「おい、どうだ」
「やったか?」
ったく。手こずらせやがって。俺たちは中堅ファミリア所属で今日は金稼ぎのためとレベルアップの感覚を試すためにきた。
特に魔法使いのシュメールが第二魔法を手に入れた。一度使ってみたが範囲と威力に優れた魔法で、これまで使って来た魔法よりも詠唱は長いがその分、当たれば一撃であの硬かったクリスタル・タートルがやられる威力だ。
そして俺もレベル5に上がった。上がったばかりだからステータスは一度リセットされたが潜在能力値はそこそこ溜まっている。特に力だけならレベル6にも対抗できる。
そんな感じでモンスターが少なめな階層の壁際で狩りをしていたが…アイツを見つけた。
そいつはカーバンクルだった。カーバンクルは26階層に出現する希少種で額の宝石は売ればとんでもない金になる。最近だとシュメールとパーティーメンバーの小人族のアランが付き合い始めたからな。もしかしたらのためにも金は得ておきたかった。
だがよく見たらそいつは普通のカーバンクルじゃなかった。昔、先輩冒険者が戦っているのを見たがそのカーバンクルは体毛は白く、宝石は赤じゃなくて青だ。多分だが亜種だ。名付けるならアルビノ・カーバンクルか?
まぁ、そこはいい。希少なカーバンクルの亜種の宝石なら更に高く売れるだろう。
俺たちは簡単に陣形をとって攻撃する準備を始めた時だった。
…そいつは凄まじい速度で逃げ始めた。
いや、確かにカーバンクルは冒険者にあってもすぐに逃げる珍しいモンスターだ。戦闘能力も低いが逃げる能力なら群を抜いている。
だが、そいつは普通よりもはるかに上の速度で逃げ出したのだ。すぐさまヒースが弓で牽制して、アランが逃げ道を塞ぎに行った。けどそのカーバンクルはすぐさま結界を張って弓を防御したと思ったら、逃げ道を塞ぎに来たアランに突進して来たのだ。
ほとんど攻撃しないはずのカーバンクルの攻撃にアランは面食らったがすぐにアランは回避して、結界が途切れた瞬間に攻撃を仕掛けた。
その間に俺たちも包囲して攻撃した。
しかし、そのカーバンクルは明らかに普通じゃなかった。俺たちの連携で何度も追い詰めたのに、その度に結界と足の速さで攻撃はほとんど回避して、俺たちはかすり傷くらいしか与えられなかったし、結界も硬い。
特に力だけならレベル6にも匹敵する俺の攻撃を破れかけてはいたが防いだのは驚いた。
しかもこいつは、俺たちが好きを晒せばすぐさま結界で突進して来て攻撃してくる。
もし直撃していれば俺以外の前衛は吹っ飛ばされかねない速度でやってくる。もし後衛に行けばその速度と結界の硬さも相まってすぐに蹂躙されかねない。
そうして暫く拮抗状態を保っていたが、流石に時間をかけすぎた。奥の方からマーマンの村が近づいて来たのだ。幸いまだ、気づかれてないしこの距離なら気づかれても普通に逃げられる距離だ。
だが、流石にこのまま戦っていれば気付かれるし後ろから攻撃されれば俺たちも無事では済まない。
そこでシュメールの第二魔法にかけることにした。第一魔法は使い勝手はいいが威力は低い。そこであの硬い結界を破れる威力であろう第二魔法でけりをつける。もしこれでもダメなら…その時は諦めて逃げよう。流石にこれでダメなら俺たちには倒す手段がない。
そうして詠唱の時間を稼ぎ、シュメールの魔法が発動したが…。
「おい、奴はどこに行った?」
そうだ。確かに当たる距離だったし、後ろは崖だ。流石に逃げる場所もないはずだ。
「‼︎おい、下にいるぞ‼︎」
「「なに!!」」
アランが大声で崖を覗きながら叫んだことで俺たちは驚いた。
いかにモンスターといえどこの崖はかなりの高さだ。流石にモンスターといえどこの高さだと普通に死ぬ。過去には大型のクリスタル・タートルがここから落ちて瀕死の重症を悪化ともある。
もしや魔法の衝撃で吹っ飛んだのか?
と俺も考えながら下を見た。そこには…。
「何…だと」
そこには、足元に結界と思わしき板を足場に飛び降りているカーバンクルがいた。
普通ならカーバンクルはあんなことはできない。結界は貼れてもドーム型だし、あんな器用な真似ができるとは思えない。やはりアイツは、強化種だ。
しかもすでに新たな能力を得た…。
「ブロスさん。どうしますか?」
「流石にこれ以上の追撃は無理ですよ」
と仲間の声かけで意識を切り替えた。確かにあそこまで逃げたら魔法も弓も届かない。そもそも追撃しても恐らく倒せないし、近くにはモンスターの群れがいる。
「潮時だ。これ以上は危険だし、荷物はしっかり持って帰還するぞ」
「「「「「分かりました」」」」」
さて、あのモンスターのことは一応ギルドに報告しよう。流石に上位冒険者なら倒せるだろうしな。
…だが、もしあのカーバンクルが生き残るのなら。
「厄介な敵になるかもな」
「?どうかしましたか?」
「…いや、何でもない。行くぞ」