投下した時は繭の中という題名でしたが、同名の作品があるようなので変更しました。 //////////////////////// 現代社会におけるコンビニとは、若者にとってだけではなく老若男女問わず、 ほぼ無くてはならないものではないだろうか。 真夜中に肉まんが食べたくなった。 テレビでカップラーメン食べてるシーン見たら無性に食いたくなった。 突然の来客に作る暇がなく、とりあえずコンビニの冷凍物で代替しておく。 等など。 夜を照らす一条の光、それがコンビニだと、俺は常々思っている。 だが諸君。 光あるところに闇があるように、コンビニにも闇がある。 いや、正確にはコンビニの外に奴がいる。 赤と緑のオッドアイなアンチクショウ、糞蟲こと実装石だ。 そして今、俺は果てしない敗北感にさいなまれていた。 そんな俺の横では、俺の妹が…笑い転げている。 まぁ、分かってるだろうけどね、託児ってあれね。 だが、妹が笑い転げている理由も、俺の敗北感も、 実のところ仔蟲に食い散らかされたからだとか、一面の緑(糞)にされたとかじゃぁない。 生粋の糞蟲ハンターを自負する俺も、実装石なら良蟲も糞蟲も関係なくSATUGAIする妹も、 こんな託児は初めてだった。 緑色のコロッとした丸い物体。 蛆実装が変態するために糸を出してできたアレ、 ビニールに入っていたのは実装繭だった。 「ッッッヒィ…フフフッップッ………あーーっはっはっひぃぃいいぃぃ…」 「いい加減に黙れ愚妹…」 「……っ…はぁ……はぁ…ぷ…っいやだってさ、流石にそれないっしょアニキwww」 まだ笑っている愚妹はさておいて、こいつはどうしたもんか。 俺は生粋の糞蟲ハンターだ。 逆に言えば良蟲は殺さない、むしろ託児された仔実装が良蟲だったなら、 最低ランクの実装フードを持たせて親元に返してやる(戻ってきたら殺すと宣言して) だが、繭相手ではそうもいかない。 そもそも糞か良かすら判定できないだろこれじゃ。 つか、こいつの親は何考えてるんだ。 普通は五体満足な仔実装を託児するのが一般的だ。 生き残ることを再優先に考え、親実装は健康な仔に次代を任せる。 野良にとって蛆は非常食、繭なんて野良の世界ではほとんど発生しないまま消えていく。 「もし困ってんならアタシが殺してあげよっか?」 「ダメだ、俺の主義に反する」 「んー、どうせ実装石でしょ? 一匹死んだって変わらないと思うけどねー」 こいつは昔、俺が良蟲判定した仔実装を、ゆっくり首をねじ切って殺したことがある。 その時は俺がブチ切れて、最後には涙目で土下座していたが…。 ホントこの娘の将来が心配よ。 俺はビニール袋の中から実装繭を手にとった。 さっきまで冬の寒空のしたにあったはずなのに、ほんのりと温かい。 大きさは10cm程度だろうか、中身が詰まっているのかそれなりの重さがある。 「アニキさ、そいつが良蟲か糞蟲かわかればいいんだよね?」 唐突に、俺の横で思案顔をしていた妹が話を切り出した。 「ああ、それがわかればな」 妹はもそっと立ち上がると居間から出て行く。と、それほどたたずに戻ってきた。 手にはなにか裁縫箱のようものを持っている。 「前に虐待掲示板で面白い記事があがって。それがね…」 俺の横に座り、箱をあけた。 中には透明で緑がかった、薄いシートのようなものが数枚と、 ニッコリ笑った実装石の絵が書かれた偽石コーティング剤。 それに何故か仔実装のものと思われる実装服が入っていた。 「蛆実装の繭とか、極稀にだけど成体が繭化する場合があるでしょ? あれの中身を見ようってスレがあったの。 虐待掲示板だったからみんな実験して殺してたけど、もしかしたらなにかわかるかも」 「おまえ、ただ中身が見たいだけだろ?」 「…………えへへ〜」 はぁ…と、ため息を付きながら、俺も実のところ興味があった。 あの中身ってどうなってるんだろう。 思ってみたことはないか? 