今度一緒に滑ろう ジェイソン・ブラウンが驚いた5年半ぶりの再会
「What's?」。かつて車いすに乗っていた男の子が、自らの足で立ち、歩いてくる。
米フィギュアスケーターのジェイソン・ブラウン選手(30)は思わず立ち上がり、駆け寄った。「君は僕のヒーローだったんだよ」
小学6年の島崎葵さん(11)と5年半ぶりの再会だった。
ブラウン選手は、羽生結弦さんと同じブライアン・オーサーコーチに師事。豊かな表現力でソチ五輪では団体で銅メダルに輝いた。2014年から、難病の子どもと家族のための滞在施設「ドナルド・マクドナルド・ハウス」のボランティアを続けている。
2人が出会ったのは2019年11月、葵さんが6歳の時だ。4歳8カ月の時に、太ももの骨の付け根に部分的な壊死(えし)を起こす「ペルテス病」にかかり、歩けなくなった。
1年11カ月、札幌市のハウスに隣接し、小児高度医療を提供する「道立子ども総合医療・療育センター」(コドモックル)に入院。車いすで生活していた頃、ブラウン選手がハウスを訪問した。
葵さんはブラウン選手のスケート映像を見るように。「とても楽しそうに滑っているのが印象的だった」という。
釧路市の自宅と病院は車で4、5時間かかる。闘病中のつらいとき、寂しかったとき、ブラウン選手の楽しそうな姿に力をもらってきた。
歩く練習を始め、その姿をSNSで投稿したところ、ブラウン選手から「あなたはすばらしい。また会えることを楽しみにしている」とコメントが届いた。
あたたかな交流を力にして、アイススケートや、ボクシング、リハビリを兼ねていろいろなスポーツに挑戦しながら、11歳になった。
8日、ブラウン選手が5年半ぶりに札幌市のハウスを訪れた。再会することはブラウン選手には秘密。この日のために、葵さんは英語のメッセージを準備してきた。
驚きを隠せないブラウン選手の前で、一言一言、思いを込めながら伝えた。「ずっと会えなくてとてもさみしかったです」「毎日、学校に行っています」
質問もした。「なぜ、スケートを始めたの?」。ブラウン選手は答えた。「多くの人が音楽と一緒に楽しくやっているのを見て、自分を表現できるかっこいい方法だと思ったから」
ブラウン選手は、「すごい」と日本語で話しながら、「車いすだった葵君が、スケートも始めた。あきらめずにがんばって、努力してきたのがよく分かった。僕の方が、葵君に元気をもらって勇気づけられました」と語った。
ブラウン選手と葵さんは9日、スケートを一緒に滑る約束もした。
葵さんは「物事を楽しく取り組めるということは、自分も相手も楽しくなるということ。そんなふうに自分も過ごしていきたい」という。「今度会うときは、もっとたくましくなっているところを見せたい」と言う。
ハウスは、難病で苦しむ子どもや家族の負担軽減を目的に、個人や企業・団体からの募金・寄付で運営される。世界各地にあり、国内では全国に12カ所ある。
さっぽろハウスは2008年12月にオープンし、10家族が滞在できる。家族は1人1日1千円(税込み)で宿泊でき、昨年は延べ498家族が利用した。家族が子どもの付き添いに集中できるよう、ボランティアスタッフが支える。運営するのは、公益財団法人「ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン」。
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