男性機長ら、複数箇所を骨折 強い衝撃か 長崎・壱岐島ヘリ事故
患者や医師ら6人を乗せた医療搬送用のヘリコプターが長崎・壱岐島沖で転覆した状態で見つかり、3人が死亡した事故で、救助された男性機長(66)と男性整備士(67)が複数の箇所を骨折する全治約3カ月のけがをしていたことが、関係者への取材で判明した。海保などは着水時に強い衝撃が生じて2人が負傷したとみて、詳しい事故原因を調べる。
唐津海上保安部は9日、ヘリを運航していたエス・ジー・シー佐賀航空(佐賀市)を業務上過失致死傷と航空危険行為処罰法違反の容疑で家宅捜索した。漂流していたヘリの引き揚げ作業も終えた。
佐賀航空には午前9時過ぎ、唐津海保の職員ら約10人が捜索に入った。段ボールなど計8箱分の関係資料などを押収し、午後4時45分ごろに捜索を終えた。強制捜査に踏み切った理由について、唐津海保は「証拠隠滅の恐れがある」と説明した。
また、佐賀航空が依頼した民間のサルベージ会社が9日、福岡県宗像市の大島沖で漂流していたヘリを引き揚げて船に載せた。唐津港まで運び、翌10日に陸地へ揚げる方針だ。
第7管区海上保安本部(北九州市)などによると、ヘリは福岡和白病院(福岡市東区)から委託を受けた佐賀航空が運航。離島・対馬にある長崎県対馬市から福岡和白病院に患者を運ぶため、6日午後1時半に対馬空港を離陸したが、約1時間20分後に「消息不明」との通報があった。
7管などが捜索し、午後5時過ぎに壱岐島の北端から北東約27キロの海上で転覆した状態のヘリを発見。6人を救助したが、7日までに女性患者(86)と付き添いの息子(68)、男性医師(34)の3人の死亡が確認された。
関係者によると、海保は救助された男性機長と男性整備士、女性看護師(28)に入院先の病院で、任意で事情聴取を実施。男性機長は、緊急着水する際に使用するフロート(浮き具)を自ら「手動で作動させた」と説明した。国の運輸安全委員会の航空事故調査官もこうした状況から、「現時点では不時着水した可能性が高い」とみている。
ただ、男性機長らが複数の箇所を骨折し、機体のフロント部分も大きく破損していることから、ある程度の強い衝撃はあったとみられる。海保などは機長らの体調の回復を待って詳細な事情聴取をし、当時の状況を確認する模様だ。【川畑岳志、西貴晴、金将来、井土映美】