ルールは砂時計が落ちる3分間まで戦り合うこと。
本当なら5分でもよかったんだけど、フィン団長が決めたことに口出しはできないしウチを気遣ってのことだろうから無下にするのも失礼よね。
実戦を想定して武器はしっかり本物を使うから尚更かな。
手合わせの相手をするのは、フィン団長に呼ばれてた金髪の綺麗な女の子。
名前はアイズ・ヴァレンシュタイン。
ウチより2つ下で腰に携えてる剣が得物みたい。
ウチはここへ来たばかりだから有名かどうか知らないけど・・・ギャラリーである団員達の人数からしてかなりみたいだね。
「それじゃあ、僕の合図で始めよう。準備が整ったら言ってくれ」
フィン団長がそう言って、私はとっくにできてるから伝えようとすると・・・先に彼女が私へこう伝えてきた。
「えっと・・・剣はあそこにあるから借りていいよ・・・?」
「え?あー・・・」
フィン団長と同じように気遣ってくれて嬉しいけど、ウチはやっぱりこっちの方がいいんのよね・・・
・・・あんまり見せたくなかったんだけど、ここは使うしかないか。
「お気遣いどうも。でも、自前のがあるから大丈夫よ」
「そうなの・・・?それなら・・・」
そうしてフィン団長に準備が整った事を伝えると、ウチとアイズは数歩離れて対峙した。
広場に響き渡る始め、というフィン団長の掛け声。アイズは剣を引き抜いて構えを取る。
周囲の団員達がウチが武器を持っていないのに訝ってたり不思議そうに見てる中、ウチは手を肩の前に置く。
それから斜め下へ振り下ろすようにして指先に集中させた気を放出させる。
すると、気は黄色く光りながら真っ直ぐに伸びて細めの刃を形成していく。
十分に伸ばし切って、スピリッツソードは完成した。
久しぶりに使うからウチは軽く振って使い心地を確かめる。
うん。まぁ、問題ないでしょ。さて、それじゃあ・・・ポカンとしてるアイズをシャキッとさせましょうか。
「行くわよ、アイズ!」
「っ・・・う、うん。いいよ・・・!?」
彼女が返事をした瞬間にウチは踏み込んでから一気に接近すると、スピリッツソードを斜め上から振り下ろしてすぐさま横一文字に振り抜いた。
へぇ、流石は第一級冒険者ね。見事に反応して回避すると反撃に出てきたわ。
振り下ろされる剣をスピリッツソードで受け止めて押し返すと、一度離れてから今度は突き出してくる。
ウチは軽く跳び上がって上から叩きつけるように剣を弾くとアイズの肩を蹴り付けた。
体勢を崩してもすぐに立て直したら、また向かって来る。
こっちも接近してアイズが剣を振り下ろす前に足払いをして、彼女の意識を下半身へ向かせる。
その時を狙い目に剣を握ってる手の手首を掴み、背負い投げの要領でアイズを地面に投げ飛ばしたわ。
背中から叩き付けられて苦悶の表情を浮かべるアイズはすぐに立ち上がって剣を構え直す。
ウチもスピリッツソードを構えながら今度は巴投げで、と思ったところでフィン団長が間に入って来た。
「そこまでだ!アイズ、3分間と言ったはずだよ?」
「・・・うん。わかってる・・・」
表情こそ平静を装ってるけど、悔しさを噛み締めてるアイズは剣を鞘に納めてる。
ウチもスピリッツソードを消してると、困ったような苦笑いを浮かべながらフィン団長がは近寄ってきた。
観戦してた団員達は皆信じられないものを見てしまったって表情のまま沈黙してたわ。
「・・・やれやれ、君には驚かされたよ。君は一体何者だい?」
「・・・ウチはウチ、って事にしといてくれるとありがたいですね」
「はははっ。そうかい・・・それを条件に、とは言わないけど入団する気は君自身の本心ではどうなのかな?」
あらら。ウチの心でも読んでるっていうの?神様ならできそうだけど。
まぁ、ここまで派手に見せたからには・・・
「もちろん、入団させてください。フィン団長」
「ああ。歓迎するよ、ダフネ」