それはいつの事だっただろうか...
あんなに美しいものを目にしたのは...
あんなに綺麗な音をきいたのは...
初めてだったんだ。
「おい...お前」
「確か貴様は...ヘラ達が異様に警戒していた...」
「おいおい、あのババアども...」
「それで...何のようだ?」
「ピアノ...」
「は?...」
「それ...弾いてたんだろう。もっと聴かせろ」
「ぷっ...」
「おい...笑うんじゃねえッ」ブワッ
あいつ...圧倒的格上の俺様のオーラを見ても笑ったままでいやがる。
だが...何故だろうな...他の奴と違ってあいつには本気でイライラしねえんだ。
「全く...あの変態女神の所にいる厄災と聞き、どんな化け物が出てくるのかと思えば...まさか、ただの音楽好きとは...」
「ああ?違えよ...俺様はお前の音が良いんだ。音楽好きって訳じゃねえよ。それより早く続きだ...曲を聴かせろ」
そう言ったらあの女...なんて言ったと思う?
それはな...
「.....この...たらしがッ」
「はあ!?何だてめえ...俺様を誰だと「知るかッ」なってめえ、そっぽ向くんじゃねえ!おいこらっ聞いてんのか!」
あの女...何故かは知らねえが顔を真っ赤にして演奏を辞めたやがったんだ
俺様は早く続きを聴きたいのに...
そして、そうこうしている内にその日...俺様は寝床としているアホの所へと帰ったのさ。
だが...それから意外にも俺様とあの女の関係は続いた。
何故かって...
俺様はどうしてもあの女の演奏が聴きたかったんだ。
だが...ある日の事...
「ヘラファミリアとゼウスファミリアを狙うだと...」
「ああ...彼等は今、黒竜討伐失敗でこの上なく弱っている。そこを突けば必ず勝てる。そして僕達「そうか...じゃあ死ね」は.....」
そこに舞うは一条の鮮血。
そして...
「「「「フィン!?」」」」
「おい...ロン...アンタ...何してん」
「黙れ...俺様は...お前らはそこまで腐ってないと...そう思っていた。だが...今回の件で、見逃す理由は無くなった。だからよ...お前らは」
「もう...いらねえ」
その夜〜
一度...全てが終わった...
そして...
数年後〜迷宮都市オラリオ郊外〜
「ロン...おはよう」
「よう、おはようさん...アルテミス」
「ところでロン...また出かけるのか?」
「ああ、最近は忙しいからな...アンタにはまた、迷惑をかけるかもしれん」
その言葉に彼女は...
「そんな事はない。今までも私と...私の眷属達も守ってくれたからな」
「ケッーケッケッケ。そうか...そうかもな...まあ、とりあえず俺様はオラリオに出向きあのガキの面倒を見なきゃいかんからな...じゃあ、あいつの事は任せた」
そう言って彼は彼女に背を向け...
「そうか...気をつけてな」
「ああ、あんがとよ」
ドオォォォンッッッッ!!!
その轟音を響かせ彼はその場を後にした。
そして...
「なあ...君はどう思う...奴は何者で、何をする気なのだろうか...」
「なあ、聞かせてくれないか...」
アルテミスと呼ばれた彼女の後ろで未だ深き眠りにつくのは...
「元ヘラファミリア...」
「『静寂』いや...アルフィアか」
そこには三色の結晶の中で眠りにつく
「.....」
「奴は私や他の者も...恩のある我々だけは助けると...そう言っていた」
それは本来の彼女の立場なら...止めなければならなかったのかもしれない
だが...
「だが、私は止められなかった...」
「なあ、下界の子よ...私はどうすればよかったのだ...」
彼女が眠りにつく中...一人の女神の葛藤は続いていた。
「さあ...
「てめえも喰らって俺様は...」
全ては...Roseliaの為に...
ケケケッ俺様に何の用だ?
良い音だっただろう?
「あの人達を自由にして見せる」
彼はいつだって誰よりも『自由』で...
誰よりも...彼等を...
大切に思っていたのだ...