子供のように英雄を目指すのは間違っているだろうか?


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作:生乾きマナティ
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3話 祭り


カイルスの住む町は年に一度祭りが行われる。

 

神と人の時代を称え

かの地の英雄たちを称え

そして()()()()()の成就を願う

 

そんな祭りの季節が今年も訪れていた

 

♦♦♦

 

町の広場では多くの町人たちが食べて飲んで歌って騒いで、誰もかれもが楽しそうにはしゃいでいた。

そんな中カイルスは広場の隅でボーっと騒ぐ人々を眺めていた。

 

「おやおやこんなところにボッチで何してるんだ~い?」

 

「...ヒュプノス様起きてたんですね」

 

カイルスに声をかけてきたのはボサボサな長髪を垂らして今にも眠りそうな顔で佇むこの町でただ一人の男神ヒュプノス神だった。

 

「皆お祭り騒がしくしてるから寝たくても眠れないのさ~」

 

聞いてるこっちが眠くなりそうな間延びした声でヒュプノスはそう答える。

 

「それは残念でしたね、皆この調子だと明日の昼まで騒いでそうですよ」

 

そう聞いたヒュプノスはえぇ~..と不満を漏らしながら騒ぐ人々を眺めている。

 

カイルスにとってヒュプノスはこの世界...いや前世含めて初めて邂逅する本物の神であったが、蓋を開けてみればヒュプノスは眠りを司るからかいつもどこかで寝てばかりで神らしいことは恩恵を刻む以外何もしてないカイルスからすればホントに神なのかと疑問に思われるほど残念な神であった。

 

「カイルス君は皆に混ざらなくていいのか~い?」

 

「...自分はあんまり騒ぐのとか得意じゃないんで」

 

「そうなのかい?僕としてはカイルス君はパリピの素質あると思うんだけどな~」

 

(どんな素質だよ...)

 

そうヘラヘラと笑いながら話すヒュプノス。

 

(やっぱりこの(ひと)苦手だわ)

 

いつもヘラヘラかすやすやしてるヒュプノスはまったく考えの読めない神でありカイルスが苦手意識を覚えるのも無理はなかった。

 

そんなヒュプノスに対してカイルスは以前からずっと考えていた疑問をぶつける。

 

「ヒュプノス様一ついいですか』

 

「ん~~?なんだいなんだい~」

 

カイルスはヒュプノスの目をじっと見つめ問いかける。

 

()()()()()()()()()()()()()()()

 

そう聞かれたヒュプノスは特別驚くこともなく答える。

 

「なんだ~そんなことか~。それはね...「キャアアアアアアアアア!!」」

 

ヒュプノスが話しきる前につんざくような悲鳴が町に響き渡る。

 

「!!なんだ..!?」

 

悲鳴は町の入り口のほうから聞こえてきた。

そしてその方面に視線を向けると町人の一人が慌てて走ってくる。

 

「た、大変だ!!モンスターの群れが!ま、町の入り口に!!!」

 

その報告に先ほどまでの楽しい雰囲気が一気に混乱と恐怖に包まれる。

 

「モンスターの群れだって...!?」

 

「おやおやこれは大変なことになったねぇ~」

 

周りの状況にも動じずヒュプノスはどこか他人事のように呟く。

 

「言ってる場合ですか!!ヒュプノス様は早く非難してください!」

 

「おやおや~気遣ってくれるのかい?いい子だね~」

 

「ヒュプノス様にもしものことがあったらこの町全部終わりなんですから当たり前でしょう!」

 

恩恵の力は強いが、それは神ありきの力でもある。

もし恩恵を刻んでくれた神が送還されるようなことになれば全ての眷属は()()()()()に逆戻り。

モンスターに対抗する力を失ってしまうことになる。

 

「とにかく!俺はゲルマンさん達を手伝いに行きます!ヒュプノス様は絶対に安全なところに避難してくださいね!」

 

「はいはいわかったよ~」

 

気の抜けた返事をするヒュプノスをよそにカイルスは近くに置いておいた盾と剣を手に取って町の入り口まで走り出す。

 

「気を付けるんだよ~~」

 

そんなヒュプノスの声はもうカイルスに届いていなかった。




取り合えずオラリオまで早く行ってほしいから駆け足気味で話を進ませます。
ちなみにヒュプノスは何となく下界に降りてきたけどあちらこちらに移動するのが面倒くさくて降臨してからずっとカイルスの住む町に住んでるって感じです。
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