物価高でも400円学食のなぜ?三本松高校のチャレンジとは
- 2024年5月30日
このところ身の回りのさまざまなものが値上がりしていますよね。こうした中でも値上げをせずワンコイン以下の価格で定食を提供し続けている食堂が、東かがわ市の三本松高校にあるんです。ボリュームも栄養もたっぷりの食事を、お手ごろ価格で届けている秘けつを探りました。(高松放送局記者 竹内一帆)
物価高でも400円で黒字維持
お昼休みになると多くの生徒が一気に駆けつける三本松高校の学生食堂。人気の理由のひとつが、400円というお手ごろな価格設定です。定食のメニューは日替わりの1種類だけですが、さまざまな商品の値上がりが進む中でも400円を維持していて、値上げを行わなくても黒字を続けています。
取材に訪れた日の定食のメニューは、魚のフライをメインに、黒豆を使った豆腐の揚げ団子や鳥皮ポン酢などの副菜も。ほとんどの食材が地元産です。取材した私(=記者)も、満腹になるほどボリュームたっぷりの量で、生徒に聞いてみると「おいしくて大好き」という満足の声が相次ぎました。
日替わりメニューなので、毎日食べても飽きないですし、値段も安いので手軽
お父さんやお母さんも朝にお弁当を作る時間がないので、「いつも助かっている」と言っています
にぎやかな雰囲気の中で食べられるから、学食はすごく好きで、毎回定食を買うようにしています
経営環境厳しい学食業界
一方、学食などの業界全体でみると、食材費や光熱費などが増えて厳しい経営を迫られています。民間の信用調査会社「帝国データバンク」の調べでは、学食の運営などを行う全国374社の22年度の業績は、全体の34%が赤字。「減益」を含めると、全体の6割で厳しい経営となっています。
安さ維持の秘けつは?
それにもかかわらず、この学食ではなぜ手ごろな価格を維持できるのか。運営する藤本丈晴さんに聞きました。まず、食材の調達方法を工夫しているといいます。活用しているのが、市場に出回らず、本来なら廃棄されてしまう食材です。取材に訪れた日のメニューでは、アスパラガスや黒豆が知り合いの農家などからもらったものだそうです。藤本さん自身も農業法人を経営していて、自分の畑や友人の農家の畑などで出た、本来なら捨ててしまう食材を活用しているのです。
また、食券を事前購入制にしています。授業の合間の午前中の休み時間には、多くの生徒が食券機の前に並びます。調理する量が事前に決まるため、食品ロスを出さずにすみます。
さらに、学食で食事を提供するだけでなく地元の企業向けにお弁当を作って配達を行っていて、これが収益のもうひとつの柱になっています。学生の食堂という枠をこえて、地域と深く関わりをもつ食の提供を目指しているのです。
今の時代は、地元の食堂もなくなってきているところもあるので、地域の人が来られるような食堂もやっていきたいという気持ちはあります
学食を支える学生プロジェクト
高校の生徒たちも学食の経営を支えています。それが「三高みんなの食堂プロジェクト」という活動。全校生徒のおよそ2割が参加する自主的な活動で、いくつかの賞も受賞しました。昼休みに行われた打ち合わせでは、参加する生徒の1人が「ことしは『学食から地域食堂へ』を大きなテーマとして活動していく」と意気込みを語りました。
生徒たちが9つのチームに分かれて行うというこのプロジェクト。このうち、畑を担当するチームは、使われていない校庭の一部を活用して野菜を栽培。学食に提供しています。
また、ことし5月に地元で開かれたイベントでは、生徒たちが学食に発注したおにぎりやスイーツを販売。学食にとって収入源のひとつになります。一方で、どうすれば利益が出るのかを考えて、生徒たちが自分で発注量や販売価格を決めるため、生徒にとっても実践的な学びの場になります。
さらに、別のチームの生徒たちは、屋外に置くピクニックテーブルを自作し校内に設置しました。学食の食事などをここで食べてもらうことで、コロナ禍のような「黙食」とは違う笑顔があふれるランチタイムを目指したいということです。
生徒たちが様々な形で関わってきたことで学食の利用率は改善。利用者はプロジェクト開始当初の4年前と比べ5倍以上に増えたといいます。安くておいしい学食を自分たちで支えるだけでなく、地域と関わりを持つ場としても広げていきたいとプロジェクトに参加する生徒は話します。
楽しく活動を行って、それが地域のために繋がったらいいなと思ってます。食堂が何らかのコミュニティーとなって、地域の人などが集まり盛り上がるような場所にしていきたい
※内容は放送時点のものです