蝶の蛹とかカマキリの卵の中身ってどうなってるかって。 「ま、死なないんだったらいいだろ」 「アニキ流石!わっかるね〜♪」 こらこら、裁縫用のハサミを持ってニヤニヤするのはやめなさい。 どう見ても危ない人です本当に(ry それを止めない俺も似たようなもんだろうけどな。 では、作業を開始しよう。 とは言っても俺は見てるだけだけどね。 手先の不器用さでは、誰にも負けない自信が俺にはある! 最初にやること、まず実装繭の重心を調べる。 どうやらこの重心に偽石があるようで、間違ってその周辺を切ってしまうと中身を傷つける可能性があるそうだ。 重心から一番離れた面を切り開き、そこから観測するのがこの記事の目的らしい。 妹は器用に重心を見つけると、その反対の辺りに4cmほどの円をペンで書きこんだ。ここが中身を見る窓になるらしい。 そして、箱から取り出した薄緑のシートを、書きこんだ円より大きく8cm程切り取った。 「このシートはね、実装繭からできた医療用保護膜なんだよ。だから切り取った繭の代わりになるんだって」 「おまえ、医療用なんてどっから手に入れて「えへへ〜♪」はぁもういいよ…」 お兄さんはお前が犯罪者にならないことを切に願っています。 サクッと、先の小さいオペ鋏を繭に入れる妹。俺はもう何も言わん。 サクサクと切り進み、ペンで書いた円をほぼ一周する。 レェー? あれ、なんか繭から声がした気が。 「この子達は中で変態しながらしっかりおきてるんだって、 完全に変態が終わると初期化するから中に入ってた記憶はなくなるみたいだけどね〜。 じゃあアニキ、そこの仔実装服とって」 俺が箱の中にある仔実装服を取り出している間に、妹は手早く透明シートに偽石コーティング剤を塗っていく。 接着剤がわりだろうか? 「じゃ、繭を切った部分とっちゃうから、その実装服を繭に乗せてあげて」 取り出した時に気づいたことだが、この実装服洗ってねえ…腐った生ゴミみたいな野良実装の臭いがついたままだった。 たぶん妹に考えがあるのだろう、俺は何も言わずに繭に服を乗せた。 レゥレゥ-? 何が起きているのかわかっていないのだろう、繭の中から不安げな声が聞こえた。 後でリンガル持ってこよ。 「この服はアタシが殺した子のでね、すっごく泣きわめいて楽し…コホンッ。 あーっと、臭かったと思うけど、これが大事でね。あと中身は光にすごい弱いから遮光の為に使うの」 そっと、ピンセットを服の下に差し入れ、切った部分をゆっくりはがしていく。 その時、光が入らないように手で優しく抑えていた。 スッと服の下から緑の繭が取り出され、それを確認するとすぐに、 コーティング剤をかけた透明シートを実装服の上からペタリと貼り付けた。 「さ、これで手術は完了っと♪って痛っ!」 ホッと息をついた妹にチョップをかます。 「ちょっとまてや、服があって中身が見えないじゃねえかよ」 「……はぁ、見てればわかるよバカアニキ。チョップのお代は檜乃國屋のクレープだかんね」 どう見ても仔実装の服で中身が隠れてしまっている。 これでは意味が無いと文句を言おうとした時、変化が起きた。 シートの下に入っていた実装服がシュルシュルと繭の中にのまれていく。 「ね。実装服は体の一部みたいなものなの。だから中身が勘違いして取り込んじゃうみたい」 繭に取り込まれた服は中の…緑と赤っぽいマーブルの液体? に呑まれて綺麗サッパリ消えていた。 少し明かりを抑えた居間、その机の上に繭があった。 繭の真中には切り取られた窓があき、中身が外から丸見えになっている。 中にあるのはなんだろう? 粘液というかゲル状のなにかというか、ともかく特定の形はない。 赤と緑、それと少しの茶色が混ざりきらないままになったマーブル色の何かだ。 俺がゆっくりと顔を近づけていくと、中から… レゥー? レウレウレッルゥー♪ 聞いたことのない声だった。 