アームストロング上院議員、オラリオに立つ


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作:tknrdv
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四話 始動する計画


「この世界での真の力とは何だ?それは神に頼らない強さだ」

 

 アームストロングは帰路、アスフィに対して持論を展開していた。ヘルメス・ファミリアの本拠地に戻る道中、彼の頭の中では既に計画が練られつつあった。

 

「神の祝福に頼らずとも、人は強くなれる。俺がその証明だ」

 

 アスフィは困惑した表情を浮かべながらも、彼の言葉に聞き入っていた。

 

「ですが、この世界では神の祝福なしに強くなることは難しいとされています」

 

「難しいだと?」

 

 アームストロングは嘲笑うように言った。

 

「弱者の言い訳だ。本当の強さは自らの内にある」

 

 彼等がヘルメス・ファミリアの館に到着すると、ヘルメスが笑顔で出迎えた。

 

「どうだった?ダンジョンは」

 

「ふん、温いな。もっと強い敵がいると期待していたが」

 

 ヘルメスはアスフィの方を見た。彼女は小さく首を振り、後で話すという合図を送った。

 

「さて、アームストロング。オラリオでの生活はどうする?宿はこちらで用意しているが」

 

「神である貴様に頼るのは癪だが、少しの間だけ世話になろう。もう少しこの街について情報を集めたい」

 

 

 アームストロングはヘルメスの用意した部屋に身を置いていた。窓から見えるオラリオの街並みを眺めながら、彼はこの異世界での戦略を練っていた。

 

「この世界では神と人間の力関係が明確に分かれている。神が頂点に立ち、人間は彼らの玩具のように使われている...」

 

 そんなものは正常とは到底言い難い。

 

「どこの世界も同じか。秩序という名の下で、権力者が既得権益を貪る」

 

 そう、ただ権力者が神に変わっただけだ。

 

 ではどうするか。そんな事は既に決まっていた。

 

「神の支配構造をぶっ潰し、気に入らねえやつがいればぶん殴る。そんな世界をつくる」

 

 そう、それがアームストロングがこの世界にやってきた使命だ。

 

「俺がこの世界の人間達に違う道を示してやる。強き者こそが世界を変える......それがアメリカンドリームだ」

 

 

 数日間、アームストロングはオラリオを隅々まで探索した。彼は冒険者としてダンジョンに潜るよりも、街の構造、経済、そして何より権力の流れを理解することに時間を費やした。

 

 そんな中、アームストロングにとって気に入らないものが主に二つ。

 

 一つはギルド。規則で以って冒険者を縛る組織。何だそれは。秩序とは権力者が弱者を支配するための言い訳だ。

 

 そんなものは豚に食わせておけ。

 

 二つ目はこの地の頂点に立つフレイヤ・ファミリアとロキ・ファミリアだ。

 

 何が最強だ。そんなものは神から与えられた仮初の力に過ぎない。現に主神が天界に送還されれば、力を失いただの人間になる。

 

 そんなまやかしの力に頼るやつは最強でも何でもない。

 

 だが、そうした権力者共を打倒するには、今のアームストロングには不可能に近い。そこで彼は、自分の目的実現のためにある計画を始動させる。

 

 

 ある日、アームストロングはヘルメスにあることを提案した。

 

「商会を立ち上げたい」

 

 ヘルメスは驚いた様子だった。

 

「冒険者として成功する道があるのに?」

 

「俺の強みは戦闘だけじゃない」

 

 アームストロングは説明した。

 

「政治と経済......それが俺の真の武器だ」

 

「それで......どんな商会を?」

 

「まだ見ぬ商品の開発と、それを担う物流だ」

 

 アームストロングは答えた。

 

「ダンジョンから得られる資源を最大限に活用し、ゆくゆくは魔石にも手を出したい」

 

 ヘルメスは興味深そうに聞いていた。

 

「君のやりたい事を何となくイメージ出来たけど、それには多額の資金が必要だよ。それに、既存の商会との競争、そして魔石を扱うとなるとギルドからはいい顔をされない」

 

 ギルドは魔石の買取を一手に担っている。そこへ新興の商会が突然参入してくるのだ。彼等は黙っていないだろう。

 

「分かっている。資金についてだが、ヘルメス、俺に投資をしろ」

 

「へえ......投資ときたか」

 

 ヘルメスは笑う。

 

「いいよ。面白そうだから協力するよ」

 

 あっさりとヘルメスは了承した。だが、これに待ったをかけた存在がいた。

 

「ヘルメス様!そんな簡単に了承をしないでください。まだ具体的な金額すら決めていません。それに貴方の思い付きで始めた商売が失敗したことを忘れたのですか?」

 

 アスフィから耳の痛いことを言われたヘルメスはバツが悪そうに沈黙する。

 

