離陸から17分後に着水か GPS情報途絶える 医療ヘリ3人死亡

海保航空機が撮影した救助状況=2025年4月6日午後5時半ごろ撮影(第7管区海上保安本部提供) 拡大
海保航空機が撮影した救助状況=2025年4月6日午後5時半ごろ撮影(第7管区海上保安本部提供)

 患者や医師ら6人を乗せた医療搬送用のヘリコプターが長崎・壱岐島沖で転覆した状態で見つかり、3人が死亡した事故で、ヘリは6日午後1時半に離島の長崎県対馬市を離陸してから約17分後に海に着水した可能性があることが関係者への取材で判明した。ヘリに取り付けられたGPS(全地球測位システム)機器は水中に入ると位置情報を発信できなくなる仕組みで、午後1時47分に発信が途絶えていた。

 第7管区海上保安本部などによると、ヘリは福岡和白病院(福岡市東区)から委託を受け、エス・ジー・シー佐賀航空(佐賀市)が運航。6日は患者や付き添いの家族らを乗せて長崎県・対馬空港を午後1時半に離陸し、午後2時15分に同病院に到着する予定だった。佐賀航空はGPSのシステムを使用し、航跡をリアルタイムで把握していた。

 しかし、離陸から約17分後の午後1時47分、GPS情報が途絶え、機体を見失った。場所を確認したところ、詳細な緯度経度までは把握できなかったが、壱岐島の北端から北に約47キロの海上だったという。

 この付近は無線が通じないエリアでヘリと連絡は取れなかった。このため、佐賀航空の担当者はシステム故障の可能性もあると考え、しばらく静観したという。だが、本来なら無線が通じる場所を飛行する時刻になっても応答しなかったため、到着予定時刻を過ぎた6日午後2時20分ごろ、関係機関への通報を始めた。

 7管などが捜索したところ、午後5時過ぎに壱岐島の北端から北東約27キロの海上で転覆した状態のヘリを発見。6人を救助したが、7日までに女性患者(86)と付き添いの息子(68)、男性医師(34)の3人の死亡が確認された。

 救助された男性機長(66)は唐津海上保安部の任意の事情聴取に、緊急着水する際に使用するフロート(浮き具)を自ら「手動で作動させた」と説明。国の運輸安全委員会の航空事故調査官もこうした状況から現時点では「不時着水」した可能性が高いとみている。航空事故調査官は8日、佐賀航空の立ち入り調査に入り、整備状況などを調べたが、少なくとも記録からは問題は見つからなかったという。佐賀航空は転覆したままの機体を数日以内に引き揚げる意向だといい、さらに事故原因を調べる。

 GPS情報が途絶えた地点と、転覆した機体の発見場所は直線距離で20キロ前後離れており、捜査関係者は不時着水後に機体が波で流された可能性もあると話す。GPSの異変を察知しながら、すぐに通報をしなかったことについて、佐賀航空の幹部らは7日に開いた記者会見で「航空機の捜索救難の措置基準」に沿って対応したと説明。到着予定時刻を30分過ぎても目的地に到着していない場合は関係機関に通報するとの規定があるとした上で「結果として3人が亡くなった。措置基準に沿って対応したからいいというわけではない。基準の範囲を超えて動くことができなかったのかというのは課題として残る」と述べた。【川畑岳志、栗栖由喜、井土映美、金将来】

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