「あなたの年金申請は認められません」うつ病女性の涙 精神・発達障害で不支給が2倍増?ナゾを追った
国の公的年金は高齢者だけが受け取るものではない。病気やけがで一定の障害がある場合、現役世代でも受給できる「障害年金」という制度がある。全国で240万人近くが受け取っているのだが、昨年からこの障害年金で異変が起きている。支給を申請しても「障害が軽い」と判定され、認められないケースが増えているのだという。どれぐらい増えているのか、記者が各地の社会保険労務士に協力してもらってサンプル調査をしてみると、精神障害と発達障害では、不支給と判定される人の割合が2倍に増えていた。なぜなのか。取材すると、いろいろと不可解なことが出てきた。(共同通信=市川亨) 【写真】「肛門に金属製のナットが…」「天井が便まみれに」 「人間扱いしていない」 カメラに写っていたのに… 76人が関与 22年
▽「助けてほしい」 東海地方に住む20代の城島志帆さん(仮名)は、もともと発達障害があり、対人関係が苦手だった。高校時代にはいじめを受け、不眠や自殺願望があった時期もある。 結婚、出産したものの子どもを亡くす不幸に見舞われ、5年ほど前にうつ病を発症した。意欲が湧かず、仕事はできない。現在は実家で訪問看護を受けながら両親と暮らす。 障害年金はうつ病でも要件を満たせば受給できる。両親との生活が精神的な不安定さの一因でもあるため、城島さんは「障害年金を受け取って、1人暮らしをしたい」と昨年、社会保険労務士に手続きを依頼した。 申請に必要な診断書を主治医に書いてもらったところ、城島さんの日常生活能力は、日本年金機構のガイドラインに当てはめると、2級の年金支給(障害基礎年金の場合で月約6万9千円)が目安になるという診断だった。障害年金の等級は重い順に1~3級と定められている。 ところが、結果は不支給。理由は、障害の程度が軽いとみなされたためだ。年金機構から届いた通知では、判断の根拠の一つとして「抗うつ剤の処方がされていない」ことが挙げられていた。
ただ、これには理由がある。城島さんは一時期、薬を過剰摂取(オーバードーズ)したことがあり、「またオーバードーズしてしまうのでは」という不安から、年金を申請した頃はあえて薬を処方してもらっていなかった。現在は服薬している。 「こんなにつらいのに障害年金、もらえないんだ…」。城島さんはがっくりした。「助けてほしいので、認めてほしい」。取材にそう声を絞り出した。 ▽「揚げ足取りのようだ」と社労士 不支給という結果は、城島さんの申請を代行した社労士の白石美佐子さんにとっても驚きだった。依頼を受けたとき、城島さんは母親に連れられて来て、面談中も泣いてうまく話せない状態だった。白石さんは「これだけ重いケースだったら、当然受け取れるだろうと思った」。 一方で白石さんはこうも話す。「2024年に入ってから、年金機構の判定が明らかに厳しくなった。診断書とは別に、昔のカルテの開示や主治医の意見照会を求められることが増えた。不支給にする理由を何とか見つけようとしているとしか思えない。城島さんの薬についての指摘も揚げ足取りのようだ」 取材すると、ほかの社労士からも同様の声があった。そこで、障害年金を専門に扱う各地の社労士にデータの提供をお願いして、サンプル調査をしてみることにした。
【関連記事】
- 「年寄りだまして何が楽しいねん」…ふざけた態度に郵便局長が一喝、撃退
- 「男は仕事、女は家庭」を選んだ方が得になる国 専業主婦を選んだ50代が抱く「なぜ自分だけ…」
- 【写真】「発達障害ビジネスだ」専門医が批判、学会も認めない療法を勧めるクリニックの実態 患者の頭に「磁気刺激」、治療代に高額ローン組ますケースも
- 懲戒処分…アダルトビデオに出演した消防士 匿名の情報提供あり、写真も添付され発覚 友人に勧められた26歳、5回も出演…報酬は計25万円だった
- 「お金を渡すと、彼の機嫌は良くなった」26歳の女は、82歳の男性をなぜ刺したのか 知的障害、ADHD、DV…搾取され続けた日々、裁判員は「やるせない」と表現した