「朝食はコンビニで」温泉旅館で素泊まりが増加 旅館は困ると思いきや…宿泊客と”ウィンウィンの関係”? 有馬温泉で徹底調査
金井宏輔社長によりますと、2024年は約20%の宿泊客が朝食付き、約25%が素泊まりのプランを選びました。合わせて約45%が夕食を宿で取らなかったことになります。 2023年までは素泊まり率が15%だったので、わずか1年で”夕食ナシ”のお客さんの割合は3倍に急増しています。価格設定は季節によって変わりますが、1泊2食付きは約3万円、朝食付きが約1万7千円。素泊まりは1万から1万5千円ほど。この価格差が旅館で夕食をとらない主な理由になっています。 食事なしのプランを選ぶ人はインバウンド客が多いのでしょうか。 (金井さん)「今は大体45%ぐらいの方が素泊まりと朝食付きプランのインバウンド率。思っていたよりは日本人の利用も多いという印象です。日本人も温泉旅館に対する考え方とか嗜好が変わってきている」
お客さんが宿の外で夕食を食べると温泉旅館にとっては売り上げが減り、経営が苦しくなりそうですが、古泉閣では宿泊客を飲食店まで無料で送迎までしています。取材日には、香港から来た家族が利用しました。 (香港からの観光客)「ここに来るのは初めてだから時間通りに行かないかもしれないし、食事も食べ損ねるかもしれないから」 お客さんにとってはありがたいサービスですが、無料送迎まですると宿で食事を取る人がますます減るおそれはないのでしょうか。 (金井さん)「我々としてはいろんなデメリットはあるんですけども、やっぱりお客様に気持ちよく泊まっていただくためには、送迎は出さないといけないという考え方です」
でも、実は「宿で夕食を食べないこと」は、旅館側にとってもメリットがあるんです。 (金井さん)「売り上げは当然下がります。ただ人件費も抑えられますし、利益も少し上がります。従業員が休めるシフトを組んで、休みが取れるということは、すごく我々も重要だと思ってます。やっぱり人手不足なので、かなり少ない人数でシフトを回そうと思うと、休みがどんどん少なくなっていきます。それの対策というのもあって、朝食付きプランに思い切って踏み切れたのはありますね」 旅館やホテル業界は人手不足が常態化しています。 2025年1月の帝国データバンクの調査では、旅館・ホテル業の企業で正社員が不足していると回答した割合は60.2%(業界別10位)、非正社員が不足していると回答した割合は50.0%(業界別7位)に達しています。旅館やホテルでは、”夕食ナシ”のプランを売り出すことで、調理や配膳などの人手がかからず、従業員の人繰りに余裕が生まれたり、休みを取りやすくなったりといったプラスの効果が現れています。