証券会社口座 不正アクセス被害相次ぐ フィッシング詐欺に注意

ネット証券大手の楽天証券で、利用者の口座が乗っ取られ、勝手に取り引きされる被害が相次いでいますが、野村証券やSBI証券などほかの証券会社4社でも同様の被害が確認されていることが分かりました。フィッシング詐欺などの手口で利用者からアカウント情報を盗み出しているとみられ、各社が注意を呼びかけています。

ネット証券大手の楽天証券は、3月21日、利用者の口座に不正にアクセスされ、身に覚えの無い取り引きが行われる被害が相次いでいると公表しました。

その後、NHKの取材に対し、野村証券やSBI証券が、同様の被害が確認されていると明らかにしたほか、SMBC日興証券とマネックス証券もホームページで被害が確認されたと公表しました。

各社によりますと、証券会社になりすましたメールで偽サイトに誘導する「フィッシング詐欺」などの手口で、利用者からIDやパスワードなどの情報を盗み出し、口座を乗っ取っているとみられるということです。

保有していた金融商品を勝手に売却され、中国企業の株式を購入されたケースなどが確認されていて、楽天証券は、犯罪グループが株価操縦を行い、銘柄を高値で売却して利益を得るようなことを行っているとみられるとしています。

証券会社各社は、フィッシング詐欺に注意するとともに、提供している追加の認証サービスなどを導入するよう呼びかけています。

「恐ろしくて、わけがわからない」

証券会社の口座が乗っ取られ、身に覚えの無い株の取り引きをされたと訴える2人の被害者に話を聞きました。

大阪に住む60代の女性は、3月7日に、楽天証券の口座に不正アクセスされました。

NISAで保有していた日本株などがすべて売却されたあと、身に覚えのない中国株が大量に購入されていて、200万円余りの損失が出ていたということです。

女性は「履歴を見ると私がログインしていない時刻に中国株が購入されていたほか、それが全部売られて、また違う中国株が購入されたりしていました。安心安全だと思っていたのに、5年間コツコツとためた日本株がなくなって、もう恐ろしくて、わけがわからないです」と話していました。

中国株1500万円以上購入されていた人も

また、富山県の50代の男性は、ことし2月に、楽天証券の口座に不正アクセスされ、ひも付けている銀行口座から、中国株が1500万円以上、購入されていたということです。

数十回以上にわたって身に覚えのない株の売買が繰り返され、200万円以上の損失が出たといいます。

男性は「10年ほど利用していますが、こうしたトラブルは一切なかったですし、怪しいメールなどは基本的に全部捨てるようにしてたので、自分の知らないところで勝手に取り引きされてることに驚いています。こんな状況では、安心して取り引きすることができないです」と話していました。

取材に応じた2人の被害者は、いずれもフィッシング詐欺には注意していたと話していて、送られてきたメールのリンクをクリックして、パスワードなどの情報を入力した覚えはないということです。

また、証券会社側からは、会社から情報は漏えいしていないことなどから、いまのところ、被害の補償はできないと伝えられているということです。

証券会社各社 提供の認証サービス設定呼びかけ

証券会社を装った偽サイトや偽メールは急増していて、証券会社各社は、ホームページなどでフィッシング詐欺への注意喚起を掲載し、提供している認証サービスを設定するよう利用者に呼びかけています。

被害の補償については、楽天証券、野村証券、SBI証券の3社は、NHKの取材に対して、いずれも会社側からの顧客情報の流出は確認されていないとした上で、約款などに従って、個別に対応を検討していくとしています。

ただ、証券会社によっては、ホームページに、フィッシング詐欺による不正アクセスの被害は補償できないと記載しているところもあります。

被害が相次いでいることを受けて、日本証券業協会は、3月27日に、証券会社各社に対して、必要なセキュリティー対策を実施することや顧客に対してセキュリティー対策を促す注意喚起をすることのほか、不正な取り引きを監視するなどの適切な対応を取るように注意喚起を行ったということです。

アカウント情報 流出経路と対策は

証券会社の利用者の口座が乗っ取られる一連の被害について、セキュリティー会社では、偽メールによるフィッシング詐欺に加えて、パソコンをコンピューターウイルスに感染させて、個人情報を盗み出している可能性があると指摘しています。

セキュリティー会社の「マクニカ」がサイバー犯罪者が使う闇サイトを調べたところ、国内の証券会社の利用者のIDとパスワードなどのアカウント情報のリストだと主張するデータが多数販売されていたことが確認されたということです。

中には、ほかの企業のサービスのアカウント情報やサイトの閲覧履歴なども含まれていたケースがあったということです。

このため、会社では闇サイトで売買されている情報は、「InfoStealer」と呼ばれる情報を盗み出すコンピューターウイルスを使って、入手している可能性が高いと分析しています。

このウイルスはサイトやメールなどを通じてパソコンにひそかにダウンロードされ、インターネット閲覧ソフトのブラウザーに保存したIDやパスワードなどの個人情報を抜き取るということです。

被害にあわないために、セキュリティー会社では、
▽生体認証やメールなど別の手段でも本人確認を行う多要素認証を導入することや
▽情報を入力する時にはメールのリンクはクリックせず、スマートフォンの公式アプリなどを利用するよう呼びかけています。

マクニカの瀬治山豊さんは「利用者は自分が使っている証券会社のサービスを改めて確認して、多要素認証が設定できるのなら必ず有効にする。事業者側はIDやパスワードは漏えいするということを前提にした対策やサービス設計をする必要がある」と話しています。

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