フジテレビ金曜ドラマ枠(7時57分~)で先週から始まった『天誅 闇の仕事人』は、なんと初回視聴率8.4%も獲った。前番組『家族の裏事情』は最高が6.5%、平均4.5%だったことから驚きの声で迎えられている。


でも、いまの時代に結構なまでに斜め上を行ったドラマとなっていて、戦国時代からタイムスリップしてきた主人公の女忍者がおにぎり一個でやるかやらないかという裸の大将キャラだったり、いちいちパルクールみたいな大げさな動きをして移動するなどツッコミどころ満載。逆にそういう馬鹿馬鹿しさがあって「思ったよりもヨカッタァ!」という声も聴かれた。


それで、この手のドラマファンの間で既視感となったのが、あの!『京都マル秘指令 ザ新選組』(1984年2月~5月放送)だった。


当ブログ記事 人間大文字焼きってなんぞや!?(『京都マル秘指令 ザ新撰組』第6話レビュー)

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-10986381560.html


『京都マル秘指令 ザ新選組』とは、「ハングマン」シリーズや「赤かぶ検事奮戦記」シリーズで有名なテレ朝金曜9時枠で放送した、わずか1クール13話だけの〝知っている人は知っている、知らない人は全く知らない〟カルトドラマである。概要はウィキペディアに載っているのでそれを参照にしてもらいたいが、なぜ“仕置人”なんてタイトルから想起されるはずの「必殺」シリーズではなく、同じ現代劇ということから必殺シリーズの現代版として有名な「ハングマン」シリーズでもなく、京本政樹が共通して出演しているからって、あの!と付くくらいの『京都マル秘指令 ザ新選組』であったのか?


というわけで、今回の記事はそれを探っていきたい。


『京都マル秘指令 ザ新選組』は、朝日放送 - 松竹(京都映画撮影所)による制作で、「必殺」シリーズと同じスタッフによって作られた。また、朝日放送の局側プロデューサーに、「ハングマン」シリーズ立ち上げからの奥田哲雄がいたことから、両シリーズと姉妹作品とも呼べるくらいのものになっている。


「必殺」シリーズは、昼行灯でもその裏家業はプロフェッショナルな殺し屋という武士や町民が、義憤からこの世で晴らせぬ恨みを晴らすため、夜の闇のなかで悪党どもを暗殺する話。「必殺」シリーズの現代版である「ハングマン」シリーズは、悪党どものやってきた悪事を白日の下にさらしていき、こちらは殺すのではなく、社会的制裁(警察への逮捕、地位失墜)で成敗する話となっている。まあ、ここらへんの違いは結構知られているところではある。


当ブログ記事 ザ・ハングマンのあのエロさはどこから来ている!?

http://ameblo.jp/goro-chayamachi/entry-11570461624.html


「ハングマン」シリーズの京都版という位置づけで作られた『京都マル秘指令 ザ新選組』は、古都京都の文化財を金銭目的のために破壊しようとする京都マフィア(京都中のヤクザの寄り合い)と戦う組織として、京都を守る現代の新選組=ザ新選組が立ち向かう話。ちょっとずつ違いがあるが、源流である「必殺」シリーズから勧善懲悪な悪党退治のドラマなのは一貫して変わりはない。


それで、『京都マル秘指令 ザ新選組』が「必殺」シリーズや「ハングマン」シリーズと決定的に違うのは殺人事件とかのコトが起こってから動くのではなく、コトが起こる前に悪党退治をするのだ。奥田プロデューサーは世界初の「防犯ドラマ」と呼んでいた。ただ、コトが起こる前に片付いてしまったら、見所もカタルシスもあったもんじゃないので、正確には京都マフィアの陰謀が成功して世に露見する前に、ザ新選組がそれを阻んで失敗に終わらせるというのが毎回のストーリー展開だった。


文字だけで書くと、なかなか面白いような展開に感じるが、そこは伝説のカルトドラマ(笑)、びっくりするほど斜め上の方向に行っている。


主役の古谷一行が演じる役は、元は京都の国立大学医学部に講師として勤めていた有能な医師で、そのキャリアから最新の科学技術や国際事情にも詳しいなど頭脳明晰。そこに誰よりも優しい心根を持ち合わせているから、頼もしさ抜群のリーダー・キャラとなっている。もちろん男前でもあったりと、これ以上ない格好良い男なのである。そう、ここまでは良いのだ。


ザ新選組は、廻りのメンバーが足を引っ張っている。


横山ノックにガッツ石松とカタカナを二人も起用している。ノックは剣道の達人に、ガッツはそのまんま元ボクサーというデキる男のキャラ設定なのだが、どちらも見るからに仕事にエロが絡んでくると本来の目的を忘れてしまったりする俗物ぶり。それから、いまでは人生を達観した、まさに達人キャラが似合う京本政樹もまだまだこの頃は青二才キャラで、美青年なのにノックから「ぶっさいくやなぁ!」と関西ならではの方言で失敗をいつも叱責されているトホホな設定。


なので、防犯ドラマといえどもすんなりと防犯出来ず、最後のほうまでザ新選組の行動は失敗続きとなってしまって、そこら辺がじつに情けない。小賢しい悪党よりも一枚も二枚も上手で、スタイリッシュにキメていくハングマンの行動力が上の上ならば、ザ新選組の行動力は中の下くらいしかない。毎回京都マフィアの目標というか意気込みが掲げられるサブタイトルで、第2話「脅迫2 ナンバーワン芸者の強○裏ビデオを作るぞ!」なんてのは、ザ新選組メンバーにおける負の設定を逆に活かした、ほんとサブタイトルまんまの話となってしまう。