「アスフィ・アンドロメダ、当然貴様らにもメリットはある」

 

「それは......」

 

 訝しげにするアスフィに、アームストロングは答える。

 

「俺が開発する商品は俺の世界由来のものだ。まさか、興味がないとは言わないだろう?」

 

 その言葉でアスフィは彼が何を言いたいのか理解した。ヘルメス・ファミリアは商業系のファミリアでもある。そして、アスフィは万能者として知られている有名な魔道具の開発者だ。

 

 彼の言葉にある、別世界由来の商品。アスフィが協力すればより優れた商品を開発出来るかもしれない。

 

「分かりました。貴方の商会への投資、私は反対をしません」

 

 こうして、アームストロング商会の設立準備が始まった。

 

 アームストロングからすれば、己の計画通りに行き、内心笑いが止まらなかった。何よりも大きいのはヘルメス・ファミリアのアスフィから協力を約束させたことだ。

 

 アームストロングにとって一番の商売敵はヘルメス・ファミリア。そう、アスフィ・アンドロメダがつくる魔道具にほかならないのだから。

 

 最大の商売敵になる存在を、アームストロングはいとも簡単に味方に引き入れた。笑いが止まらないのも無理がなかった。

 

 そして、アームストロングは商会の準備に奔走することとなる。

 

 

 街の中心部から少し外れた場所に建物を確保し、必要な設備を整え、そして何より、人材を集めることに力を入れた。

 

 アームストロングが特に注目したのは、ダンジョン探索に疲れた冒険者たちだった。彼らに安定した仕事と報酬を約束することで、多くの人材を引き寄せることが可能なはずだ。

 

 

 アームストロングはバベル広場の中央に立っていた。夕暮れ時、ダンジョンから帰還した人々が行き交う広場に、彼の威圧的な体格と鋭い眼光は異彩を放っていた。自ら準備した簡易の演台の上から、彼は集まった人々を見下ろす。

 

「諸君!」

 

 アームストロングの声は広場全体に響き渡った。徐々に足を止める人々。好奇心から集まってくる通行人たち。

 

「今日、私はある提案をしに来た。この世界で真に強くなる方法をな」

 

 人々の間に小さなざわめきが広がる。

 

「お前たちは毎日何をしている?神々の気まぐれな恩恵を待ち、彼らの名を冠したファミリアに入り、ダンジョンという檻の中で命を賭けているだけだ」

 

 アームストロングは拳を握りしめ、高く掲げた。

 

「そんな生き方に満足しているのか?神々の玩具として生きることに!」

 

 広場の一角でギルド関係者らしき人物たちが眉をひそめ始めた。アームストロングはそれを見逃さなかったが、無視して続ける。

 

「俺はスティーブン・アームストロング。人間は神々の祝福など無くとも強くなれる。そして俺がその証拠だ!」

 

 彼は突然、近くにあった石柱に拳を叩きつけた。轟音と共に石柱は粉々に砕け散る。人々から驚きの声が上がった。

 

「これが神の加護なしの力だ!お前たちにも可能な力だ!」

 

 驚きの渦が人々の間で広がる中、アームストロングは力強い声音で演説を続ける。

 

「アームストロング商会では、神々に頼らず、自らの手で富と力を掴みたい者を求めている。ダンジョンでの日々の危険に疲れた者、神々の気まぐれに翻弄されることに飽きた者、真の独立を求める者たちよ」

 

 彼は群衆の中にいる、一人一人の目を見つめながら話した。

 

「俺たちは新たな時代を切り開く。神々が支配するこの秩序をぶち壊し、人間による人間のための世界を作る。それこそが真のアメリカンドリームだ!」

 

 人々の中から数人が前に出てきた。

 

「何か…具体的な仕事の内容は?」

 

 一人の若者が恐る恐る尋ねた。

 

 アームストロングは満足げに笑みを浮かべた。

 

「魔石の新たな活用法を開発し、この世界に革命をもたらす。全ての人間に商品が行き渡る効率的な流通経路を確立する。そして最も重要なのは、神々の祝福に頼らない力の開発だ」

 

 彼はポケットから小さな金属片を取り出した。異世界から持ち込んだナノマシンの一部だ。

 

「これが新たな力の源となる。神の祝福なしに人間を強化する技術だ」

 

 広場には好奇心と疑念が入り混じった空気が満ちていた。数人の冒険者が状況を監視しているのが見えたが、アームストロングは気にする様子もなかった。

 

「明日から、西区の新しい商会本部で面接を始める。真の独立と力を求める者たちよ、そこに来い!」

 

 その言葉を最後に、アームストロングは群衆を後にした。彼の背後では、既に数十人の人々が互いに目配せし、明日の面接について囁き合っていた。

 

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