データによると<恋愛経験の豊富な人ほどウソつき>。中野信子「ウソをつくことで次世代を残す可能性が高くなるのであればその子孫はおそらく…」
◆食事やセックスの“快楽中枢”がウソをつかせる 側坐核というのは、脳におけるいわゆる“快楽中枢”である。オールズとミルナーの実験が有名だと思うが、ラットの脳に電極を刺し、レバーを押すことで電気刺激が入るようにしておくと、ラットは飲食を忘れてレバーを押し続けた。この実験におけるラットの行動から、こうした俗称がついたようである。 この領域は、食事やセックスといった、人間にとって報酬となり得る多くの行為に関連している。依存症の病態にも関与している。定期的にスクープされる、派手な性行動が記事にされてしまうタイプの人の中には、適切な投薬や心理社会的治療が必要な人もいると考えられるが、側坐核における活動が一般的な人々とは違うという可能性も推測される。興味深い研究では、ある種のドラッグによって引き起こされる快感と、音楽の快感とがほとんど同じだと指摘するものもある。 ところで、側坐核の活動が高くても、ウソをつかなかった場合には、またさらに特徴的な脳の活動パターンが見られ、背外側前頭前野(はいがいそくぜんとうぜんや)の活動が高くなったという。この領域は、理性的な判断、また行動の抑制に重要な領域であると考えられている。 わかりやすく噛み砕いて言えば、ウソつきは、ウソをつく快感を覚えてしまっていて、いつもブレーキを利かせていないと正直な言動ができない、ということになるだろうか。もっと言えば、頑張って努力して抑えていないとすぐウソをついてしまう脳である、と言ってもよいかもしれない。
◆人生相談での、ある公務員の告白 やはり面白いのは、ウソをつくことがやすやすとできる人のほうが恋愛強者である可能性が示唆されているというところではないだろうか。私たちは、言語というツールを手に入れたことによって、他の生物よりずっとたやすくウソをつくことができるようになった。そして、ウソをつくことによって、より次世代を残す可能性が高くなるのであれば、私たちの子孫たちはもっと高度にウソをつく能力を発達させていくということになるのではないだろうか。 ともあれ、現実の運用を考えたとき、ウソをついているのかどうか、完全に見抜くことは難しい(だからこそ私たちは証拠を必要とする)。側坐核が活発に活動しているかどうかも、実験室で計測するのでなければ他人から見てわかるものではない。また仮に活動が高かったとしても、必ずしもその人が百パーセントウソつきということにもならない。実際にウソつきの可能性が高い人に出会っても、その人がそのまま悪者ということにはならない、ということは明記しておく必要があるだろう。 ある雑誌の人生相談のコーナーで、自分は公務員の職にあるが、ウソをつくことがやめられない、他人をだまそうとか迷惑をかけようとかいう意図はないのだが、つい息をするようにウソをついてしまう、どうしたらいいのか、という相談を受けたことがある。 ウソを自然についてしまう自分を恥じているような文面だった。もし、そもそも脳の傾向としてこうした性質を持っていると自覚があるのなら、ウソをつくことが基本的には推奨されない職をなぜ、高い障壁を自らに課すようにして選んでしまったのだろう、と興味深く感じた。
【関連記事】
- 中野信子が警鐘「イケニエへの攻撃がやめられないのは脳の仕組みに由来。あなたも制裁の快楽をむさぼる<コンプライアンス中毒>に陥っていませんか?」
- 脳科学者・中野信子 科学的に証明された<運をよくするコツ>とは?「根拠のない自信」で成功確率はグッと高まる【2023編集部セレクション】
- デーブ・スペクターさんが『徹子の部屋』に登場。脳科学者・中野信子さんと語った「日本人以上に日本を知るために行っている情報収集法」
- 中野信子 理想と実際の自分が一致する人ほど周囲から好かれるのは「当たり前」だった…「しあわせのものさし」で運は自分のものにできる
- その「努力」の仕方はあなたをむしろ成功から遠ざけているかも…中野信子が考える<運のいい人になるための絶対条件>とは