トランプ政権のブレインの一人で関税政策を進言したオレン・キャス氏のインタビューが面白かった

4月4日(金)晴れ

昨日読んだトランプ政権のブレインの一人、関税政策を進言したというオレン・キャス氏のインタビューが面白かった。

「教科書で習ったアダム・スミスもデイビッド・リカードも、共産党が支配する大国との自由貿易について考える機会はなかったでしょう。」

彼が自由貿易に否定的なのは、中国が新自由主義の自由貿易体制で大きな利益をあげ、アメリカの製造業を痛めつけた、という要素が大きいようだ。新自由主義=自由貿易体制を推進してきた人たちは自由貿易の輪に加わることでいずれは中国やロシアも民主化されるというある種の夢を持っていたわけだが、それが可燃に否定された以上、自由貿易体制はアメリカにとって害でしかない、というのが大きいのだろう。

彼は関税政策について、「国内で何かを製造することに価値があると信じ、国内産業を保護しようとするなら、効率的な政策手段です」という。トッドをはじめとする論客と見方自体は共通するが、アメリカの製造業が復活するには長い時間が必要だからアメリカの人々にとって害が大きすぎる、という見方を斥ける。

彼のコメントで印象に残ったのは「私たちは、生産よりも消費に偏った米国を変えていこうとしています。」という言葉で、これは私の見方(日本に関してだが)とも一致するので理解しやすい。「アメリカ資本主義を真っ当なものに戻していきたい」、という考え方はよくわかる。それが可能なのか?というのが疑問だったが、可能だと彼らは信じているということだろう。

トランプ政権を支えているのは多様な保守勢力だが、彼は自分たちをMAGAともテクノリバタリアン、宗教保守派のどれとも違う、「いずれとも異なる『真正の保守派』です。」という。「普通の家族が自立して生活を営む能力、子どもを育てる能力が低下し、地域のコミュニティーが弱くなっていることを、何よりも問題視する保守派です」という。

つまり、「アメリカ社会を立て直す」ということを第一義的に、新自由主義を捨て、「現代アメリカが抱えている課題」に取り組み、製造業を復活させ、「労働者が働いて家族を養うという当たり前のこと」ができる社会に戻すということなのだと思うし、これは全く同意見である。日本もそうするべきだろうと思う。

そういう考え方に至った問題意識のありかは、「私たちの世代以降は、冷戦もレーガン政権も、歴史の本でしか知りません。この世代が大きな問題として直面してきたのは、冷戦ではなく中国のWTO加盟による問題、イラクとアフガニスタンでの戦争、経済の金融化と金融危機、ビッグテック企業の台頭、薬物中毒、絶望死、パンデミックなどです」ということで、まさに冷戦と冷戦後の多幸的な時代が生んだ新自由主義的な理想がもたらした多くの問題に直面してきた、日本で言えばネオリベラリズムだけでなくリベラリズムの本体、フェミニズムやwokeの問題も真剣に問題として考えている世代、ということになるのだろうと思う。

彼はトランプについて「彼が非常に得意なのは、これらの全く違うグループを結集させることです。しかし、彼が全く不得意なのは、これらの対立をどのように解決するかを自分の頭で考えることです」という。しかし私は、世間ではトランプ政権にはMAGAやテクノリバタリアン、宗教保守派、「真正の保守」と「様々な保守が野合している」という見解が多いが、私はどの方向性も「労働者が働いて(教会へ行って)家族を養えるアメリカ」を目指している、というようにしか見えないので、そんなに「野合」でもないと思う。

彼は日本について、「特に日本で、古いパラダイムや旧モデルへの強い固執を感じたからです。何らかの言葉や行動を駆使すれば、何とか旧モデルを維持できる、と信じている人が多いのです」というが、これは新自由主義体制に過適応した人々と主に会話を交わした、ということなのだろうと思う。日本のTwitterを読めばそういう人たちばかりではないということはわかると思うが、ネオリベとリベラルの悪魔合体が政界やアカデミアに巣食っていることは間違いない。安倍さんが元気な頃ならまた違ったと思うが。

ヴァンスやキャス、ルビオなどの世代は日本では氷河期世代になるわけで、彼らと肩を並べられる思想性を持った思想家や政治家がどのような形で出てくるのかは期待しないといけないし、いろいろ考えさせられる。アメリカが変わると日本も変わらざるを得ないし、また日本はチャンスだと思う面もある。「世界秩序が変わるとき」で述べられているように。

日本でも今アンフェだとかネトウヨだとか言われている40代の人たちがネットでのたくってるだけじゃなくて思想性が評価され政治にも進出していかないといけないんじゃないかと思う。ただ彼らほど大きな枠組みで世界を論じている人がなかなかいない(いるのかもしれないが)のは残念だなと思う。私もできることをしていきたいとは思うのだが。

というわけで、新しい時代の新しい思想を日本の論客もまた作っていかなければならないのだろうと思っている。

(ちなみにWikipediaはまだ読んでないが参考のために表示した)

以下、4月8日に追加しました

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kous37
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コメント

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