実装石の声はデス・テス・テチ・テチュ・レフと、だいたいこんなところで、それほど鳴き方に種類がない。 これが実装繭の時の声ということだろうか? 「さ、リンガル出して」 「お、おう」 何のためにここまでやったのか、こいつが良蟲か糞蟲か調べるためだったって忘れてた。 珍しいものを見て目的を忘れちゃしょうがない。 俺は少し息を呑んで繭に声をかけた。 「俺の声がわかるか?」 『…………………ワカルレゥ、ウジチャオネムレゥ…デモカタカタピカピカデ…オキチャッタレゥ…』 どうだろう、まだこれでは糞蟲かどうかわからない。 ただ、すごく眠そうだというのはわかったが、それだけだ。 「おお、液体が喋ってるよアニキ!」 『レゥゥ? ママレゥ-♪ ママーママー…ウジチャハヤクデテ、ママニダッコシテモラウンレゥー…♪』 どうやら妹の声を親実装と勘違いしたらしいく、レゥレゥと甘えた声をだした。 あー…それはうちの妹にゃ逆効果なのにな…。 「なにこの可愛いイキモノ!」 「なん…だと…!?」 妹がなんか萌えていやがる。 実装石の形でなければ大丈夫ってことなのか? そして、ふと今気がついたことなのだが…、この液体生物、顔があった。 液面のところをよく見ると、赤と緑の目がぷっかりと浮いていた。 ほっぺと鼻の穴、兎唇っぽい形が液面に浮き上がっている。 なんだこのキモいイキモノ! しばらく話してみたが、こいつは糞蟲ではなかった。 つまり、俺の狩る対象ではないということだ…、が、殺したい、キモすぎて、生理的に無理ってやつだ。 「ねー♪ マユちゃんがんばっておっきくなろうね〜♪ ママまってるからね♪」 だが、妹が気に入ってしまった。 お兄ちゃんはお前がよくわからなくなってしまったよ…。 『ウジチャネムネムレゥ…ママ…ウジチャガンバルレゥ…イッパイイッパイアソブレゥゥ……………』 そういうとパッタリと繭はしゃべらなくなった。 どうやら変態がはじまったようだ。 しだいに繭の中の粘液が、プクプクとメレンゲ状の細かい泡になっていく。 膨らんだ泡はかぶせたシートまでも覆い尽くし、中身がわからなくなってしまった。 あれから数日。 学校から帰ってくると、妹は繭の前に陣取った。 リンガルを手にとって、自前の胎教を聞かせてやっているようだ。 「おまえも飽きないな、どんなの聞かせてるんだ?」 「秘密♪」 何が楽しいのか、見ためには繭に変わったところは見られない。 よく耳を澄ますとコポコポと動くような音が聞こえるくらいだ。 もちろんあれから一度も声を出すこともない。 俺はもう飽きてきていたので、後は妹に任せよう。 変化が起きたのはその日の夜の事だった。 オヤジとおふくろが寝入ってから、自室で漫画を読んでいると突然妹が部屋に入ってきた。 おま、もしアレとかの時だったらどうすんだ! 鍵つけようかな。 「ドアくらいノックしやがれ、なんだ突然」 「ふふ、ちょっと来てよ、面白いことになってるから」 暗い廊下を歩き、居間に入ると、いつものように繭が籠に入れられて机の上に置いてあった。 だが…なんだろう、違和感を感じる。 中は相変わらず見えないし、特に色が変わったというわけでもないが。 ……………そうか。 「少し大きくなってないかコイツ」 「えへへ…わかった?」 10cmほどだった繭が、少しだけ12cm位だろうか? 一回り大きくなっていたのだ。 それから毎日、繭は大きくなっていった。 その間も妹は胎教を続け、赤ん坊と同じくらいに大きくなったそれを抱っこしてゆすってやっている。 流石に両親も気味が悪くなってきたのか、妹から繭を奪おうとするが。 「大丈夫だから、これはわかってやってるの。 もうちょっとだから、もう少しだけ好きにさせて」 妹は頑なに繭を手放そうとはしなかった。 そしてとうとう、その日がやってきた。 机の上の繭は、既に籠に収まらなくなり、大きなクッションの上に鎮座している。 その大きさは1m弱はあるだろうか。 