京都マフィアは有名女優の裏ビデオが高額でも飛ぶように売れてることを知って、ならば!と京都で一番人気な芸妓(芸者のこと)の裏ビデオ、それも付加価値として実際にレ○プされているセンセーショナルな内容で作ることを計画する。ザ新選組の雇い主・御前からの指令(これがいわゆる番組タイトルの〝京都マル秘指令〟)により、早くも情報入手したザ新選組は、先手を打って裏ビデオ撮影業者の捜索と狙われた芸妓当人の身辺警護に当たった。しかし、ポルノ男優に扮したノック&ガッツによる裏ビデオ撮影業者の捜索は役得ばかりに目がくらんでアテが外れてしまう。一方、身辺警護担当の京本政樹もプラバシーが無くなった芸妓から拒絶され続けて手を焼く始末。そして、芸妓の“彼氏と二人きりでデートしたい”という泣き落としにとうとう折れてしまい、沈着冷静なリーダー・古谷の判断も仰がずに身辺警護を独断で解いてしまった。その隙に、彼氏の弱みを握って通じていた京都マフィアにまんまとしてやられてしまうのだった。


レ○プされる芸妓を演じたのは、にっかつロマンポルノに当時出演中だった小田かおる。ロマンポルノの現役女優が、端役の脱ぎ要員とかじゃなく、ゲスト主演で抜擢されて、しかも本職のときと同様に惜しげもなく裸となってレ○プまでされてしまう役というのが驚き。さすがは当時一番ぶっ飛んでいたテレ朝金曜9時枠のドラマである。テレビドラマ初出演だった小田かおるは、このがんばりが認められたのか、1980年代末に入るまでの短い活動期間ながらも、結構な数のテレビドラマに出演するようになっていく。


失敗続きのザ新選組の窮地を救う美味しい役どころは、やはり主役のスーパーマン的な古谷一行が持って行って、強○裏ビデオが世に出ることを悲観した芸妓が自殺しようとしているところに駆け付けて一生懸命に説得して防ぐ(一応、ここがこの回唯一感動の場面だ)。そしてザ新選組は裏ビデオが編集・量産されようとしている場所をようやく突き止めて、ただ一本しかないマスターテープの奪還に成功し、一件落着というわけ。


さて、アクションドラマといえば、お待ちかねのクライマックスにおける制裁シーンである。「必殺」シリーズは表家業で使うアイデア溢れる殺人道具と映像美で魅せたり、「ハングマン」シリーズはハングマンたちの巧みな戦術で悪人を陥れ、奇想天外なハンギングを仕掛けるのだが・・・


『京都マル秘指令 ザ新選組』は、その回の悪事を実行している組のところに正面切って殴り込みに行って格闘するというストレートぶり。それで武器はというと、木刀と素手だけ。あと、消化器を顔に向けて撒き散らすとかそういうの。


ショ、ショボい・・・。


〝京都を守るザ新選組!〟と名乗りを上げるものの、そんなのは当然相手は頭んなかにお花畑があるような奴が言うメルヘンチックな言葉だとしか受け取らないから、京都マフィア上層部の命令によって呉越同舟で一緒に動いていた敵対組織の裏切りによるカチコミだと勘違いさせるのだ。それでヤクザどうしの抗争に発展させて、敵対する双方の組員全員が逮捕されてガタガタになって計画挫折というのが毎回のオチ。一件落着した後、「ハングマン」シリーズに喩えればゴッドにあたるザ新選組の雇い主、池辺良演じる御前・松平が、ザ新選組の連絡役の、まあ要は愛人の春川ますみをはべらせながら新聞報道で確かめて「これで京都は守られた」とか調子の良いことを抜かす。


ショ、ショボい・・・。


そう、このショボさなのだ。『天誅 闇の仕置人』は、前回の記事でも示したように、誰だよ!?という華がない主役・小野ゆり子に、この手のドラマに意味不明な泉ピン子、他局のバラエティで組んでいる京本政樹と柳沢慎吾をそのまま持ってきたり、キワモノ起用の三ツ矢雄二というどうしようもなさ。もうこの段階で、キャスティング的に『京都マル秘指令 ザ新選組』と肩を並べていて、そこに明後日の方向全開なストーリー展開から来るショボさが同じテイストを漂わせている。


『天誅 闇の仕置人』は、昨今のドラマにありがちな巨悪な陰謀に立ち向かうんじゃなく、一応は前作『家族の裏事情』に続いてホームドラマの体裁をとっていて、ご近所トラブルが題材。第1話は、DV旦那から逃げても逃げても付きまとわれて苦しめられている主婦を世話好きおばさんの泉ピン子が救うため、その直前に助けてやった小野ゆり子演じる女忍者に命令してDV旦那を退治させる話だった。それで、女忍者が最後仕留めて息の根を止めようとするところに、泉ピン子が「視聴者からのクレームが来たらヤバい、殺しちゃダメ!」とビビるプロデューサーの心の声を代弁した「おやめ!」と慌てて追加命令。その代わりになぜか額にバッテン印を付けて警察に引き渡すのだった。しかし、逮捕容疑がDVだけなので捕まってもすぐに釈放されるとのことで、精神ボロボロで疲れ切っていた主婦は世を儚んで自殺してしまうというバッドエンド。この瞬間、多くの視聴者はあっけにとられたはず。ちなみに、古武術の達人設定という思わせぶりな京本政樹は結局何もしなくて、「組紐屋の竜」アゲイン!を期待していたファンはさぞがっかりであっただろう。


今後は期待出来るのか、いややっぱり期待出来ないのか、それでも『天誅 闇の仕置人』はカルトドラマの仲間入りを果たそうとしている。

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