲むねん」みたいに、不安を共有できたり、同じくらいのタイミングに産まれた子どもでも成長スピードが全然違うことを知って、不安が解消されますね。やっぱり3人で育児の不安や悩みを共有できるところがすごく大きいなと思います。

お子さんを出産してから、これまでと同じ日常を過ごすなかで、聞こえてくるニュースや見えている光景が変わったりしたことはありますか。

林:生後数ヶ月の子どもと無理心中したというような、子どもの辛いニュースは見れなくなりました。そういったニュースに対して、私はバンドメンバーや旦那さんがいて、周りに支えてくれる環境があるからそうなっていないだけで、もし自分が孤独だったらそういう気持ちになってしまうこともあるのかもしれないなと思います。

ぴか:とにかく優しい世界になってほしいですね。あと、子どもを産んでから、他の子どももいままで以上に可愛く見えるようになりました。

美咲:私はライブハウスに子連れで行けるようになるといいなと思いますね。美容室や歯医者は子どもを連れて行けるような場所に行っているのですが、そういった場所がもっと増えてくれたらありがたいなと思います。

子どもがいても生活しやすい社会になってほしいですよね。

 

前編では、同時期出産に至った経緯や妊活中に不安だったこと、妊娠の楽しさ等について伺った。後編では、育児に関する周囲との関係性や2025年3月26日に発売するアルバム『Hump Back』への思いをお届けする。

後編はこちらから

Hump Back
大阪府出身の林萌々子(Vo./Gt.)、ぴか(Ba./Cho.)、美咲(Dr./Cho.)のスリーピースロックバンド。2009年に高校の軽音楽部にて結成し、2020年には大阪城ホール、2021年には日本武道館での単独公演を開催した。

 

 

『Hump Back』
Hump Back 活動再開!
セルフタイトルのフルアルバムリリース!

発売日:2025年3月26日
定価:2,750円(税込)

【収録曲】
1.オーマイラブ
2.3036
3.ロケンロ
4.coda
5.もしも僕が
6.十七歳と坂道と
7.woman
8.ヤドカリ feat. GIMA☆KENTA(愛はズボーン)
9.たね
10.イスタンブール
11.明るい葬式

▼Hump Backの音楽配信サービスはこちらから
https://hayashi.lnk.to/HumpBackTW

 

取材・文:前田昌輝
編集:篠ゆりえ
写真:Ayaka Onishi

 

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