立憲民主党の亀井亜紀子衆院議員は9日の衆院外務委員会で、石破茂首相による戦後80年談話の発出や先の大戦を検証する有識者会議の設置に懸念を示した。拓殖大の下條正男名誉教授が「戦争検証で有識者会議を立ち上げて喜ぶのは韓国の反日勢力だ。蒸し返しが起き、日韓関係が離れていく」と指摘していることを紹介し、「80年談話は出さないということでよろしいか」と尋ねた。
外相「決定していない」
これに対して、岩屋毅外相は「新たな談話を発出するかは決定していない。これまでの経緯を踏まえ、さまざまな点から考えたいというのが現段階での首相の方針だ」と述べた。
首相は戦後80年の節目に合わせた首相談話の発出を見送る方針を固めた一方、先の大戦を検証する私的諮問機関を設置し、有識者らから意見聴取し戦争に対する見解を会見で表明する方向で調整している。
下條氏は、亀井氏の地元・島根県が設置した県竹島問題研究会の座長を務めている。
韓国が不法占拠する竹島(島根県隠岐の島町)を巡っては、島根県が毎年2月22日、「竹島の日」記念式典を主催しているが、政府は例年、閣僚の派遣を見送っている。一方、2月7日の「北方領土の日」に開かれる返還要求全国大会は政府主催で、首相や閣僚が出席している。
「世界の地図97%が日本海呼称のみ」
亀井氏は「なぜ北方領土と竹島で国の取り組み方が違うのか。県民みんなの疑問だ」とただしたが、今井絵理子内閣府政務官は「それぞれ領土問題を巡る経緯や状況が異なることから単純に比較することは困難」と述べるにとどめた。
また、外務省の担当者は、日本海について韓国が自国の呼称「東海」の使用を国際社会に働きかけたことについて「現在では韓国および北朝鮮を除く、世界の主要各国の地図の97%以上が日本海という呼称のみを使用している」と明言し、「今後も国際社会に日本海呼称に対する正しい理解と支持を得るべく務めていく」と語った。
亀井氏は「日本海と書かれた中に竹島があると、いかにも日本の領土のように見えるから、名称を東海に変えようとしている戦略的な韓国側の立場がある。蒸し返されたりしないようにお願いしたい」と訴えた。(奥原慎平)