オジュウチョウサンの担当になって丸8年。長沼昭利厩務員(59)のホースマン人生で、これほど一頭に長く携わったことはない。その相棒と過ごす時間は残りわずかになってきた。
「さみしい気持ちとホッとする気持ちと半々かな。同世代のモーリスは種牡馬になって、今の現役馬のほとんどが生まれる前からオジュウは走っている。本当にありがたい存在だけど近代競馬でこんなに長く現役を続ける馬がいるなんて不思議だよね」と目を細める。
並外れた俊敏性や気性の荒さは11歳になった今でも変わらないという。
「最初にまたがった感じやパワーはすごかったし、(前肢で叩かれて)あばら骨が3本折れたり、生傷は絶えなかった。能力を引き出せるようにいろいろ工夫した。発走の直前にメンコの耳覆いを外してレースに集中できるようにね」
ラストランに向けての心境を尋ねると「やることはいつもと同じ。競馬が近づくと自分で体を作る。状態は前走と比べものにならない(ほどいい)し、オジュウなら最後にドラマを作ってくれるんじゃないかな」
長年、連れ添った長沼厩務員の思いに、オジュウなら全力で恩返しをしてくれるに違いない。