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東電が再建計画先送り 原発頼みの限界露呈した

東日本大震災から14年となり、事故を起こした福島第1原発で社員に訓示する東京電力ホールディングスの小早川智明社長=福島県大熊町で2025年3月11日、岩間理紀撮影 拡大
東日本大震災から14年となり、事故を起こした福島第1原発で社員に訓示する東京電力ホールディングスの小早川智明社長=福島県大熊町で2025年3月11日、岩間理紀撮影

 これで福島復興や電力安定供給の責任を果たせるのだろうか。

 東京電力ホールディングスが、2024年度内に予定していた再建計画の改定を先送りした。収益改善の「切り札」と当て込んだ柏崎刈羽原発(新潟県)の再稼働のめどが立たないためという。

 賠償や廃炉など福島第1原発事故の処理に必要な資金を、東電は国から借り入れている。電力事業に使う資金は、銀行からの融資で賄っている。これら支援の前提となるのが再建計画だ。

 事故翌年の12年に初めて策定され、ほぼ3年ごとに改定されてきた。事故処理費用は当初6兆円と見積もられたが、21年に策定された現行計画では21・5兆円に膨らんでいた。

 その後、福島第1の処理水の海洋放出に伴う漁業者補償などが加わり、23・4兆円に拡大した。国からの借入上限額は、15・4兆円に引き上げられた。今回はこれらを踏まえ、計画の改定が求められていた。

 東電は、国に毎年5000億円ずつ返済することになっている。だが、近年は業績低迷で平均4000億円程度にとどまる。

 「1基動けば1000億円の収支改善効果がある」と期待した柏崎刈羽の再稼働が実現していないのが主な原因だ。当初は19年度に動かせると見込んでいたが、テロ対策の不備など不祥事を繰り返した結果、地元の同意を得る見通しが立たなくなった。

 安全対策費として1兆円超を投じたことが経営の重荷となり、資金繰りも厳しさを増している。電力の安定供給に必要な設備投資さえままならなくなることが懸念されている。

 そもそも、重大事故を起こしながら、原発頼みの再建シナリオを描いたことに無理があった。今年度中を目指す改定では、戦略を抜本的に見直すべきだ。

 収益力向上に向けて、事業再編を加速させなければならない。火力発電部門は19年に中部電力と統合したが、成長性の高い再生可能エネルギー分野などに他社との協業を広げる必要がある。経営合理化を一層進め、財務体質の悪化に歯止めをかけることも急務だ。

 原発に依存しない再建策こそが求められている。

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