既に実装石の大きさを超えていた。 「大丈夫なのかこれ、こんな変化聞いたことがないぞ?」 「大丈夫。これで正常だから」 妹がゆっくりと繭の表面を撫でていると、ピキッと小さな音がした。 断続的に聞こえるその音は、しだいに感覚を狭め、 一層強い音がすると同時に、表面の糸が一本、ぷっつりと弾けた。 目の前でスルスルと解けていく繭。 二ヶ月前に開けた窓はとっくの昔に膨れた繭に覆われ、消えていた。 そして最後に、ゴッという大きな音がすると、繭が左右に割れ、緑色の中身が座っていた。 それは、一見するとうずくまった子供に見えた。 服は緑、髪は金髪のような茶色、ほわりと背中を包むほど豊かで、目は赤と緑のオッドアイ。 だが、その手には小さなミニチュアの如雨露が握られていた。 「こいつ…実翠石の仔だったのか?」 ゆっくりと目を開けた、マユちゃん?(妹命名)はどっからどう見ても実翠石だった。 あの繭から極々稀に変態するという実装石の上位種だ。 服は緑だが丈が長く、ヒラヒラとしたドレス状。 頭巾なのか? 白い垂れたレースが可愛らしい普通の実装石にはない白い物だった。 「違うよ〜、実翠石は子供が作れないから。アタシがそうなるように胎教したの」 「ママー、やっと会えたです。私やっと出れたんですぅ」 こうなるともうデスデスではなく、普通に人間の言葉をしゃべるんだな。 などと感慨深く見ている俺の前で、ぴょんと、妹に抱きつくマユは幸せそうに目を細めていた。 あ、でも顔は実装石っぽいんだなやっぱ。 「普通はね、繭になったらまともに喋れないはずなの。 でもこの子は喋れたから、特別頭がいい子だったんだね〜流石マユちゃん♪」 「おいこら、んじゃもしかして最初から…」 こいつ、ただ本当に中身が見たかっただけで、飽きたらSATUGAIするつもりだったのかよ! そんな様子を一切出さず、妹はマユと戯れていた。 いと恐ろしきはなんとやら、こいつは一度矯正施設に入れたほうがいいのでは…と兄は切実に思います。 まぁそんなこんながあって、オヤジとおふくろが驚いたこと驚いたこと。 実翠石は非常にレアな実装種で、他の実装種と同じように登録が必要なだけではなく、 体内に居場所を特定させるための小型発信機が埋め込まれた。 いきなり子供ほどの家族が増えるのだ、必要な物は色々あった。 オヤジが財布を見ながらため息をはいていたが…合掌。 最初は里親に出そうと言っていた両親も、マユが家事や庭の手入れもできるほど賢いと知ると、 まぁしょうがないわねと認め、妹は胸をなでおろしていた。 あれから数年、妹は大学で知り合った野郎と結婚して家を出た。 マユはもちろん妹についていったさ。 おふくろが泣きそうだったけど宥めるのに苦労させられた。 俺? うちは自営業なんで家を継ぎますよ? 長男ですし。 そして目の前には三匹の蛆実装がレフレフと寝転がっていた。 そろそろ三桁に迫る蛆の繭作りも、一度たりとマユのような実翠石になることはなく、 良くて仔実装サイズで死んでいった。 あの時俺が託児されたのはある種奇跡みたいなもんだったのだろう。 だがチャンスを掴んだのは妹で、俺じゃなかったってだけだ。 俺の指先で蛆ちゃんがレフーンと鳴き、水便を漏らす。 そろそろこいつも繭になる頃だ。
| 関連スク一覧 |
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| 1 Re: Name:RRB 2015/02/14-01:34:16 No:00001636[申告] |
| 実翠石の解釈はスクを書かれる人の分だけありますが、とにかく他の方の作品は良い刺激になりますなー。 |
| 2 Re: Name:匿名石 2015/03/16-20:54:07 No:00001675[申告] |
| なんというかこういう平穏なのもいいな
実装石でなければ |