【第24回】<補適法第14条解説>補助金行政の“核心”に迫る:実績報告 ― 「補助金返還」はどの時点で確定するのか?
補助金の取消や減額の背景には、事業者がどこかで「法的義務」を怠ったという建前がついてまわります。その中でももっとも重要な位置づけとなるのが、補助金適正化法第14条で定められた「実績報告義務」です。
■ 実績報告って何のためにあるのか?
補助金は、言うまでもなく「税金」です。そのため、国や自治体は、交付した補助金がちゃんと目的通り使われたのかを確認する必要があります。これを形式的に担保するのが「実績報告書」なのです。
つまり、第14条の報告がなければ、補助金の額は正式には確定しないということです。
この報告には、以下の3つのパターンがあります:
完了実績報告(補助事業が予定どおり完了したとき)
廃止実績報告(途中で事業を断念したとき)
年度終了実績報告(複数年度にわたる事業などで年を跨いだとき)
このうち、補助金額の「確定」につながるのは基本的に【1】と【2】です。
■ 実績報告の内容と添付書類
実績報告は、単に「終わりました」と言えば済むものではありません。
何にいくら使ったかの明細(精算書)
購入した設備の写真や図面
工事であれば、竣工報告や契約書
給付型サービスであれば、その提供証拠
など、膨大な書類が必要になります。にもかかわらず、その具体的な中身は交付行政庁の「要領」や「マニュアル」に委ねられているため、恣意的な運用が生じやすいのが現実です。
■ 先日受けた相談:極端に短い期日設定と交付の取消し、法を理解していない事務局と中小機構
先日相談を受けた案件が、まさにこの第14条の「実績報告」段階に端を発しています。
報告書の差し戻しは10回以上に及び、最後はわずか数時間の猶予で差し戻しがなされ、未提出扱い。
その上で、「実績報告義務を果たしていない」という理由で交付決定の取消し処分が下されました。
しかし、実績報告の目的が「補助金の精算と額の確定」であるならば、そこにあるべきは「一緒に完成させる姿勢」であって、「減点主義による排除」ではないはずです。
また、実績報告の添付書類についても、形式主義に陥り、事業実態が完全に無視されていた点も看過できません。
■ 間違えやすいポイント:未完了=即違反ではない
補助事業が期間内に終わらなかったからといって、即「違反」になるわけではありません。第14条は**「完了したら報告せよ」と言っているのであって、完了していないなら繰越手続や廃止手続**など他のルートが用意されているのです。
それらを適切に案内・指導せず、一方的に「報告されなかったから取消」とするのは、まさに制度の本旨を逸脱した運用と言わざるを得ません。
■ 結びに:報告義務が「不正の言い訳」に使われないために
補助金の実績報告は、事業者が誠実に使った証拠を見せる義務であると同時に、行政が説明責任を果たす土台でもあります。
ところが、今の補助金行政では、この「報告義務」が逆手に取られ、
わざと期日を短くして未提出扱い
添付書類の基準を曖昧にして減点
完了の定義を一方的に解釈
といった方法で、取消や減額の根拠づけに使われている実態があります。
この構造こそ、私たちが訴訟を通じて明らかにしようとしている問題の一つです。
補助金の透明性と公平性が守られるためにも、事業者と行政の信頼関係を支えるこの「第14条」の本質を、今こそ見つめ直すべきではないでしょうか。


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