愛知在住の女性Ｔ様から「坂爪さんにプレゼントしたい沖縄の宿があります」とご連絡をいただいた。ソーシャル乞食と呼ばれて久しい、私の正しい使い方である。アホほど沖縄を愛するＴ様は、これまで８０回ほど沖縄に行き、先月だけでも３回沖縄に行った。すごい。好きのエネルギーはすごい。自分の好きな沖縄を坂爪さんにも楽しんで欲しいから、いつでも好きな時にホテルをプレゼントします。Ｔ様は、そのようなことを言った。

東京在住の女性Ｒ様から「三十歳の誕生日を迎えるのだが、人生的にいろいろ悩んでいる。沖縄に行ったら坂爪さんに会えますか？」とご連絡をいただいた。これはちょうどいいタイミングだと言うことで、Ｔ様がプレゼントしてくれたリゾートホテルに、一緒に泊まることになった。ノーカントリーという映画に出てくるシガーというキャラクターそっくりの店員さんが働く沖縄料理屋さんに行き、一緒にヤギ汁を食べた。ヤギ汁を食べながら、Ｒ様は箱ティッシュをからにするほど涙と鼻水を流した。私は、何度もシガーに睨まれた。

Ｒ様は言った。誕生日という節目を迎えるにあたって、これからどんな風に生きたいのかをいろいろ考えるのだけれど、やりたいことがない。好きなことがない。考えるよりも感じることを大事にしたいのに、そのためにはどうすればいいかとまた考えてしまう。考えることを止められなくて、頭はいっぱいになるのに、心はからっぽになる。両親が不仲で離婚をしていて、昔から幸せな家庭を築くことに憧れていたけれど、パートナーもいないし、自分で稼げるようになりたいと思っていろいろ試してみたけどなんだか違うし、不安や焦りがいつもあるのだけど、なにをしたらいいのかわからない。Ｒ様は、そのようなことを言った。

しいたけ占いを愛するＲ様は「坂爪さんも牡羊座ですよね！占いの結果を読みますね」と言って、牡羊座の運勢を音読してくれた。私は「そんなことはしないでいい」と言った。占いは、確かに人生を支える一助になる。だが、占いも情報の一つであり、考える方向に舵を取らせる。優しい言葉をかけてはくれるが、優しさに縛られて、結局身動きが取れなくなる。表面的には癒されるが、内面的には自己否定を繰り返す。占いで言われたことをやるのではなく、魂に言われたことをやらなければ。そのためには、一旦世間の声をシャットアウトする必要がある。しいたけ占いではなく、しいたげ（虐げ）占いが必要な時があるのだ。そのようなことを言いながら、私はＲ様を虐げた。

愛の虐げ占いを喰らったＲ様は「坂爪さんといたら、いろいろなことがどうでもよくなってきた」と言った。最高の着地点である。Ｒ様は言った。いま、ようやく安心できた。緊張が取れた。リラックスできた。五感を使うことができた。一人ではなかなかできなかったけど、一緒にいることでできた。一人では行けない場所も、誰かとなら行けることがある。それが、人に出会う醍醐味だと思う。奇跡は余白に舞い込む。なにをするかではなくて、なにもしないことが大事なのだと思う。那覇空港に行ったら、帰りの飛行機が遅延した。ターミナル内をふらふらしていたら「坂爪さんですか？」と声をかけられた。驚いたことに、声をかけてくれた女性はＴ様だった。飛行機が遅延をしなければ、Ｔ様にお会いすることはできなかった。Ｔ様の顔を見て、直接御礼を言えたことがうれしかった。奇跡は余白に舞い込む。だから、あんまりクヨクヨしないこと。閉じこもりたくなる時期もあるが、閉じこもり過ぎないで、外の世界に触れること。一人じゃ行けない場所に行こう。